73 / 180
第二章
第73話 鬼教官の復活!?
しおりを挟む
「……首輪が、消えた……?」
杉野さんの呟きが聞こえて目を開ける。
首輪ごと消してしまえと念じていたが、どうやら上手くいったようだ。
あんな忌まわしい物、目の前にあるだけで不快な気分になるからね。
「あれ?契約書が消えた?」
亜空間に仕舞っていた契約書が、首輪が消えたのと同時に霧散するように消えていた。
目を白黒させていると、肩に飛び乗ってきたメイスが答える。
『首輪が消えたから契約書も消えたのだろう。これであいつは自由だ。良かったな』
そうか。首輪と契約書は連動していたのか。
一方が消えれば、もう一方も消える仕組みになっていたのだろう。
なんにせよ、これで杉野さんは自由だ。
「杉野さん、首輪を消したら契約書も消えちゃったみたい。これで杉野さんは自由だよ。良かったね」
笑みを浮かべて自由になったと告げた瞬間、杉野さんの瞳から涙が零れ落ちた。
「……自由。僕が自由に?」
茫然とその場に座り込んだままの杉野さんは、隷属の首輪から解放されて感動しているのか、流れる涙に気がつかないようだった。
亜空間からタオルを取り出して杉野さんの目元を拭うと、彼はゆるゆると私を見てハッと我に返る。
「あっ!すみません!自由になれたのが嬉しくてお礼を言うのを忘れていました!ユーリさん、本当に、本当にありがとうございます!」
こちらを見上げていた杉野さんだったが、再び床に額をつけて深々と頭を下げて感謝の言葉を述べる。
私は慌てて杉野さんに頭を上げるように訴えた。
「お礼の言葉はもう十分もらったから頭を上げて。それに、困った時はお互いさまって言うでしょう?だから、ほら、ね?」
動揺したせいで、自分でも何を伝えたかったのか分からなくなっていた。
そのタイミングでブロンが腕から飛び降りて、杉野さんに向かって吠えた。
「わふっ!」
「わっ!……子犬?可愛い」
今気がついたと言わんばかりの杉野さんは肩を大きく揺らした後、愛らしい姿のブロンに頬を緩めた。
誰でもあの状況なら周りを見る余裕なんてなかっただろう。
気持ちは分からなくもないが、こんなに愛らしいブロンに気がつかなかったなんて、余程精神が追い詰められていたということに改めて気づかされた。
尻尾をパタパタと振って杉野さんに駆け寄るブロンに、柔らかく目を細めて頭や背中を撫でると、杉野さんは笑みを浮かべて感嘆の声をあげた。
「うわ……。もっふもふだぁ。人懐っこいな。可愛い」
「ふふ。可愛いでしょ。その子はブロンよ」
ブロンの頭を撫でていた杉野さんの頬がますます緩んでいく。
「……ブロンか。良い名前だね。僕は杉野 秀幸。友達はヒデって呼んでた。あっ、そうだ!ユーリさん。……その、杉野さんって言うのやめてください。さん付けで呼ばれるのは、ちょっと恥ずかしいです……。ヒデって呼んでもらえると嬉しいです」
突然、顔を上げて私に視線を向けた杉野さんが、はにかんだように頬を薄っすらと赤く染めて言ってきたので、私も笑顔で返す。
「ん~。じゃあ、ヒデさん。私のことはユーリって呼んでくれるかな?あと、敬語も要らないから普通に話してもらえる?」
「……え、でも、僕は助けてもらったし、この世界のこと何も知らないから……」
私のお願いにヒデさんは狼狽え始める。
「それは私も一緒だよ。それを言うならメイスに敬語で話さなきゃいけなくなるわ。メイス、私が敬語で話したらどう思う?」
私の問いかけに、メイスは体をぶるっと震わせて答えた。
『尻尾がむず痒くなるからやめろ』
心底嫌そうな声色に、思わず笑いが零れた。
「ふ、ふふふ。メイスも私も堅苦しいのは苦手なの。だから、無理に敬語で話す必要はないわ」
しばらく私とメイスを交互に見ていたヒデさんだったが、ふっ、と笑みを浮かべて応えた。
「わかりま、わかった。でも、名前だけはさん付けで呼ばせてほしい。だって、ユーリさん、この世界で生まれて育ったんだよね?なら、先輩という意味で「ユーリさん」と呼ぶべきだと思うんだ」
そう応えたヒデさんの言葉にメイスが反応した。
『ふむ。此奴は道理をわきまえておるようだな。謙虚なヤツは嫌いではない。よし、この俺が特別に鍛えてやろう』
メイスの言葉の意味を理解した私は、頬を引きつらせて窓の外に視線を向ける。
何も知らないヒデさんには悪いけど、メイスの指導は厳しい。
鬼教官の復活だと内心驚愕したが、ヒデさん自身のためだと考えて私は口を噤んだ。
その後、メイスはヒデさんに向かって宣言した。
『おい、お前。明日からビシバシ鍛えるから覚悟しておけ』
「ね、猫が、喋った……?」
メイスが話せることに最初こそ驚いたヒデさんだったが、「異世界ならそんなものか」と呟くとすぐに受け入れたようだった。
ヒデさん、馴染むのが早くない!?
