転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第二章

第66話 ブロンのお目付け役

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 ブロンが仲間に加わって二日が経つ。
 体が小さくなったおかげで、多少やんちゃをしても周囲を破壊することはなくなったし、私が注意すると素直に従ってくれる。
 何が良くて何が悪いかを教えれば、ブロンはちゃんと理解してくれた。
 私はブロンを腕に抱えて頭を撫でながら褒め言葉を口にした。

「ブロンは賢いねぇ。いい子いい子」

 ブロンは褒められて気を良くしたのか、尻尾をパタパタと振って喜びを表す。

『えへへ。ぼく、かしこい、いい子』

 うんうん、そうだね。
 ブロンは賢いいい子。
 ブロンの言葉に相槌を打っていたら、メイスの呆れた声が聞こえた。

『ユーリ、そいつを甘やかすな。今はそんななりだが、元は図体がでかいフェンリルだ。人間と関わる機会が増えるなら、きちんと付き合い方を教えておけ』

 それもそうかと思った私は素直に頷いた。

「そうだね。今は愛らしい子犬の姿だけど、大きくなったら周りに被害が及ぶかもしれないもんね」

 キョトンとした目で私を見上げるブロンに視線を向けると、私は事情を説明した。

「ブロン。人間はね、とっても脆弱な生き物なの。ブロンが遊びでじゃれただけでも人間は死ぬこともあるの。だから、もし人間と遊ぶ時は加減をするか、小さいままで遊んでね。でないと、メイスだけでなく私も困ることになっちゃうから。……理解出来た、かな?」

 慎重に言葉を選んで説明したつもりだが、果たしてブロンは意味を理解出来ただろうか?
 ブロンの湖のような綺麗な瞳をジッと見つめて様子を窺う。

『わかった!おじちゃんとおねえちゃんが困るなら、ぼく、弱いニンゲンのまえでは大きくならないよ!』

 尻尾を勢いよく振って応えたブロンだったが、メイスも私も若干不安を滲ませてお互い見つめ合う。
 しばらく見つめ合った後、メイスが口を開いた。

『……不安がないわけではないが、元に戻らなければそこまで目くじらを立てても仕方あるまい。ユーリ、人の街に入る時は、そいつをしっかりと見ていろ』

 ブロンのお目付け役は私なのね。
 でも、元の大きさにならなければ大丈夫そう。
 メイスに視線を合わせて頷き返すと、メイスは話しを続けた。

『そいつは敵意や悪意に敏感だ。そいつが傍に居れば、厄介な人間もそうそう近づいて来ないだろう。お前の身を守る点でも、そいつを傍に置いておくのはお前にとっても有利になる』

 へぇ、それは非常にありがたい。
 私はメイスの言葉に感心しながらブロンを見る。
 私を見上げたままのブロンは、キラキラとした眼差しを向けて誇らしげに言った。

『ぼく、おねえちゃんと一緒にいるよ。わるいヤツはぼくがやっつける!』

 えっへん!と鼻をピスピスさせるブロンが可愛い。
 しかし、可愛い見た目に反して言うことは不穏だ。
 私は慌ててブロンに注意する。

「教えてくれるだけでいいから!ブロンがやっつけたら死人が出ちゃう!」

 すると、不服そうな声色でブロンが答えた。

『えぇ~。わるいヤツ、やっつける。……ダメ?』

 瞳をきゅるんとさせて見上げてくるが、駄目なものは駄目だ。
 こんな可愛い子に人殺しをさせたくなくて、つい口調がきつくなってしまった。

「駄目!いくら悪いヤツでもブロンが殺す必要はないの!そういった事は人間に任せておけばいいのよ!」

 そう口にしてキツく言い過ぎたと気がついた私は、瞳をうるうるとさせたブロンを宥めるように優しく語りかけた。

「……ブロンの気持ちはありがたいわ。でもね、悪いヤツだからって殺すのはいけないわ。だから、悪いヤツが居たら教えてもらえると助かるな。……そうねぇ、脅すだけなら大丈夫かな」

 ブロンは途端に瞳を輝かせると、尻尾を勢いよくパタパタと振って元気に応えた。

『うん!ぼく、がうっておどす!がうってすると皆逃げて行くんだよ!』

 ……そりゃあ、元のあの姿で吠えられたら誰でも逃げ出すだろう。
 遠い目をしながら、叫び声を上げて逃げて行く人達を想像する。
 脅すだけで逃げて行ってくれるなら被害が少なくて済むなと思った私は、ブロンの頭を撫でて言った。

「そっかぁ。がうって脅すだけで逃げて行くんだぁ。ブロンは凄いね。じゃあ、悪いヤツが現れたらがうって脅してね」
『うん!がうっておどすよ!』




 そんな私達の会話のやり取りを聞いていたメイスがポツリと呟いた。

『……アイツが素直に言うことを聞くとは、さすがユーリだな』

 その呟きは私の耳に届くことはなかった。
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