65 / 180
第二章
第65話 命名 ブロン
しおりを挟む
マシュマロのようなころころとした真っ白い子犬の姿に、私の心臓が一瞬で撃ち抜かれる。
「可愛い~!マシュマロみたい!」
あまりの愛らしさにフェンリルを腕に抱えて頬ずりする。
ふわっふわの毛並みが柔らかくて気持ち良い。
時折、フェンリルのお腹に顔を埋めてお日様の匂いを堪能する。
フェンリルは私にされるがまま大人しく腕に抱えられていた。
でも、嫌というわけではなさそうで、ふさふさの尻尾をパタパタと振っている。
肩に乗ったメイスが不貞腐れたように呟く。
『……俺の時とはえらい違いだな』
メイスの呟きを耳にして確かにそうだと気がつく。
私は基本、もふもふ系が大好きだ。
ビロードのような艶々とした黒い毛並みも、撫で心地が良くて気に入っている。
しかし、同じもふもふでも、メイスには気軽に触れるようなことはなるべく避けていた。
こうしてフェンリルと見比べてみると、理由が分かったような気がした。
それは、大人の態度を取るメイスと、幼い少年のままのフェンリルを見ていたらすぐに気がついた。
メイスの場合、内面から滲み出る気品とでも言えば良いだろうか、気後れしてしまいそうになるほどの高貴なオーラに、近寄り難いこともしばしばあった。
別にメイスが苦手なわけではなく、言動や佇まいが人間の大人みたいだってことね。
一方のフェンリルは、声色から幼いことは容易に想像出来たし、そもそも言動も幼子とそう大して変わらない。
図体は大きいのに言動が幼いなんてちぐはぐしているが、そんな状態の彼を野放しのままでいたらきっと大変なことになってしまう。
メイスの呟きを無視して、腕に抱えた愛らしい子犬(元は大きなフェンリルだった)に視線を向けて尋ねる。
「そうだ!名前は何て言うの?」
尋ねられた子犬は首を傾げて言った。
『なまえ?ないよ?』
その言葉に私もつられて首を傾げる。
メイスは自分の名前を持っているのに、この子は持っていないということだろうか?
ん?
魔物が名前を持っていること自体がおかしいのか?
ふと湧いた疑問が脳内を占めていく。
疑問が何周も脳内を駆け巡っていた時、フェンリルの弾んだ声が耳に届いた。
『おねえちゃんがなまえつけて』
穢れを知らない純粋な瞳と視線が合う。
可愛い……。
名前をつけてと言われたけど、本当に私がつけて良いの?
どうしようかと悩んでいると、メイスが話し始めた。
『ユーリ、アイツに名前をつけてやれ。名前をつけることでアイツはお前の言うことに逆らえなくなる。俺としても面倒事から解放されるのはありがたい』
メイスったら。面倒事を私に押しつける気ね。
ま、私としてもこんな愛らしい子が傍に居てくれるなら大歓迎よ。
もふもふし放題な上に、もし、この子が暴走しそうになった時は名づけ親として全力で止めさせてもらうわ。
「わかった。メイスの平穏のためにもとびっきりいい名前を考えるわ」
期待の眼差しを向けるフェンリルに応えるため、私は前世の記憶を頼りに名前を考える。
真っ白くてふわっふわの毛並みは、まるでマシュマロのようだ。
そうだっ!
マシュマロから取ってマシューはどうだろう?
いやいや、あまりにも安直過ぎない?
だったら、白いから色に因んだ名前の方が無難かもしれない。
白かぁ……。
英語ではホワイトだけど、ホワイトって……ないな。
シロ……はもっとない。
う~ん。私って壊滅的にネーミングセンスがなさすぎる。
「あっ、君の名前はブロン。白いって意味だよ。……どうかな?」
我ながらセンスある名前だと思ったが、すぐに自信がなくなる。
なぜなら、ブロンという響きは良いものの、意味はそのまんまだったからだ。
しかし、フェンリルはその名前が気に入ったみたいで、ぶんぶんと尻尾を振って弾んだ声で言った。
『ブロン!ぼく、ブロン!うれしい!ありがとう、おねえちゃん!』
フェンリル改めブロンはそう返事をすると、眩しい光を放って体が耀き出した。
「っ!眩しいっ!」
間近で見ていた私は、反射的に目を瞑る。
『もう目を開けて大丈夫だ。これで従魔契約は完了した』
メイスの声にそっと目を開けると、腕の中にはころころとしたブロンが尻尾を振っているだけだった。
その後、握りかけのおにぎりに興味を示したブロンにおにぎりの美味しさをしっかりと伝えたら、あっという間におにぎりの虜になってしまったようだ。
新たにブロンと名付けられたフェンリルが仲間に加わり、一人と二匹の楽しい冒険が始まった。
「可愛い~!マシュマロみたい!」
あまりの愛らしさにフェンリルを腕に抱えて頬ずりする。
ふわっふわの毛並みが柔らかくて気持ち良い。
時折、フェンリルのお腹に顔を埋めてお日様の匂いを堪能する。
フェンリルは私にされるがまま大人しく腕に抱えられていた。
でも、嫌というわけではなさそうで、ふさふさの尻尾をパタパタと振っている。
肩に乗ったメイスが不貞腐れたように呟く。
『……俺の時とはえらい違いだな』
メイスの呟きを耳にして確かにそうだと気がつく。
私は基本、もふもふ系が大好きだ。
ビロードのような艶々とした黒い毛並みも、撫で心地が良くて気に入っている。
しかし、同じもふもふでも、メイスには気軽に触れるようなことはなるべく避けていた。
こうしてフェンリルと見比べてみると、理由が分かったような気がした。
それは、大人の態度を取るメイスと、幼い少年のままのフェンリルを見ていたらすぐに気がついた。
メイスの場合、内面から滲み出る気品とでも言えば良いだろうか、気後れしてしまいそうになるほどの高貴なオーラに、近寄り難いこともしばしばあった。
別にメイスが苦手なわけではなく、言動や佇まいが人間の大人みたいだってことね。
一方のフェンリルは、声色から幼いことは容易に想像出来たし、そもそも言動も幼子とそう大して変わらない。
図体は大きいのに言動が幼いなんてちぐはぐしているが、そんな状態の彼を野放しのままでいたらきっと大変なことになってしまう。
メイスの呟きを無視して、腕に抱えた愛らしい子犬(元は大きなフェンリルだった)に視線を向けて尋ねる。
「そうだ!名前は何て言うの?」
尋ねられた子犬は首を傾げて言った。
『なまえ?ないよ?』
その言葉に私もつられて首を傾げる。
メイスは自分の名前を持っているのに、この子は持っていないということだろうか?
