転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

文字の大きさ
81 / 180
第二章

第81話 爪は健康のバロメーター

しおりを挟む
 サーレーンを発つぎりぎりまでヒデさんの鍛錬は続いた。
 その結果、短期間である程度魔物を倒せるようになったヒデさんは、自信がついたこともあって心なしか顔つきも男らしくなったように見える。

 今朝はいつもより早く起きて身支度を整えると、真新しい武具と防具を身に着けたヒデさんが恥ずかしそうにして私の前に現れた。
 新しく服を新調して武具と防具を買い揃えたヒデさんは、どこから見ても冒険者にしか見えなかった。

「うわぁ!ヒデさん、よく似合っているよ!」

 武具と防具は、ヒデさんが魔物を討伐した報酬で買い揃えたものだ。
 この世界のお金を持たないヒデさんのために買おうとしたのだけど、ヒデさんに固辞されたためだ。
 彼曰く、自分より幼い子にお金を出してもらうのは抵抗があるそうで、武具と防具だけでも自分で稼いで買いたいとのことだった。
 意外にも意志は固く真面目なヒデさんに、せめて服だけは買わせてほしいとお願いしたほどである。
 私の褒め言葉に、ヒデさんは頭をくしゃくしゃと掻いてはにかんだ。

「へへ。そうかな。毎日外で訓練していたから日に焼けちゃった」

 初夏とはいえ、じりじりと照りつける陽射しはかなり強い。
 そのせいで白かった肌は浅黒く焼け、ひょろっとした細い体は若干ではあるが、筋肉がついたように思う。
 たった数日だというのに、ヒデさんの成長ぶりには目を瞠るものがある。
 
「ふふ。日に焼けて男らしくなったんじゃない?成長期だからまだまだ身長も伸びるし筋肉だってついてもっと強くなるね」

「ホント?僕、背が低いのがコンプレックスで毎日牛乳を飲んでいたんだ。でも、なかなか伸びなくて諦めたんだ」

 どうやらヒデさんは背が低いのがコンプレックスらしい。
 心底嬉しそうな表情をして私を見つめる瞳は、期待に満ちている。
 そこで、私は前世で知り得た情報をヒデさんに話して聞かせた。

「牛乳も大事だけど、体をしっかりと動かすことも大事だよ。遺伝もあるだろうけど、しっかりと栄養を摂って運動をすること、これが大事なんだってあるテレビ番組で言っていたのを見たことがあるよ。それに、成人してからも身長が伸びた話しも聞いたし、諦めるのは早いよ」

 成人してから身長が伸びた話しは、友人か同僚から聞いたと思うのだが、そこら辺の記憶は曖昧なままだ。
 しかし、こういう時に欲しい情報がすんなりと出てくるところ実に都合が良すぎるなと思うものの、内心では感謝しまくりである。
 私の話しを聞いていたヒデさんの目が大きく見開かれた。

「……成人してからも身長が伸びたってホント?だったら、もっと運動してもっと食べる!」

 それほどまでに身長が低いことを気にしていたのか、両手の拳を握りしめて鼻息を荒げるヒデさん。
 前世の記憶によると、ヒデさんの身長は平均的な日本人より若干低いくらいで、まだまだ伸び盛りの彼が気にするほどのことではないと思うのだが、確かに小さいと言われ続けた私にもその気持ちが痛いほど分かる。
 私は自分に言い聞かせながら助言をした。

「うん、しっかりと運動して食べないとだよね。でも、ただ食べるだけじゃ駄目だよ。たんぱく質とカルシウムをバランスよく摂らないと」

「……たんぱく質とカルシウムをバランスよく?」

 意味が分からないのか、首を傾けてジッと私を見つめている。
 まあ、若いからそこまで健康管理に関心はないのだろう。
 それに引き換え、前世の私は若くなかったみたいで、健康に関した知識はそこそこ持っているようだ。

「そう。カルシウムは説明しなくても分かると思うけど、骨を丈夫にする効果があるのは知っているよね?」

「うん」

 私の問いかけに即答したヒデさんを見て、簡潔に言葉をかみ砕いて説明をした。

「で、たんぱく質は体に重要な栄養素の一つで、筋肉をつくるために欠かせないものなの。それが不足すると肌が荒れたり疲れやすくなっちゃうの。あっ、そうだ!爪を見たら自分の健康状態が分かるよ。ちょっと見せて」

「え?あ……」

 いきなり手を掴まれて困惑した表情を浮かべるヒデさんに、私はお構いなくヒデさんの爪をまじまじと眺めた。

 ヒデさんの爪の状態は、若いだけあって健康そのものだ。
 私もメイスのおかげで、今では髪は艶々、爪はつるんとした表面をしており健康そのものである。
 健康状態が悪くなかったことに安堵した私は、満面の笑みを浮かべてヒデさんに告げた。

「健康状態は良好だよ。たんぱく質が足りていないと髪がパサついたり爪が波打ってくるから、時々爪を見て健康状態を確認してね。爪は健康のバロメーターだって言うしね」

「……うん?」

 理解が追いついていないヒデさんは首を捻りながらも返事をしたが、その様子から半分も意味を理解していないのは伝わってきた。
 私は苦笑を浮かべながら、今後も時々彼の爪をチェックしようと決めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

底無しポーターは端倪すべからざる

さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。 ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。 攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。 そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。 ※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。 ※ごくまれに残酷描写を含みます。 ※【小説家になろう】様にも掲載しています。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。

ソラリアル
ファンタジー
※本作は改題・改稿をして場所を移動しました。 現在は 『従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々』 として連載中です。2026.1.31 どうして、魔獣と呼ばれる存在は悪者扱いされてしまうんだろう。 あんなに癒しをくれる、優しい子たちなのに。 そんな思いを抱いていた俺は、ある日突然、命を落とした――はずだった。 だけど、目を開けるとそこには女神さまがいて、俺は転生を勧められる。 そして与えられた力は、【嫌われ者とされる子たちを助けられる力】。 異世界で目覚めた俺は、頼りになる魔獣たちに囲まれて穏やかな暮らしを始めた。 畑を耕し、一緒にごはんを食べて、笑い合う日々。 ……なのに、人々の噂はこうだ。 「森に魔王がいる」 「強大な魔物を従えている」 「街を襲う準備をしている」 ――なんでそうなるの? 俺はただ、みんなと平和に暮らしたいだけなのに。 これは、嫌われ者と呼ばれるもふもふな魔獣たちと過ごす、 のんびり?ドタバタ?異世界スローライフの物語。 ■小説家になろう、カクヨムでも同時連載中です■

処理中です...