それと、ヒデさんにはもう一度私が女の子だということと、普段は性別を偽っていることも説明した。
そちらの方もヒデさんはすぐに理解を示してくれたので、人前では「僕」と言っても驚かないようにと念を押しておいた。
杉野さんの呟きが聞こえて目を開ける。
首輪ごと消してしまえと念じていたが、どうやら上手くいったようだ。
あんな忌まわしい物、目の前にあるだけで不快な気分になるからね。
「あれ?契約書が消えた?」
亜空間に仕舞っていた契約書が、首輪が消えたのと同時に霧散するように消えていた。
目を白黒させていると、肩に飛び乗ってきたメイスが答える。
『首輪が消えたから契約書も消えたのだろう。これであいつは自由だ。良かったな』
そうか。首輪と契約書は連動していたのか。
一方が消えれば、もう一方も消える仕組みになっていたのだろう。
なんにせよ、これで杉野さんは自由だ。
「杉野さん、首輪を消したら契約書も消えちゃったみたい。これで杉野さんは自由だよ。良かったね」
笑みを浮かべて自由になったと告げた瞬間、杉野さんの瞳から涙が零れ落ちた。
「……自由。僕が自由に?」
茫然とその場に座り込んだままの杉野さんは、隷属の首輪から解放されて感動しているのか、流れる涙に気がつかないようだった。
亜空間からタオルを取り出して杉野さんの目元を拭うと、彼はゆるゆると私を見てハッと我に返る。
「あっ!すみません!自由になれたのが嬉しくてお礼を言うのを忘れていました!ユーリさん、本当に、本当にありがとうございます!」
こちらを見上げていた杉野さんだったが、再び床に額をつけて深々と頭を下げて感謝の言葉を述べる。
私は慌てて杉野さんに頭を上げるように訴えた。
「お礼の言葉はもう十分もらったから頭を上げて。それに、困った時はお互いさまって言うでしょう?だから、ほら、ね?」
動揺したせいで、自分でも何を伝えたかったのか分からなくなっていた。
そのタイミングでブロンが腕から飛び降りて、杉野さんに向かって吠えた。
「わふっ!」
「わっ!……子犬?可愛い」
今気がついたと言わんばかりの杉野さんは肩を大きく揺らした後、愛らしい姿のブロンに頬を緩めた。
誰でもあの状況なら周りを見る余裕なんてなかっただろう。
気持ちは分からなくもないが、こんなに愛らしいブロンに気がつかなかったなんて、余程精神が追い詰められていたということに改めて気づかされた。
尻尾をパタパタと振って杉野さんに駆け寄るブロンに、柔らかく目を細めて頭や背中を撫でると、杉野さんは笑みを浮かべて感嘆の声をあげた。
「うわ……。もっふもふだぁ。人懐っこいな。可愛い」
「ふふ。可愛いでしょ。その子はブロンよ」
ブロンの頭を撫でていた杉野さんの頬がますます緩んでいく。
「……ブロンか。良い名前だね。僕は杉野 秀幸。友達はヒデって呼んでた。あっ、そうだ!ユーリさん。……その、杉野さんって言うのやめてください。さん付けで呼ばれるのは、ちょっと恥ずかしいです……。ヒデって呼んでもらえると嬉しいです」
突然、顔を上げて私に視線を向けた杉野さんが、はにかんだように頬を薄っすらと赤く染めて言ってきたので、私も笑顔で返す。
「ん~。じゃあ、ヒデさん。私のことはユーリって呼んでくれるかな?あと、敬語も要らないから普通に話してもらえる?」
「……え、でも、僕は助けてもらったし、この世界のこと何も知らないから……」
私のお願いにヒデさんは狼狽え始める。
「それは私も一緒だよ。それを言うならメイスに敬語で話さなきゃいけなくなるわ。メイス、私が敬語で話したらどう思う?」
私の問いかけに、メイスは体をぶるっと震わせて答えた。
『尻尾がむず痒くなるからやめろ』
心底嫌そうな声色に、思わず笑いが零れた。
「ふ、ふふふ。メイスも私も堅苦しいのは苦手なの。だから、無理に敬語で話す必要はないわ」