ん?
魔物が名前を持っていること自体がおかしいのか?
ふと湧いた疑問が脳内を占めていく。
疑問が何周も脳内を駆け巡っていた時、フェンリルの弾んだ声が耳に届いた。
『おねえちゃんがなまえつけて』
穢れを知らない純粋な瞳と視線が合う。
可愛い……。
名前をつけてと言われたけど、本当に私がつけて良いの?
どうしようかと悩んでいると、メイスが話し始めた。
『ユーリ、アイツに名前をつけてやれ。名前をつけることでアイツはお前の言うことに逆らえなくなる。俺としても面倒事から解放されるのはありがたい』
メイスったら。面倒事を私に押しつける気ね。
ま、私としてもこんな愛らしい子が傍に居てくれるなら大歓迎よ。
もふもふし放題な上に、もし、この子が暴走しそうになった時は名づけ親として全力で止めさせてもらうわ。
「わかった。メイスの平穏のためにもとびっきりいい名前を考えるわ」
期待の眼差しを向けるフェンリルに応えるため、私は前世の記憶を頼りに名前を考える。
真っ白くてふわっふわの毛並みは、まるでマシュマロのようだ。
そうだっ!
マシュマロから取ってマシューはどうだろう?
いやいや、あまりにも安直過ぎない?
だったら、白いから色に因んだ名前の方が無難かもしれない。
白かぁ……。
英語ではホワイトだけど、ホワイトって……ないな。
シロ……はもっとない。
う~ん。私って壊滅的にネーミングセンスがなさすぎる。
「あっ、君の名前はブロン。白いって意味だよ。……どうかな?」
我ながらセンスある名前だと思ったが、すぐに自信がなくなる。
なぜなら、ブロンという響きは良いものの、意味はそのまんまだったからだ。
しかし、フェンリルはその名前が気に入ったみたいで、ぶんぶんと尻尾を振って弾んだ声で言った。
『ブロン!ぼく、ブロン!うれしい!ありがとう、おねえちゃん!』
フェンリル改めブロンはそう返事をすると、眩しい光を放って体が耀き出した。
「っ!眩しいっ!」
間近で見ていた私は、反射的に目を瞑る。
『もう目を開けて大丈夫だ。これで従魔契約は完了した』
メイスの声にそっと目を開けると、腕の中にはころころとしたブロンが尻尾を振っているだけだった。
その後、握りかけのおにぎりに興味を示したブロンにおにぎりの美味しさをしっかりと伝えたら、あっという間におにぎりの虜になってしまったようだ。
新たにブロンと名付けられたフェンリルが仲間に加わり、一人と二匹の楽しい冒険が始まった。
139
あなたにおすすめの小説
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
底無しポーターは端倪すべからざる
さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。
ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。
攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。
そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。
※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。
※ごくまれに残酷描写を含みます。
※【小説家になろう】様にも掲載しています。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。
ソラリアル
ファンタジー
※本作は改題・改稿をして場所を移動しました。
現在は
『従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々』
として連載中です。2026.1.31
どうして、魔獣と呼ばれる存在は悪者扱いされてしまうんだろう。
あんなに癒しをくれる、優しい子たちなのに。
そんな思いを抱いていた俺は、ある日突然、命を落とした――はずだった。
だけど、目を開けるとそこには女神さまがいて、俺は転生を勧められる。
そして与えられた力は、【嫌われ者とされる子たちを助けられる力】。
異世界で目覚めた俺は、頼りになる魔獣たちに囲まれて穏やかな暮らしを始めた。
畑を耕し、一緒にごはんを食べて、笑い合う日々。
……なのに、人々の噂はこうだ。
「森に魔王がいる」
「強大な魔物を従えている」
「街を襲う準備をしている」
――なんでそうなるの?
俺はただ、みんなと平和に暮らしたいだけなのに。
これは、嫌われ者と呼ばれるもふもふな魔獣たちと過ごす、
のんびり?ドタバタ?異世界スローライフの物語。
■小説家になろう、カクヨムでも同時連載中です■
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる