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第二章
第73話 鬼教官の復活!?
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「……首輪が、消えた……?」
杉野さんの呟きが聞こえて目を開ける。
首輪ごと消してしまえと念じていたが、どうやら上手くいったようだ。
あんな忌まわしい物、目の前にあるだけで不快な気分になるからね。
「あれ?契約書が消えた?」
亜空間に仕舞っていた契約書が、首輪が消えたのと同時に霧散するように消えていた。
目を白黒させていると、肩に飛び乗ってきたメイスが答える。
『首輪が消えたから契約書も消えたのだろう。これであいつは自由だ。良かったな』
そうか。首輪と契約書は連動していたのか。
一方が消えれば、もう一方も消える仕組みになっていたのだろう。
なんにせよ、これで杉野さんは自由だ。
「杉野さん、首輪を消したら契約書も消えちゃったみたい。これで杉野さんは自由だよ。良かったね」
笑みを浮かべて自由になったと告げた瞬間、杉野さんの瞳から涙が零れ落ちた。
「……自由。僕が自由に?」
茫然とその場に座り込んだままの杉野さんは、隷属の首輪から解放されて感動しているのか、流れる涙に気がつかないようだった。
亜空間からタオルを取り出して杉野さんの目元を拭うと、彼はゆるゆると私を見てハッと我に返る。
「あっ!すみません!自由になれたのが嬉しくてお礼を言うのを忘れていました!ユーリさん、本当に、本当にありがとうございます!」
こちらを見上げていた杉野さんだったが、再び床に額をつけて深々と頭を下げて感謝の言葉を述べる。
私は慌てて杉野さんに頭を上げるように訴えた。
「お礼の言葉はもう十分もらったから頭を上げて。それに、困った時はお互いさまって言うでしょう?だから、ほら、ね?」
動揺したせいで、自分でも何を伝えたかったのか分からなくなっていた。
そのタイミングでブロンが腕から飛び降りて、杉野さんに向かって吠えた。
「わふっ!」
「わっ!……子犬?可愛い」
今気がついたと言わんばかりの杉野さんは肩を大きく揺らした後、愛らしい姿のブロンに頬を緩めた。
誰でもあの状況なら周りを見る余裕なんてなかっただろう。
気持ちは分からなくもないが、こんなに愛らしいブロンに気がつかなかったなんて、余程精神が追い詰められていたということに改めて気づかされた。
尻尾をパタパタと振って杉野さんに駆け寄るブロンに、柔らかく目を細めて頭や背中を撫でると、杉野さんは笑みを浮かべて感嘆の声をあげた。
「うわ……。もっふもふだぁ。人懐っこいな。可愛い」
「ふふ。可愛いでしょ。その子はブロンよ」
ブロンの頭を撫でていた杉野さんの頬がますます緩んでいく。
「……ブロンか。良い名前だね。僕は杉野 秀幸。友達はヒデって呼んでた。あっ、そうだ!ユーリさん。……その、杉野さんって言うのやめてください。さん付けで呼ばれるのは、ちょっと恥ずかしいです……。ヒデって呼んでもらえると嬉しいです」
突然、顔を上げて私に視線を向けた杉野さんが、はにかんだように頬を薄っすらと赤く染めて言ってきたので、私も笑顔で返す。
「ん~。じゃあ、ヒデさん。私のことはユーリって呼んでくれるかな?あと、敬語も要らないから普通に話してもらえる?」
「……え、でも、僕は助けてもらったし、この世界のこと何も知らないから……」
私のお願いにヒデさんは狼狽え始める。
「それは私も一緒だよ。それを言うならメイスに敬語で話さなきゃいけなくなるわ。メイス、私が敬語で話したらどう思う?」
私の問いかけに、メイスは体をぶるっと震わせて答えた。
『尻尾がむず痒くなるからやめろ』
心底嫌そうな声色に、思わず笑いが零れた。
「ふ、ふふふ。メイスも私も堅苦しいのは苦手なの。だから、無理に敬語で話す必要はないわ」
しばらく私とメイスを交互に見ていたヒデさんだったが、ふっ、と笑みを浮かべて応えた。
「わかりま、わかった。でも、名前だけはさん付けで呼ばせてほしい。だって、ユーリさん、この世界で生まれて育ったんだよね?なら、先輩という意味で「ユーリさん」と呼ぶべきだと思うんだ」
そう応えたヒデさんの言葉にメイスが反応した。
『ふむ。此奴は道理をわきまえておるようだな。謙虚なヤツは嫌いではない。よし、この俺が特別に鍛えてやろう』
メイスの言葉の意味を理解した私は、頬を引きつらせて窓の外に視線を向ける。
何も知らないヒデさんには悪いけど、メイスの指導は厳しい。
鬼教官の復活だと内心驚愕したが、ヒデさん自身のためだと考えて私は口を噤んだ。
その後、メイスはヒデさんに向かって宣言した。
『おい、お前。明日からビシバシ鍛えるから覚悟しておけ』
「ね、猫が、喋った……?」
メイスが話せることに最初こそ驚いたヒデさんだったが、「異世界ならそんなものか」と呟くとすぐに受け入れたようだった。
ヒデさん、馴染むのが早くない!?