しばらく私とメイスを交互に見ていたヒデさんだったが、ふっ、と笑みを浮かべて応えた。
「わかりま、わかった。でも、名前だけはさん付けで呼ばせてほしい。だって、ユーリさん、この世界で生まれて育ったんだよね?なら、先輩という意味で「ユーリさん」と呼ぶべきだと思うんだ」
そう応えたヒデさんの言葉にメイスが反応した。
『ふむ。此奴は道理をわきまえておるようだな。謙虚なヤツは嫌いではない。よし、この俺が特別に鍛えてやろう』
メイスの言葉の意味を理解した私は、頬を引きつらせて窓の外に視線を向ける。
何も知らないヒデさんには悪いけど、メイスの指導は厳しい。
鬼教官の復活だと内心驚愕したが、ヒデさん自身のためだと考えて私は口を噤んだ。
その後、メイスはヒデさんに向かって宣言した。
『おい、お前。明日からビシバシ鍛えるから覚悟しておけ』
「ね、猫が、喋った……?」
メイスが話せることに最初こそ驚いたヒデさんだったが、「異世界ならそんなものか」と呟くとすぐに受け入れたようだった。
ヒデさん、馴染むのが早くない!?
それと、ヒデさんにはもう一度私が女の子だということと、普段は性別を偽っていることも説明した。
そちらの方もヒデさんはすぐに理解を示してくれたので、人前では「僕」と言っても驚かないようにと念を押しておいた。
148
あなたにおすすめの小説
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
底無しポーターは端倪すべからざる
さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。
ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。
攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。
そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。
※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。
※ごくまれに残酷描写を含みます。
※【小説家になろう】様にも掲載しています。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。
ソラリアル
ファンタジー
※本作は改題・改稿をして場所を移動しました。
現在は
『従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々』
として連載中です。2026.1.31
どうして、魔獣と呼ばれる存在は悪者扱いされてしまうんだろう。
あんなに癒しをくれる、優しい子たちなのに。
そんな思いを抱いていた俺は、ある日突然、命を落とした――はずだった。
だけど、目を開けるとそこには女神さまがいて、俺は転生を勧められる。
そして与えられた力は、【嫌われ者とされる子たちを助けられる力】。
異世界で目覚めた俺は、頼りになる魔獣たちに囲まれて穏やかな暮らしを始めた。
畑を耕し、一緒にごはんを食べて、笑い合う日々。
……なのに、人々の噂はこうだ。
「森に魔王がいる」
「強大な魔物を従えている」
「街を襲う準備をしている」
――なんでそうなるの?
俺はただ、みんなと平和に暮らしたいだけなのに。
これは、嫌われ者と呼ばれるもふもふな魔獣たちと過ごす、
のんびり?ドタバタ?異世界スローライフの物語。
■小説家になろう、カクヨムでも同時連載中です■
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる