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第二章
第106話 解体場へ
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ヒデさんの手伝いもあり、おにぎりは予想より早く握り終えることが出来た。
「ヒデさん、手伝ってくれてありがとう。それにしても、おにぎりの握り方が上手でびっくりしちゃった」
十六歳の男の子が慣れた様子でおにぎりを握る姿が新鮮で、つい心の声が漏れてしまった。
しかし、その言葉を聞いたヒデさんはキョトンとした表情を浮かべた後、「ああ」と何かを思い出したように呟くと口を開いた。
「両親が共働きだったから、ばあちゃんに握り方を教えてもらったんだ。でも、僕が出来るのはおにぎりと簡単な料理くらいだけどね」
「それだけ出来れば十分だよ。おかげで早く済んで助かったよ。ありがとう」
私がお礼の言葉を口にすると、ヒデさんははにかみながら答えた。
「……へへ。ユーリさんの役に立てたのなら良かった」
いやホント、あれだけ大量に炊いた米を握るのって大変なんだよね。
だから、ヒデさんの申し出はありがたかった。
これだけ大量に作り置きをしておけば、カミール領まで食糧に困ることはないだろう。
「さて、予定より早く終わったし、ちょっと早いけど解体場に向かおうか」
今日は解体場のおやじさんと約束した期日だ。
大量の魔物の解体に時間がかかるだろうと夕方頃に向かう予定にしていたのだが、少しくらい早まっても大丈夫だろう。
空を見上げて呟いた私は、草原を駆け回るブロンに声をかけた。
「ブローン!王都に戻るよ―!」
『は―い!』
体を動かしてすっきりしたのか、すぐに返事が返ってきた。
駆け寄って来たブロンの頭を撫でながら、体調に変化がないか確かめる。
ころころの丸い体は肉付きが良く、ふわふわの白い毛並みは以前より艶々としている。
犬と狼にどの程度の違いがあるのか分からないが、鼻は適度に濡れているから健康状態は悪くないだろう。
満足気に頷いて立ち上がると、皆に視線を向けた。
「忘れ物は無い?そろそろ解体場に向かうけどいいかな?」
私の呼びかけに皆が頷き返したので、その足で解体場へ向かうことにした。
解体場へ真っ直ぐ向かい扉を開けて中を覗く。
数名の作業員の中に特徴的な髪型を見つけると、足早に近づいて声をかけた。
「こんにちは。作業中すみません。今、大丈夫ですか?」
他の作業員に指示を出していたアフロヘアの男性が、声に気づいて振り返る。
「おぉ、坊主か。解体なら済んだぞ。待たせたな」
「いえ。こちらこそ大量の魔物の解体をお願いしてすみませんでした」
私がそう答えると、アフロヘアの男性が豪快に笑いながら近づいてきた。
「がはははっ!それが俺の仕事だ。坊主が気にするこたぁねぇ。それに珍しい魔物の解体が出来て久しぶりに楽しかったぜ」
その言葉に噓は無いようだ。
目尻に皺を作って豪快に笑う男性を見て、私は安堵する。
「そうですか。そう言ってもらえると助かります」
「……坊主は年のわりにゃあ、受け答えがしっかりとしているな。ま、そんなことよりこっちに来い」
アフロヘアの男性に促されてついて行くと、大量の魔物肉と魔石や牙、毛皮に解体して置かれたテーブルに案内された。
男性は、テーブルを指差して尋ねてきた。
「あっちとこっちのテーブルが坊主の従魔が狩ってきた魔物の肉だ。で、その隣が魔物から取れた素材になる。買い取りは全部か?それともいくらか手元に残しておくか?」
男性に尋ねられた私は、テーブルに置かれた大量の魔物肉と素材を眺めて考える。
はっきり言ってメイスのおかげで食糧には困っていない。
だけど、グローブフォレスト商会で手に入れた調味料があるから使ってみたいとも考えていた。
そこで、私はヒデさんにどうしたいか尋ねた。
「ねぇ、ヒデさん。魔物肉をいくつか手元に残しておこうと思うんだけど、それ以外に何か欲しい物はある?」
ヒデさんは腕を組んで考えた後、静かに話し始めた。
「う~ん……。魔石で試したいことがあるから大中小それぞれ二つずつ欲しいかな。他はユーリさんに任せるよ」
ヒデさんは魔石で何かをしたいのか。
うんうんと頷いていると、私達の会話を聞いていた男性が会話に加わってきた。
「おっし。魔物肉と魔石だな。ちょっと待ってな」
アフロヘアの男性がそう告げて、魔物肉と魔石が置いてあるテーブルに向かって行った。
男性が選んで持って来てくれた魔物肉と魔石は状態が良く、私達は残りを買い取ってもらった。
大量の魔物を解体してもらったにもかかわらず、その報酬の多さに私もヒデさんも言葉を失ってしまった。
