転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第一章 

第28話 * カントーリの街へ 

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『ユーリ、少しは落ち着いたか』

 メイスの声にハッと我に返る。
 目の前には首のないブラッディホーンボアの死体が転がっている。
 真横からとはいえ、頭部が無い魔物の死体を間近に見て吐き気を催してしまった。

「うぅ……」

 口を手で覆い、死体から視線を逸らした。
 頬をメイスの温かい尻尾が撫でて視線を移す。

『良くやった。見ていたくないのなら早く亜空間に収納してしまえ。それと、地面に流れた血は土を被せるか、浄化魔法を使えば良い。魔物は血の匂いに敏感だからな』

「……うん。分かった」

 渋々ながらも頷いて、なるべく頭部を見ないようにして亜空間に魔物を収納した後、地面を浄化魔法で綺麗にした。
 そうこうしているうちに、少しずつ吐き気が治まってきた。
 いくら覚悟を決めたといっても、立ち直りが早いような気がする。
 これは……あれか?
 精神耐性がついたとか?
 そんなことよりも、今は山を越えるのが先だ。

「ふぅ……。それじゃあ、メイス。先を急ごうか」

 この山を越えたら、ビリーさんが言っていたカントーリまでは近いらしい。








 山の麓にたどり着いた頃には、辺りはオレンジ色に染まっていた。
 あの後も、魔物の気配を察知しては討伐するのを繰り返していたおかげで、魔物に対して恐怖や嫌悪といった感情は薄れていった。
 私の中で、禍々しい気配=気持ち悪い=魔物という図式がいつの間にか出来上がっていた。

「ふぅ……。何とか山を越えられて良かった。今晩も野宿は避けられそうね」

 野営も悪くはないのだが、如何いかんせん地面が固いせいで寝袋にくるまっていても寝心地が良くなかった。
 ゴリゴリに凝り固まった体を回復魔法でほぐしてからでないと、起き上がるのが辛かった。
 もう少しクッション性のある寝袋を購入しておけば良かったと後悔したのは言うまでもない。
 若干遠い目をしながら歩を進めていると、前方に行列を成す人達が並んでいるのが目に入った。
 列の先には高い壁がそびえ立っており、大きくて頑丈そうな扉の前には鎧のようなものを身に着けた人物が数名立っていた。
 どうやらあそこが街に出入りする唯一の門のようだ。
 遠くからジッと眺めていると、鎧のようなものを身に着けた人達が、一人一人提示されたカードを確認している。
 私も最後尾に並んで順番が来るのを待った。

「よし。通れ」

 ロージスの街と同様、特に質問をされることもなく無事カントーリの街に入れてホッと息を吐く。
 カントーリの街に入った頃には太陽は沈み、家には明かりが灯っていた。
 家から漏れる明かりを頼りに歩いて行くと、宿らしい看板が目に入って足を止める。
 山越えと魔物討伐は子供の体には負担が大きかったようで、街に入れた安堵感から疲労が一気に襲いかかってきた。
 もうどこでも良いから早くベッドで横になりたかった。
 肩に乗って街の様子を眺めていたメイスが口を開いた。

『今日は疲れただろう。早く宿で休もう』

 メイスのありがたい申し出に私は頷いた。
 幸いにも、ロージスの街を発つ前にお母様の宝石を換金したからお金には余裕がある。
 無駄遣いをするつもりはないが、今日はもうこれ以上歩けない。
 というか、歩ける気がしない。
 見た感じ小奇麗な宿で安くはなさそうだが、他の宿を探す気力は残っていなかった。
 重い足をどうにか動かしながら宿へ向かう。
 出迎えてくれた宿の女将さんは疲れ切った私の表情を見るなり、手早く手続きを済ませて部屋に案内してくれた。
 半分夢の中へ意識が向かっていたが、メイスに無理矢理食事を摂らされてベッドに寝かしつけられた私は、あっという間に夢の中へ旅立っていた。

 色々と大変ではあったが、非常に濃い一日となった。
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