それと、ヒデさんにはもう一度私が女の子だということと、普段は性別を偽っていることも説明した。
そちらの方もヒデさんはすぐに理解を示してくれたので、人前では「僕」と言っても驚かないようにと念を押しておいた。
杉野さんの呟きが聞こえて目を開ける。
首輪ごと消してしまえと念じていたが、どうやら上手くいったようだ。
あんな忌まわしい物、目の前にあるだけで不快な気分になるからね。
「あれ?契約書が消えた?」
亜空間に仕舞っていた契約書が、首輪が消えたのと同時に霧散するように消えていた。
目を白黒させていると、肩に飛び乗ってきたメイスが答える。
『首輪が消えたから契約書も消えたのだろう。これであいつは自由だ。良かったな』
そうか。首輪と契約書は連動していたのか。
一方が消えれば、もう一方も消える仕組みになっていたのだろう。
なんにせよ、これで杉野さんは自由だ。
「杉野さん、首輪を消したら契約書も消えちゃったみたい。これで杉野さんは自由だよ。良かったね」
笑みを浮かべて自由になったと告げた瞬間、杉野さんの瞳から涙が零れ落ちた。
「……自由。僕が自由に?」
茫然とその場に座り込んだままの杉野さんは、隷属の首輪から解放されて感動しているのか、流れる涙に気がつかないようだった。
亜空間からタオルを取り出して杉野さんの目元を拭うと、彼はゆるゆると私を見てハッと我に返る。
「あっ!すみません!自由になれたのが嬉しくてお礼を言うのを忘れていました!ユーリさん、本当に、本当にありがとうございます!」
こちらを見上げていた杉野さんだったが、再び床に額をつけて深々と頭を下げて感謝の言葉を述べる。
私は慌てて杉野さんに頭を上げるように訴えた。
「お礼の言葉はもう十分もらったから頭を上げて。それに、困った時はお互いさまって言うでしょう?だから、ほら、ね?」
動揺したせいで、自分でも何を伝えたかったのか分からなくなっていた。
そのタイミングでブロンが腕から飛び降りて、杉野さんに向かって吠えた。
「わふっ!」
「わっ!……子犬?可愛い」
今気がついたと言わんばかりの杉野さんは肩を大きく揺らした後、愛らしい姿のブロンに頬を緩めた。
誰でもあの状況なら周りを見る余裕なんてなかっただろう。
気持ちは分からなくもないが、こんなに愛らしいブロンに気がつかなかったなんて、余程精神が追い詰められていたということに改めて気づかされた。
尻尾をパタパタと振って杉野さんに駆け寄るブロンに、柔らかく目を細めて頭や背中を撫でると、杉野さんは笑みを浮かべて感嘆の声をあげた。
「うわ……。もっふもふだぁ。人懐っこいな。可愛い」
「ふふ。可愛いでしょ。その子はブロンよ」
ブロンの頭を撫でていた杉野さんの頬がますます緩んでいく。
「……ブロンか。良い名前だね。僕は杉野 秀幸。友達はヒデって呼んでた。あっ、そうだ!ユーリさん。……その、杉野さんって言うのやめてください。さん付けで呼ばれるのは、ちょっと恥ずかしいです……。ヒデって呼んでもらえると嬉しいです」
突然、顔を上げて私に視線を向けた杉野さんが、はにかんだように頬を薄っすらと赤く染めて言ってきたので、私も笑顔で返す。
「ん~。じゃあ、ヒデさん。私のことはユーリって呼んでくれるかな?あと、敬語も要らないから普通に話してもらえる?」
「……え、でも、僕は助けてもらったし、この世界のこと何も知らないから……」
私のお願いにヒデさんは狼狽え始める。
「それは私も一緒だよ。それを言うならメイスに敬語で話さなきゃいけなくなるわ。メイス、私が敬語で話したらどう思う?」
私の問いかけに、メイスは体をぶるっと震わせて答えた。
『尻尾がむず痒くなるからやめろ』
心底嫌そうな声色に、思わず笑いが零れた。
「ふ、ふふふ。メイスも私も堅苦しいのは苦手なの。だから、無理に敬語で話す必要はないわ」
しばらく私とメイスを交互に見ていたヒデさんだったが、ふっ、と笑みを浮かべて応えた。
「わかりま、わかった。でも、名前だけはさん付けで呼ばせてほしい。だって、ユーリさん、この世界で生まれて育ったんだよね?なら、先輩という意味で「ユーリさん」と呼ぶべきだと思うんだ」
そう応えたヒデさんの言葉にメイスが反応した。
『ふむ。此奴は道理をわきまえておるようだな。謙虚なヤツは嫌いではない。よし、この俺が特別に鍛えてやろう』
メイスの言葉の意味を理解した私は、頬を引きつらせて窓の外に視線を向ける。
何も知らないヒデさんには悪いけど、メイスの指導は厳しい。
鬼教官の復活だと内心驚愕したが、ヒデさん自身のためだと考えて私は口を噤んだ。
その後、メイスはヒデさんに向かって宣言した。
『おい、お前。明日からビシバシ鍛えるから覚悟しておけ』
「ね、猫が、喋った……?」
メイスが話せることに最初こそ驚いたヒデさんだったが、「異世界ならそんなものか」と呟くとすぐに受け入れたようだった。
ヒデさん、馴染むのが早くない!?
それと、ヒデさんにはもう一度私が女の子だということと、普段は性別を偽っていることも説明した。
そちらの方もヒデさんはすぐに理解を示してくれたので、人前では「僕」と言っても驚かないようにと念を押しておいた。
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