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第二章
第72話 隷属の首輪
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杉野さんは茫然として私を見上げていた。
その様子から、私の言葉が伝わったのは見てとれた。
しかし、返事が無ければ本当に成功したのか判断がつかない。
私は、もう一度杉野さんに声をかけた。
「杉野さん?私の言葉、理解出来ていますか?」
ハッと我に返った杉野さんが慌てて口を開く。
「あ、はい!理解出来ます!……ちょっと、口の動きと違うのが違和感ありますけど、それでもちゃんと理解出来ます!」
良かった。会話はちゃんと成り立っている。
しかし、杉野さんが言うように、口の動きとそこから発せられる単語に多少違和感を覚える。
だがまぁ、口元をつぶさに見ていなければそんなに気になるレベルではないかな。
「良かった。会話が理解出来るなら安心した。……それにしても、学生服が汚れちゃっているわね。先に綺麗にしてから食堂に行こうか」
あの薄茶色の髪の男性に突き飛ばされたせいで服は土に塗れ、所々ほつれている。
手を杉野さんに向けて翳すと、生活魔法の一つである清浄魔法を使った。
この魔法は本当に便利だ。
イメージさえしっかりとしていればどんな汚れも綺麗に取ってくれて、多少のほつれであれば直して新品同様……とまではいかないにしても、まるでクリーニング店に出したような仕上がりになるのだ。
清浄魔法で体を清潔に保つのも便利でありがたいのだけど、出来ればお風呂に浸かりたい。
「うわぁ……。凄い!新品みたい!全身もすっきりして不快感がなくなった。あの、ユーリさん。これってクリーンですよね?ありがとうございます!」
全身がさっぱりとして気分が良いのか、満面の笑みを浮かべて頭を下げる杉野さん。
ぼさぼさのぼろぼろだった頃でも整った顔立ちなのは知っていたが、身綺麗になった今は更にその整った容姿が際立って見えた。
あのままあの男性の下に居たらと想像して身震いする。
ふと、杉野さんの首元に視線が行く。
さほど太くはないが、鉄のような首輪が目に入って杉野さんに尋ねた。
「杉野さん、その首輪、もしかして……」
隷属の首輪?と尋ねようとして言い淀む。
私に尋ねられた杉野さんは、たちまち暗い表情を浮かべて目を伏せると、言い難そうにしながらも静かに答えた。
「……奴隷がつける首輪だって言ってた。主人に逆らったら全身を鋭い痛みが襲うんだ……。言葉で表現出来ないほどの痛みで、それが辛くて抵抗するのを諦めるしかなかった……」
杉野さんの話しを聞いて、私は言葉を詰まらせた。
平穏な日本から、言葉も文化も全く異なる世界に来て奴隷にされたなんて、到底受け入れられないだろう。
その上、この世界の言葉を話せないなんて、私だったら耐えられない。
幸い、「私」として自我が芽生えてすぐにメイスと会えた私は、本当に幸運に恵まれたと思う。
十六歳と言えば高校生くらいだろうか。
青春真っ只中の彼に、この現実は相当きついものがあったはずだ。
「……そっか。よく耐えたね。杉野さん、生きることを諦めないでくれてありがとう。生きていてくれたから私はあなたに会えた。これからどうするかはゆっくりと考えよう。その前に、とっととその首輪を外そう」
そう告げてメイスに視線を向けると、メイスも同意するように頷いて吐き捨てるように言った。
『まったく、人間というものは矮小な者ほど力で押さえつけようとする。ユーリ、解除の方法は覚えているな?お前の魔力量ならこの程度の首輪など造作もない』
「え?私が解除するの?」
確かに、自分の身を守る術として一通りメイスから教わったけど、自分以外に使うのは初めてで躊躇してしまう。
『ユーリ、お前なら出来る。自信を持て』
メイスに言われたら出来そうな気がしてきた。
大きく深呼吸をした後、琥珀色の瞳を見つめ返して告げた。
「わかった。やってみる」
