転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第二章

第82話 新たな仲間と始まる冒険

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『ほぉ……。爪で健康状態を判断するのか。ユーリは時々おかしなことを言うが、その知識はやはり前世の記憶からか?』

 それまで肩で大人しくしていたメイスが、話しに興味を持った様子で会話に加わってきた。

「うん、そう。どうやら健康に関する知識があったみたい。でも、興味の無い分野は無理みたい」

 私の知識は興味の有無でかなり偏っているようだ。
 しかし、知識というものに無駄なものは無いと私は思っている。
 だって、現に爪の状態で健康かそうでないか見ただけで判断出来るなんてありがたくない?
 まぁ、医者じゃないから栄養状態を確認出来ても、病気に罹っているとか何の病気かまでは特定出来ないのだけど。

『ふむ。知識に偏りがあるということか。しかし、ユーリの考え方が斜め上なのは、やはりこことは異なる世界で生きた記憶が関わっているからだろうな。とても興味深い』

 ん?メイスさん?
 斜め上は言い過ぎじゃない?
 あと、悪戯を思いついたような弾んだ声音で言われると、背筋がぞわぞわするからやめてもらえるかな。

「もう、メイスったら斜め上は言い過ぎ。私は普通にしているだけなんだから」

 そう反論してみたが、メイスはどこ吹く風といった様子だ。
 心外だと言わんばかりに唇を尖らせていると、ヒデさんが神妙な面持ちで口を開いた。

「ユーリさん。これは僕の憶測だけど、この世界では知識を得る方法が少ないんじゃないかな。元の世界では本だけでなく、PCやスマホにテレビといった情報を発信するツールが多かったから、僕達は何の苦労をすることもなく情報を手に入れることが出来た。だけど、この世界には情報を手に入れる手段が限られている。だから考え方や物の捉え方が違うのも仕方ないことだと思うんだ」

 それはそうだろうね。
 私は分かっているよと言う代わりに頷き返すと、ヒデさんは話しを続けた。

「つまり、僕が言いたいのは、知識は財産であり時には強力な武器にもなるってこと。メイスさんが言った斜め上ってのも、裏を返せば褒め言葉だと思うんだ。ユーリさんは言葉通りに受け取ったみたいだけど、メイスさんなりに褒めているんだよ。でしょ?メイスさん」

『ああ。ヒデは俺の言いたいことをよく分かっているな。付き合いが長いユーリに理解してもらえなかったのは残念だ』

 全然残念では無さそうな声色で話すメイスに、私は居たたまれない気持ちになる。
 思い返してみると、メイスは俺様口調なところはあるが暴言を吐かれたことはなかった。
 数か月とは言え、たった数日メイスと過ごしたヒデさんの方が理解しているのは何だか悔しい。
 言葉を返せずに黙っていると、ヒデさんが明るい声で語りかけてきた。

「とにかく、ユーリさんのその知識は凄く大事だってこと。僕の知識はこの世界じゃ役に立ちそうにないからね」

 そんなことはないと思うのだが、それを口に出してしまったら水を差すようで気が引けてしまう。
 曖昧に笑みを浮かべていたら、足元からブロンが訴えてきた。

『ぼく、おなか空いた~。おねえちゃん、はやくごはんにしようよ~』

 タイミング良過ぎるブロンの一言で、私とヒデさんはハッと我に返り顔を見合わせる。
 そうだった。
 今朝はサーレーンを発つ日で早起きしたというのに、ここでのんびりとする時間なんてなかった。

「そうだね。いつまでもここでのんびりと喋っているより朝ご飯食べて出発しなきゃ」

 私が笑顔で言うと、ヒデさんもつられて笑みを浮かべた。

「うん!今日はサーレーンを出発して国境に向かうんだよね。早く朝ご飯にしよう」

『ごは~ん!』

 ブロンはご飯が食べられると聞いて、尻尾をブンブンと振っている。
 早起きしたというのに待たせてしまったことを反省しながら、私を見上げるブロンの頭を撫でた。

「ふふふ。お腹空いちゃったよね。待たせてごめんね。さ、支度が済んだら行こうか」

 皆と視線を合わせて告げると、すぐに荷物をまとめた。


 ヒデさんは冒険が楽しみらしく、鼻歌交じりに亜空間収納魔法を付与されたバッグに荷物を収納している。
 微笑ましいその光景に、旅を始めたばかりの自分を重ねて、新たな仲間との冒険に笑みを浮かべた。
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