28 / 180
第一章
第28話 * カントーリの街へ
しおりを挟む
『ユーリ、少しは落ち着いたか』
メイスの声にハッと我に返る。
目の前には首のないブラッディホーンボアの死体が転がっている。
真横からとはいえ、頭部が無い魔物の死体を間近に見て吐き気を催してしまった。
「うぅ……」
口を手で覆い、死体から視線を逸らした。
頬をメイスの温かい尻尾が撫でて視線を移す。
『良くやった。見ていたくないのなら早く亜空間に収納してしまえ。それと、地面に流れた血は土を被せるか、浄化魔法を使えば良い。魔物は血の匂いに敏感だからな』
「……うん。分かった」
渋々ながらも頷いて、なるべく頭部を見ないようにして亜空間に魔物を収納した後、地面を浄化魔法で綺麗にした。
そうこうしているうちに、少しずつ吐き気が治まってきた。
いくら覚悟を決めたといっても、立ち直りが早いような気がする。
これは……あれか?
精神耐性がついたとか?
そんなことよりも、今は山を越えるのが先だ。
「ふぅ……。それじゃあ、メイス。先を急ごうか」
この山を越えたら、ビリーさんが言っていたカントーリまでは近いらしい。
山の麓にたどり着いた頃には、辺りはオレンジ色に染まっていた。
あの後も、魔物の気配を察知しては討伐するのを繰り返していたおかげで、魔物に対して恐怖や嫌悪といった感情は薄れていった。
私の中で、禍々しい気配=気持ち悪い=魔物という図式がいつの間にか出来上がっていた。
「ふぅ……。何とか山を越えられて良かった。今晩も野宿は避けられそうね」
野営も悪くはないのだが、如何せん地面が固いせいで寝袋に包まっていても寝心地が良くなかった。
ゴリゴリに凝り固まった体を回復魔法で解してからでないと、起き上がるのが辛かった。
もう少しクッション性のある寝袋を購入しておけば良かったと後悔したのは言うまでもない。
若干遠い目をしながら歩を進めていると、前方に行列を成す人達が並んでいるのが目に入った。
列の先には高い壁がそびえ立っており、大きくて頑丈そうな扉の前には鎧のようなものを身に着けた人物が数名立っていた。
どうやらあそこが街に出入りする唯一の門のようだ。
遠くからジッと眺めていると、鎧のようなものを身に着けた人達が、一人一人提示されたカードを確認している。
私も最後尾に並んで順番が来るのを待った。
「よし。通れ」
ロージスの街と同様、特に質問をされることもなく無事カントーリの街に入れてホッと息を吐く。
カントーリの街に入った頃には太陽は沈み、家には明かりが灯っていた。
家から漏れる明かりを頼りに歩いて行くと、宿らしい看板が目に入って足を止める。
山越えと魔物討伐は子供の体には負担が大きかったようで、街に入れた安堵感から疲労が一気に襲いかかってきた。
もうどこでも良いから早くベッドで横になりたかった。
肩に乗って街の様子を眺めていたメイスが口を開いた。
『今日は疲れただろう。早く宿で休もう』
メイスのありがたい申し出に私は頷いた。
幸いにも、ロージスの街を発つ前にお母様の宝石を換金したからお金には余裕がある。
無駄遣いをするつもりはないが、今日はもうこれ以上歩けない。
というか、歩ける気がしない。
見た感じ小奇麗な宿で安くはなさそうだが、他の宿を探す気力は残っていなかった。
重い足をどうにか動かしながら宿へ向かう。
出迎えてくれた宿の女将さんは疲れ切った私の表情を見るなり、手早く手続きを済ませて部屋に案内してくれた。
半分夢の中へ意識が向かっていたが、メイスに無理矢理食事を摂らされてベッドに寝かしつけられた私は、あっという間に夢の中へ旅立っていた。
色々と大変ではあったが、非常に濃い一日となった。
メイスの声にハッと我に返る。
目の前には首のないブラッディホーンボアの死体が転がっている。
真横からとはいえ、頭部が無い魔物の死体を間近に見て吐き気を催してしまった。
「うぅ……」
口を手で覆い、死体から視線を逸らした。
頬をメイスの温かい尻尾が撫でて視線を移す。
『良くやった。見ていたくないのなら早く亜空間に収納してしまえ。それと、地面に流れた血は土を被せるか、浄化魔法を使えば良い。魔物は血の匂いに敏感だからな』
「……うん。分かった」
渋々ながらも頷いて、なるべく頭部を見ないようにして亜空間に魔物を収納した後、地面を浄化魔法で綺麗にした。
そうこうしているうちに、少しずつ吐き気が治まってきた。
いくら覚悟を決めたといっても、立ち直りが早いような気がする。
これは……あれか?
