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第二章
第80話 経験者としての助言
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翌日から、メイスはヒデさんを連れて実戦を兼ねた魔物の討伐を開始した。
私とブロンは、メイス達と別れて依頼を粛々とこなしていく。
初日の夜こそ顔色を青くさせていたヒデさんだったが、二日、三日と経つうちに魔物の討伐にも慣れたのか、笑顔が増えていった。
「あっ、ユーリさん!僕、ブラッディホーンウルフを倒せたよ!」
四日目の夜、宿に戻って来るなり一足早く部屋で寛いでいた私に向かって、ヒデさんが嬉しそうに報告をしてきた。
ブラッディホーンウルフはブロンの元の姿より大きくはないが、それでも普通の犬より大きい上にとても素早い。
危険度は、単体なら銅級冒険者数名で倒せる程度の強さだが、群れとなると話しは別だ。
ヒデさんの足元から現れたメイスがテーブルに飛び乗ると口を開いた。
『群れを巣立って間もない若い魔物だ。あの程度の魔物くらいで怖じ気づいていては話しにならない。お前はもっと落ち着いて行動しろ』
「メイスさん!それは言わないでよ!僕だって必死だったんだから!」
顔を真っ赤にさせて訴えるヒデさんとメイスの会話から、どういった状況だったのか何となく理解した私は、曖昧な笑みを浮かべてブロンの背中を撫でていた。
メイスは人間じゃないから思ったことをすぐに口に出してしまうが、ヒデさんのような年頃の男の子にあの言い方は無神経過ぎる。
もう少しオブラートに、いや、メイスにそれを求めても無駄なのは分かっているが、せめて黙っておいてあげてほしかった。
未だ、恥ずかしそうに顔を赤らめたままのヒデさんに、私は努めて明るい声で話しかけた。
「ブラッディホーンウルフを一人で倒したの?それは凄いね」
そう私が声を発すると、途端に満面の笑みを浮かべたヒデさんが嬉しそうに応えた。
「初めて見た時は足が竦んじゃったけど、なんとか風魔法で倒せたよ。禍々しい気配っていうものを間近で感じたけど、背中がぞわぞわして気持ち悪かった……。あれは慣れる気がしないなぁ」
話しの途中から眉を顰めたヒデさんは、ぶるっと身震いさせた後、自身の体を抱きしめた。
私も最初の頃、あの感覚が気持ち悪くて慣れる気がしなかった。
でも、いつの頃からか禍々しい気配=魔物という図式が出来上がっていたおかげで、以前ほど不快感はなくなっていた。
きっと、ヒデさんもそのうち慣れるだろう。
私は、自分の経験を踏まえてヒデさんに助言をした。
「確かに、あの感覚は慣れるまで落ち着かなかったなぁ。でも、そのおかげで魔物の気配を察知出来たし、悪意や敵意にも気づけるようになったんだよね。慣れるかどうかは別として、その感覚を覚えておいた方が今後のためにもなると思うよ」
「……なるほど。危機回避のために必要ってことだね。……あの感覚に慣れるしかないのかぁ」
うんざりとした表情をしてため息を吐いたヒデさんは、半ば諦めた様子で遠くを見つめた。
最初の頃は私も同じ気持ちだったけど、案外人って慣れるもんだよ。
だから、大丈夫。
「ふふ。気持ちはわかるよ。でも、この世界は普通に魔物が居るから、少しでも生存率を上げるにはその感覚を覚えておかなきゃ冒険は厳しいよ。大丈夫、そのうち慣れるから」
なんて偉そうなことを言っちゃったけど、こうして冒険を続けていられるのはメイスのおかげだ。
心の中でメイスに感謝をしながら、肩に飛び乗ってきたメイスの頭を撫でているとヒデさんが呟いた。
「……気楽に考えていたけど現実は厳しいんだね。……うん、ユーリさんがそう言うなら慣れるように努力するよ。経験者の話しはありがたいね」
若干ではあるが顔色が良くなったみたい。
安堵の表情を浮かべながら、膝の上で寛いでいるブロンを抱きかかえてヒデさんに渡す。
疲弊した心を癒すには、ブロンのもふもふが最適だと考えてのことだ。
ブロンを渡されたヒデさんは無言で受け取ると、もふもふの毛並みに顔を埋めて匂いを嗅いだ。
「すぅ~。……はぁ。お日様の匂いがする。癒される……」
みるみるうちに、緊張で強張っていたヒデさんの表情が柔らかくなっていく。
ぐうううぅ
緊張が解れたのか、ヒデさんのお腹から大きな音が室内に響き渡る。
真っ赤な顔をしてヒデさんが小さく呟いた。
「あっ……」
「ふふ。それじゃあ、夕食にしようか。私もお腹空いちゃった」
『ごはん!』
