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第一章
第19話 旅立ち
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ようやく旅の準備も整い門へと向かう。
門には荷馬車や冒険者など、街を出る者達が列を作って並んでいた。
門兵にカードを提示して、問題が無ければそのまま街を出られるようだ。
緊張と興奮で胸が高鳴る中、前に並んでいた人物が門兵にカードを見せる。
「通ってよし。次」
いよいよ私の番だ。
斜め掛けのバッグから出しておいた冒険者カードを門兵に見せる。
門兵はカードに視線を走らせた後、顔を上げて口を開いた。
「通ってよし。次」
呆気なく許可が下りて、どこかもの足りなさを覚えながら門を潜る。
石造りのアーチ状の門を潜り抜けた先は、一面緑の草原が土で踏み固められた道の両脇に広がっていた。
視界を遮るものがない緑の草原を目にして、肺いっぱいに空気を吸い込んだ。
前世で吸っていた排気ガスに淀んだ空気とは違い、濃密な土と葉の匂いが鼻腔を擽る。
自然の少ないコンクリートジャングルで育った私は、改めてここが元の世界と異なる世界なのだと実感した。
門を振り返り、街を守るように囲われた壁を眺める。
お母様と暮らしたこの街は、良い思い出もあったがそれ以上に辛く悲しかった。
もし、あの時前世の記憶が蘇らなかったら、あのままひっそりと誰にも気づかれることもなく人生を終えていたかもしれない。
当然、メイスにも会えなかっただろう。
色々と思うことはあるが、今は前世の記憶が蘇って良かったと思う。
そうでなければ、どうしたら良いのか分からずにきっと未だにあの離れで引きこもって暮らしていただろう。
慌ただしく離れを後にしたため、お母様にきちんとお別れをしていなかったことを思い出す。
ここからあの離れは見えないが、離れの方向に体を向けて別れの挨拶を告げた。
「お母様、これからは自由にこの世界を楽しんでいこうと思います。ですからどうか、安心して見守ってください。それから、今まで育てていただきありがとうございました。……行って来ます」
離れの方向に向かって深々と一礼すると顔を上げた。
それから肩で大人しくしているメイスに視線を向けて声をかけた。
「さあ、行こう」
門を背に歩き始めた私に、メイスは返事をした。
『ああ、ここから俺達の冒険が始まる。決して楽しいことばかりではないが、あんな場所に居るよりは何倍もマシだろう。それにお前にはこの俺が居る。だからお前の好きなように生きろ』
重低音の柔らかい声が私の背中を押してくれる。
心強い言葉を欲しい時にくれるメイスは、もう私にとってかけがえのない存在となっていた。
メイスの言葉に、少しだけ残っていた不安が一気に霧散していく。
「うん、そうだね。私の人生は私のもの。もう我慢しないわ」
そう口にした途端、あれだけ悶々と悩んでいたのが馬鹿らしく思えて自然と口角が上がっていた。
ニコッと満面の笑みを浮かべた私を見て、メイスが笑い声を上げた。
『ははっ!そうだ。もう我慢することはない。お前の人生だ。悔いのない人生を楽しめ』
――悔いのない人生を楽しめ。
その言葉がじわじわと胸に浸透してくる。
前世の記憶を全て思い出した訳ではないが、どこかで後悔に似た気持ちを抱えていた。
もしかしたら、志半ばで命を落としたのかもしれない。
だから、メイスの言葉を違和感もなく素直に受け入れられたのだろう。
この世界に生を受けて十年。
私の世界はとても狭かった。
この十年が無駄だとは言わない。
それでも、あまりにも知らない事が多すぎる。
メイスが言ったように楽しいことばかりではないだろう。
だからといって、せっかく訪れた機会を不意にしたくはない。
この世界の人間の寿命がどれくらいなのか分からないが、せめて死の間際には良い人生だったと言いたい。
私は琥珀色の瞳を見つめて応えた。
「うん。これからは自分の心のままにしたいことをしようと思う。メイスには迷惑をかけちゃうかもしれないけど、ずっと傍に居てくれると嬉しいな」
そう応えた私に、琥珀色の瞳が柔らかく細められた。
『お前の傍に居れば色々と面白いことが起こりそうだからな。退屈な生に刺激を与えてくれそうな人間はお前くらいなものだ。頼まれたって離れるつもりはない』
言い方は相変わらず俺様だけど、その声音にはどこか優しさと好奇心が滲んでいた。