精神耐性がついたとか?
そんなことよりも、今は山を越えるのが先だ。
「ふぅ……。それじゃあ、メイス。先を急ごうか」
この山を越えたら、ビリーさんが言っていたカントーリまでは近いらしい。
山の麓にたどり着いた頃には、辺りはオレンジ色に染まっていた。
あの後も、魔物の気配を察知しては討伐するのを繰り返していたおかげで、魔物に対して恐怖や嫌悪といった感情は薄れていった。
私の中で、禍々しい気配=気持ち悪い=魔物という図式がいつの間にか出来上がっていた。
「ふぅ……。何とか山を越えられて良かった。今晩も野宿は避けられそうね」
野営も悪くはないのだが、如何せん地面が固いせいで寝袋に包まっていても寝心地が良くなかった。
ゴリゴリに凝り固まった体を回復魔法で解してからでないと、起き上がるのが辛かった。
もう少しクッション性のある寝袋を購入しておけば良かったと後悔したのは言うまでもない。
若干遠い目をしながら歩を進めていると、前方に行列を成す人達が並んでいるのが目に入った。
列の先には高い壁がそびえ立っており、大きくて頑丈そうな扉の前には鎧のようなものを身に着けた人物が数名立っていた。
どうやらあそこが街に出入りする唯一の門のようだ。
遠くからジッと眺めていると、鎧のようなものを身に着けた人達が、一人一人提示されたカードを確認している。
私も最後尾に並んで順番が来るのを待った。
「よし。通れ」
ロージスの街と同様、特に質問をされることもなく無事カントーリの街に入れてホッと息を吐く。
カントーリの街に入った頃には太陽は沈み、家には明かりが灯っていた。
家から漏れる明かりを頼りに歩いて行くと、宿らしい看板が目に入って足を止める。
山越えと魔物討伐は子供の体には負担が大きかったようで、街に入れた安堵感から疲労が一気に襲いかかってきた。
もうどこでも良いから早くベッドで横になりたかった。
肩に乗って街の様子を眺めていたメイスが口を開いた。
『今日は疲れただろう。早く宿で休もう』
メイスのありがたい申し出に私は頷いた。
幸いにも、ロージスの街を発つ前にお母様の宝石を換金したからお金には余裕がある。
無駄遣いをするつもりはないが、今日はもうこれ以上歩けない。
というか、歩ける気がしない。
見た感じ小奇麗な宿で安くはなさそうだが、他の宿を探す気力は残っていなかった。
重い足をどうにか動かしながら宿へ向かう。
出迎えてくれた宿の女将さんは疲れ切った私の表情を見るなり、手早く手続きを済ませて部屋に案内してくれた。
半分夢の中へ意識が向かっていたが、メイスに無理矢理食事を摂らされてベッドに寝かしつけられた私は、あっという間に夢の中へ旅立っていた。
色々と大変ではあったが、非常に濃い一日となった。
198
あなたにおすすめの小説
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
底無しポーターは端倪すべからざる
さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。
ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。
攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。
そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。
※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。
※ごくまれに残酷描写を含みます。
※【小説家になろう】様にも掲載しています。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。
ソラリアル
ファンタジー
※本作は改題・改稿をして場所を移動しました。
現在は
『従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々』
として連載中です。2026.1.31
どうして、魔獣と呼ばれる存在は悪者扱いされてしまうんだろう。
あんなに癒しをくれる、優しい子たちなのに。
そんな思いを抱いていた俺は、ある日突然、命を落とした――はずだった。
だけど、目を開けるとそこには女神さまがいて、俺は転生を勧められる。
そして与えられた力は、【嫌われ者とされる子たちを助けられる力】。
異世界で目覚めた俺は、頼りになる魔獣たちに囲まれて穏やかな暮らしを始めた。
畑を耕し、一緒にごはんを食べて、笑い合う日々。
……なのに、人々の噂はこうだ。
「森に魔王がいる」
「強大な魔物を従えている」
「街を襲う準備をしている」
――なんでそうなるの?
俺はただ、みんなと平和に暮らしたいだけなのに。
これは、嫌われ者と呼ばれるもふもふな魔獣たちと過ごす、
のんびり?ドタバタ?異世界スローライフの物語。
■小説家になろう、カクヨムでも同時連載中です■
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる