転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第三章

第179話 前途多難な面談

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 荷物の搬入を終え、その後領主様の紹介で店に訪れた人達と面談をした。
 領主様の紹介ということもあってか皆出自もしっかりとしており、身なりもきちんとしている。
 そのうちの一人である緑色の髪の青年が、瞳をキラキラと輝かせて挨拶をし始めた。

「はじめまして~。おれっちは準男爵家の四男、ジャック・ファーマー。ま、準男爵といっても平民と対して変わんねぇからよ。あんま堅苦しいのは止めてくれると助かる。あんたらはおれっちの雇い主なんだからよ」

 あまりにも軽い口調の挨拶に、私とヒデさんが呆気に取られて顔を見合わせる。
 すると、ジャックと名乗った青年の隣に座っていた淡い水色の髪の眼鏡をかけた青年が、眼鏡の位置を直してジャックに注意を促した。

「君、言葉遣いに気をつけたまえ。準男爵とはいえ、君も貴族の仲間入りをしたのだろう?いつまでも平民と同じ感覚でいられては困る」

 彼は堅苦しいが、ちゃんと礼儀をわきまえているようで安心する。

「は―い。あんたは随分とお堅いな。もっと気楽にいこうぜ」

「なっ!」

 ジャックにお堅いと言われて顔を真っ赤に染めた眼鏡の青年。
 私は咄嗟に二人の会話に割って入る。

「二人共、言い争いはそこまでにしてください。それとジャックさんでしたっけ?あなたは領主様からどのような説明を受けて家にいらしたのですか?」

 ジャックは一瞬視線を上に向けたあと、私を見て口を開いた。

「え~と、親父からは魔道具の販売を手伝うようにって聞いたけど?」

 彼は接客のために紹介されたのね。
 でも、この様子だときちんと理解しているのか不安になってしまう。

「……販売、ですか。では、接客があなたの主な仕事になるということですね?」

 そう私が問いかけると、ジャックはドヤ顔をして大きく頷いた。

「ああ。おれっちの取り柄は誰とでもすぐに仲良くなれるってところだからな。特に、ばあちゃんやおばちゃんにはウケがいいんだぜ」

 私は返す言葉が見つからずに無言になる。
 誰とでもすぐに仲良くなれるのは良いことだ。
 だけど、それが接客に結びつくかは別問題だ。
 私はこめかみに手を当てたくなる衝動を抑えてジャックを見据える。

「……ジャックさん。接客は何も年配の女性だけとは限りません。それと言葉遣いですが、接客をする以上改める必要があります。それが出来ないということであれば、このお話はなかったことに――」

「えぇ!?そ、それは困る!あ、いや、困ります!改めます!ここで雇ってもらえないと家を追い出されてしまいます!お願いです。どうか雇ってください!」

 先ほどまでの余裕のある表情を一転させて、机に額を擦りつけるようにして焦った様子を見せるジャック。
 きっと、父親からきつく言い渡されているのだろう。

 それにしても、丁寧な言葉が使えるなら最初から使えば良かったのにと、私は内心で大きなため息を零す。
 もしかして、私の見た目が十歳の子供だから舐められたのだろうか。
 だとしたら、ここで一発かましておいた方がいいのでは?
 だって、最初が肝心だって言うからね。
 私はジャックに見えないように深呼吸をすると、ジャックの目を見て静かに語り始めた。

「今日が面談だと知っていましたよね?いくら相手が十歳の子供だとしても、相手はあなたにとって雇用主です。ここで雇ってもらえなければ家を追い出されるとのことですが、あなたの家の事情など私には関係ありません。あなたを雇うも雇わないも私が判断することです。あなたは初手で対応を間違えた、ただそれだけです」

 そう言い切った私を見て、ジャックの顔色がますます青くなる。

「……お、親父から雇用主が子供だと聞いてはいた。た、ただ、おれっちは堅い雰囲気が苦手だから場を和まそうと思っただけで……本当にすみませんでした!」

 彼の言葉から事実なのだと察した。
 しかし、今日は面談という大事な日だ。
 自分が苦手だからといって、場の空気も読まず勝手をして良いわけがない。

 彼からは、悪意も敵意も感じなかった。
 きっと、あの態度が彼の通常なのだろう。
 先が思いやられるなと、ため息が零れていた。

「例え堅い雰囲気が苦手でも、お客様を相手にするのですから言葉遣いに気をつけてもらわないと困ります。今日は私とヒデさんだから軽口を叩いても許しますが、もし、お客様に失礼なもの言いをしたら許しませんよ」

 ほんの少しだけ威圧してみた。
 すると、青を通り越して顔色を白くさせたジャックは、もの凄い勢いで床に座ると平伏した。

「きき肝に銘じます!」

 こうして前途多難な面談を終えた私達は、開店に向けて準備を再開した。


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