次からは小分けにして買い取ってもらおうと決めたのは言うまでもない。
「ヒデさん、手伝ってくれてありがとう。それにしても、おにぎりの握り方が上手でびっくりしちゃった」
十六歳の男の子が慣れた様子でおにぎりを握る姿が新鮮で、つい心の声が漏れてしまった。
しかし、その言葉を聞いたヒデさんはキョトンとした表情を浮かべた後、「ああ」と何かを思い出したように呟くと口を開いた。
「両親が共働きだったから、ばあちゃんに握り方を教えてもらったんだ。でも、僕が出来るのはおにぎりと簡単な料理くらいだけどね」
「それだけ出来れば十分だよ。おかげで早く済んで助かったよ。ありがとう」
私がお礼の言葉を口にすると、ヒデさんははにかみながら答えた。
「……へへ。ユーリさんの役に立てたのなら良かった」
いやホント、あれだけ大量に炊いた米を握るのって大変なんだよね。
だから、ヒデさんの申し出はありがたかった。
これだけ大量に作り置きをしておけば、カミール領まで食糧に困ることはないだろう。
「さて、予定より早く終わったし、ちょっと早いけど解体場に向かおうか」
今日は解体場のおやじさんと約束した期日だ。
大量の魔物の解体に時間がかかるだろうと夕方頃に向かう予定にしていたのだが、少しくらい早まっても大丈夫だろう。
空を見上げて呟いた私は、草原を駆け回るブロンに声をかけた。
「ブローン!王都に戻るよ―!」
『は―い!』
体を動かしてすっきりしたのか、すぐに返事が返ってきた。
駆け寄って来たブロンの頭を撫でながら、体調に変化がないか確かめる。
ころころの丸い体は肉付きが良く、ふわふわの白い毛並みは以前より艶々としている。
犬と狼にどの程度の違いがあるのか分からないが、鼻は適度に濡れているから健康状態は悪くないだろう。
満足気に頷いて立ち上がると、皆に視線を向けた。
「忘れ物は無い?そろそろ解体場に向かうけどいいかな?」
私の呼びかけに皆が頷き返したので、その足で解体場へ向かうことにした。
解体場へ真っ直ぐ向かい扉を開けて中を覗く。
数名の作業員の中に特徴的な髪型を見つけると、足早に近づいて声をかけた。
「こんにちは。作業中すみません。今、大丈夫ですか?」
他の作業員に指示を出していたアフロヘアの男性が、声に気づいて振り返る。
「おぉ、坊主か。解体なら済んだぞ。待たせたな」
「いえ。こちらこそ大量の魔物の解体をお願いしてすみませんでした」
私がそう答えると、アフロヘアの男性が豪快に笑いながら近づいてきた。
「がはははっ!それが俺の仕事だ。坊主が気にするこたぁねぇ。それに珍しい魔物の解体が出来て久しぶりに楽しかったぜ」
その言葉に噓は無いようだ。
目尻に皺を作って豪快に笑う男性を見て、私は安堵する。
「そうですか。そう言ってもらえると助かります」
「……坊主は年のわりにゃあ、受け答えがしっかりとしているな。ま、そんなことよりこっちに来い」
アフロヘアの男性に促されてついて行くと、大量の魔物肉と魔石や牙、毛皮に解体して置かれたテーブルに案内された。
男性は、テーブルを指差して尋ねてきた。
「あっちとこっちのテーブルが坊主の従魔が狩ってきた魔物の肉だ。で、その隣が魔物から取れた素材になる。買い取りは全部か?それともいくらか手元に残しておくか?」
男性に尋ねられた私は、テーブルに置かれた大量の魔物肉と素材を眺めて考える。
はっきり言ってメイスのおかげで食糧には困っていない。
だけど、グローブフォレスト商会で手に入れた調味料があるから使ってみたいとも考えていた。
そこで、私はヒデさんにどうしたいか尋ねた。
「ねぇ、ヒデさん。魔物肉をいくつか手元に残しておこうと思うんだけど、それ以外に何か欲しい物はある?」
ヒデさんは腕を組んで考えた後、静かに話し始めた。
「う~ん……。魔石で試したいことがあるから大中小それぞれ二つずつ欲しいかな。他はユーリさんに任せるよ」
ヒデさんは魔石で何かをしたいのか。
うんうんと頷いていると、私達の会話を聞いていた男性が会話に加わってきた。
「おっし。魔物肉と魔石だな。ちょっと待ってな」
アフロヘアの男性がそう告げて、魔物肉と魔石が置いてあるテーブルに向かって行った。
男性が選んで持って来てくれた魔物肉と魔石は状態が良く、私達は残りを買い取ってもらった。
大量の魔物を解体してもらったにもかかわらず、その報酬の多さに私もヒデさんも言葉を失ってしまった。
次からは小分けにして買い取ってもらおうと決めたのは言うまでもない。
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