私の声に、ブロンが耳をピンと立てて尻尾を勢いよく振る。
少し遅くなったが、食堂で夕食を摂った後、私達は早々に休むことにした。
私とブロンは、メイス達と別れて依頼を粛々とこなしていく。
初日の夜こそ顔色を青くさせていたヒデさんだったが、二日、三日と経つうちに魔物の討伐にも慣れたのか、笑顔が増えていった。
「あっ、ユーリさん!僕、ブラッディホーンウルフを倒せたよ!」
四日目の夜、宿に戻って来るなり一足早く部屋で寛いでいた私に向かって、ヒデさんが嬉しそうに報告をしてきた。
ブラッディホーンウルフはブロンの元の姿より大きくはないが、それでも普通の犬より大きい上にとても素早い。
危険度は、単体なら銅級冒険者数名で倒せる程度の強さだが、群れとなると話しは別だ。
ヒデさんの足元から現れたメイスがテーブルに飛び乗ると口を開いた。
『群れを巣立って間もない若い魔物だ。あの程度の魔物くらいで怖じ気づいていては話しにならない。お前はもっと落ち着いて行動しろ』
「メイスさん!それは言わないでよ!僕だって必死だったんだから!」
顔を真っ赤にさせて訴えるヒデさんとメイスの会話から、どういった状況だったのか何となく理解した私は、曖昧な笑みを浮かべてブロンの背中を撫でていた。
メイスは人間じゃないから思ったことをすぐに口に出してしまうが、ヒデさんのような年頃の男の子にあの言い方は無神経過ぎる。
もう少しオブラートに、いや、メイスにそれを求めても無駄なのは分かっているが、せめて黙っておいてあげてほしかった。
未だ、恥ずかしそうに顔を赤らめたままのヒデさんに、私は努めて明るい声で話しかけた。
「ブラッディホーンウルフを一人で倒したの?それは凄いね」
そう私が声を発すると、途端に満面の笑みを浮かべたヒデさんが嬉しそうに応えた。
「初めて見た時は足が竦んじゃったけど、なんとか風魔法で倒せたよ。禍々しい気配っていうものを間近で感じたけど、背中がぞわぞわして気持ち悪かった……。あれは慣れる気がしないなぁ」
話しの途中から眉を顰めたヒデさんは、ぶるっと身震いさせた後、自身の体を抱きしめた。
私も最初の頃、あの感覚が気持ち悪くて慣れる気がしなかった。
でも、いつの頃からか禍々しい気配=魔物という図式が出来上がっていたおかげで、以前ほど不快感はなくなっていた。
きっと、ヒデさんもそのうち慣れるだろう。
私は、自分の経験を踏まえてヒデさんに助言をした。
「確かに、あの感覚は慣れるまで落ち着かなかったなぁ。でも、そのおかげで魔物の気配を察知出来たし、悪意や敵意にも気づけるようになったんだよね。慣れるかどうかは別として、その感覚を覚えておいた方が今後のためにもなると思うよ」
「……なるほど。危機回避のために必要ってことだね。……あの感覚に慣れるしかないのかぁ」
うんざりとした表情をしてため息を吐いたヒデさんは、半ば諦めた様子で遠くを見つめた。
最初の頃は私も同じ気持ちだったけど、案外人って慣れるもんだよ。
だから、大丈夫。
「ふふ。気持ちはわかるよ。でも、この世界は普通に魔物が居るから、少しでも生存率を上げるにはその感覚を覚えておかなきゃ冒険は厳しいよ。大丈夫、そのうち慣れるから」
なんて偉そうなことを言っちゃったけど、こうして冒険を続けていられるのはメイスのおかげだ。
心の中でメイスに感謝をしながら、肩に飛び乗ってきたメイスの頭を撫でているとヒデさんが呟いた。
「……気楽に考えていたけど現実は厳しいんだね。……うん、ユーリさんがそう言うなら慣れるように努力するよ。経験者の話しはありがたいね」
若干ではあるが顔色が良くなったみたい。
安堵の表情を浮かべながら、膝の上で寛いでいるブロンを抱きかかえてヒデさんに渡す。
疲弊した心を癒すには、ブロンのもふもふが最適だと考えてのことだ。
ブロンを渡されたヒデさんは無言で受け取ると、もふもふの毛並みに顔を埋めて匂いを嗅いだ。
「すぅ~。……はぁ。お日様の匂いがする。癒される……」
みるみるうちに、緊張で強張っていたヒデさんの表情が柔らかくなっていく。
ぐうううぅ
緊張が解れたのか、ヒデさんのお腹から大きな音が室内に響き渡る。
真っ赤な顔をしてヒデさんが小さく呟いた。
「あっ……」
「ふふ。それじゃあ、夕食にしようか。私もお腹空いちゃった」
『ごはん!』
私の声に、ブロンが耳をピンと立てて尻尾を勢いよく振る。
少し遅くなったが、食堂で夕食を摂った後、私達は早々に休むことにした。
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