ギュッと拳を握りしめて決意した私は、杉野さんの首元に手を翳すと意識を集中させるために目を閉じた。
その様子から、私の言葉が伝わったのは見てとれた。
しかし、返事が無ければ本当に成功したのか判断がつかない。
私は、もう一度杉野さんに声をかけた。
「杉野さん?私の言葉、理解出来ていますか?」
ハッと我に返った杉野さんが慌てて口を開く。
「あ、はい!理解出来ます!……ちょっと、口の動きと違うのが違和感ありますけど、それでもちゃんと理解出来ます!」
良かった。会話はちゃんと成り立っている。
しかし、杉野さんが言うように、口の動きとそこから発せられる単語に多少違和感を覚える。
だがまぁ、口元をつぶさに見ていなければそんなに気になるレベルではないかな。
「良かった。会話が理解出来るなら安心した。……それにしても、学生服が汚れちゃっているわね。先に綺麗にしてから食堂に行こうか」
あの薄茶色の髪の男性に突き飛ばされたせいで服は土に塗れ、所々ほつれている。
手を杉野さんに向けて翳すと、生活魔法の一つである清浄魔法を使った。
この魔法は本当に便利だ。
イメージさえしっかりとしていればどんな汚れも綺麗に取ってくれて、多少のほつれであれば直して新品同様……とまではいかないにしても、まるでクリーニング店に出したような仕上がりになるのだ。
清浄魔法で体を清潔に保つのも便利でありがたいのだけど、出来ればお風呂に浸かりたい。
「うわぁ……。凄い!新品みたい!全身もすっきりして不快感がなくなった。あの、ユーリさん。これってクリーンですよね?ありがとうございます!」
全身がさっぱりとして気分が良いのか、満面の笑みを浮かべて頭を下げる杉野さん。
ぼさぼさのぼろぼろだった頃でも整った顔立ちなのは知っていたが、身綺麗になった今は更にその整った容姿が際立って見えた。
あのままあの男性の下に居たらと想像して身震いする。
ふと、杉野さんの首元に視線が行く。
さほど太くはないが、鉄のような首輪が目に入って杉野さんに尋ねた。
「杉野さん、その首輪、もしかして……」
隷属の首輪?と尋ねようとして言い淀む。
私に尋ねられた杉野さんは、たちまち暗い表情を浮かべて目を伏せると、言い難そうにしながらも静かに答えた。
「……奴隷がつける首輪だって言ってた。主人に逆らったら全身を鋭い痛みが襲うんだ……。言葉で表現出来ないほどの痛みで、それが辛くて抵抗するのを諦めるしかなかった……」
杉野さんの話しを聞いて、私は言葉を詰まらせた。
平穏な日本から、言葉も文化も全く異なる世界に来て奴隷にされたなんて、到底受け入れられないだろう。
その上、この世界の言葉を話せないなんて、私だったら耐えられない。
幸い、「私」として自我が芽生えてすぐにメイスと会えた私は、本当に幸運に恵まれたと思う。
十六歳と言えば高校生くらいだろうか。
青春真っ只中の彼に、この現実は相当きついものがあったはずだ。
「……そっか。よく耐えたね。杉野さん、生きることを諦めないでくれてありがとう。生きていてくれたから私はあなたに会えた。これからどうするかはゆっくりと考えよう。その前に、とっととその首輪を外そう」
そう告げてメイスに視線を向けると、メイスも同意するように頷いて吐き捨てるように言った。
『まったく、人間というものは矮小な者ほど力で押さえつけようとする。ユーリ、解除の方法は覚えているな?お前の魔力量ならこの程度の首輪など造作もない』
「え?私が解除するの?」
確かに、自分の身を守る術として一通りメイスから教わったけど、自分以外に使うのは初めてで躊躇してしまう。
『ユーリ、お前なら出来る。自信を持て』
メイスに言われたら出来そうな気がしてきた。
大きく深呼吸をした後、琥珀色の瞳を見つめ返して告げた。
「わかった。やってみる」
ギュッと拳を握りしめて決意した私は、杉野さんの首元に手を翳すと意識を集中させるために目を閉じた。
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