こうして無事冒険者として登録を済ませた私達は、一刻も早くこの街から離れるため先を急いだ。
門には荷馬車や冒険者など、街を出る者達が列を作って並んでいた。
門兵にカードを提示して、問題が無ければそのまま街を出られるようだ。
緊張と興奮で胸が高鳴る中、前に並んでいた人物が門兵にカードを見せる。
「通ってよし。次」
いよいよ私の番だ。
斜め掛けのバッグから出しておいた冒険者カードを門兵に見せる。
門兵はカードに視線を走らせた後、顔を上げて口を開いた。
「通ってよし。次」
呆気なく許可が下りて、どこかもの足りなさを覚えながら門を潜る。
石造りのアーチ状の門を潜り抜けた先は、一面緑の草原が土で踏み固められた道の両脇に広がっていた。
視界を遮るものがない緑の草原を目にして、肺いっぱいに空気を吸い込んだ。
前世で吸っていた排気ガスに淀んだ空気とは違い、濃密な土と葉の匂いが鼻腔を擽る。
自然の少ないコンクリートジャングルで育った私は、改めてここが元の世界と異なる世界なのだと実感した。
門を振り返り、街を守るように囲われた壁を眺める。
お母様と暮らしたこの街は、良い思い出もあったがそれ以上に辛く悲しかった。
もし、あの時前世の記憶が蘇らなかったら、あのままひっそりと誰にも気づかれることもなく人生を終えていたかもしれない。
当然、メイスにも会えなかっただろう。
色々と思うことはあるが、今は前世の記憶が蘇って良かったと思う。
そうでなければ、どうしたら良いのか分からずにきっと未だにあの離れで引きこもって暮らしていただろう。
慌ただしく離れを後にしたため、お母様にきちんとお別れをしていなかったことを思い出す。
ここからあの離れは見えないが、離れの方向に体を向けて別れの挨拶を告げた。
「お母様、これからは自由にこの世界を楽しんでいこうと思います。ですからどうか、安心して見守ってください。それから、今まで育てていただきありがとうございました。……行って来ます」
離れの方向に向かって深々と一礼すると顔を上げた。
それから肩で大人しくしているメイスに視線を向けて声をかけた。
「さあ、行こう」
門を背に歩き始めた私に、メイスは返事をした。
『ああ、ここから俺達の冒険が始まる。決して楽しいことばかりではないが、あんな場所に居るよりは何倍もマシだろう。それにお前にはこの俺が居る。だからお前の好きなように生きろ』
重低音の柔らかい声が私の背中を押してくれる。
心強い言葉を欲しい時にくれるメイスは、もう私にとってかけがえのない存在となっていた。
メイスの言葉に、少しだけ残っていた不安が一気に霧散していく。
「うん、そうだね。私の人生は私のもの。もう我慢しないわ」
そう口にした途端、あれだけ悶々と悩んでいたのが馬鹿らしく思えて自然と口角が上がっていた。
ニコッと満面の笑みを浮かべた私を見て、メイスが笑い声を上げた。
『ははっ!そうだ。もう我慢することはない。お前の人生だ。悔いのない人生を楽しめ』
――悔いのない人生を楽しめ。
その言葉がじわじわと胸に浸透してくる。
前世の記憶を全て思い出した訳ではないが、どこかで後悔に似た気持ちを抱えていた。
もしかしたら、志半ばで命を落としたのかもしれない。
だから、メイスの言葉を違和感もなく素直に受け入れられたのだろう。
この世界に生を受けて十年。
私の世界はとても狭かった。
この十年が無駄だとは言わない。
それでも、あまりにも知らない事が多すぎる。
メイスが言ったように楽しいことばかりではないだろう。
だからといって、せっかく訪れた機会を不意にしたくはない。
この世界の人間の寿命がどれくらいなのか分からないが、せめて死の間際には良い人生だったと言いたい。
私は琥珀色の瞳を見つめて応えた。
「うん。これからは自分の心のままにしたいことをしようと思う。メイスには迷惑をかけちゃうかもしれないけど、ずっと傍に居てくれると嬉しいな」
そう応えた私に、琥珀色の瞳が柔らかく細められた。
『お前の傍に居れば色々と面白いことが起こりそうだからな。退屈な生に刺激を与えてくれそうな人間はお前くらいなものだ。頼まれたって離れるつもりはない』
言い方は相変わらず俺様だけど、その声音にはどこか優しさと好奇心が滲んでいた。
こうして無事冒険者として登録を済ませた私達は、一刻も早くこの街から離れるため先を急いだ。
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