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第二章
第107話 ヒデさんの不安
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報酬を受け取り解体場を後にした私達は、宿に向けて大通りを歩いていた。
「それにしても、あの報酬額には驚いちゃった。ブロンって強いんだね」
感心した様子のヒデさんが、腕に抱きかかえられたブロンに尊敬の眼差しを向けて語りかける。
『ぼく、つよいよ』
ふんす、と鼻息荒く答える今のブロンの姿は、どこから見ても愛らしい子犬にしか見えない。
しかし、その正体は大きなフェンリルである。
愛らしい姿とのギャップに私は内心笑いを堪えていた。
明日でこの王都ともお別れだと思うと、急に寂しい気持ちになる。
建物自体はエストロッジ国とそう大差はないはずなのに、こうも居心地が良いと感じてしまうのは、きっとここの空気が私の気性と合っているからかもしれない。
名残惜しいが、私の最終目的地はカミール領だ。
カミール領に着いた後の計画は何も立てていないが、まだ十歳の私が将来について考えるのは早い気がする。
しばらくはカミール領で暮らしながら、将来についてゆっくりと考えようと思う。
幸いにも数年はニートでも困らないくらい資金に余裕がある。
部屋か借家を借りて出来るだけ節約をすれば問題ないだろう。
ヒデさんにも道中で、この先どうしたいのか聞いておこう。
そんなことをぼんやりと考えながら歩いていたら、いつの間にか宿にたどり着いていた。
宿で少し早めの夕食を摂っていると、ヒデさんが話しを切り出した。
「ねぇ、ユーリさん。明日王都を発つんだよね?乗り合い馬車の時間を確認しなくていいの?」
その質問に答えたのは、偶々近くを通りかかった女将さんだった。
「あら、お客さん。どちらまで行く予定かしら?」
「カミール領です」
その問いかけに私が答えると、女将さんは困ったような顔をして口を開いた。
「カミール領……。それはまた遠いところまで行くのね。ここから乗り合い馬車は出ているのだけど、カミール領行きは三日に一度しか出ていないのよ。しかも、今日がその日じゃなかったかしら?次の出発は二日後になるわね」
「えっ!?二日後!?」
女将さんの言葉に慌てたのはヒデさんだった。
すぐさま私に顔を向けたヒデさんが縋るような眼差しを向けてきたが、私は徒歩での旅に慣れていたのでその眼差しの意味に気がつかなかった。
それからコップを手に取り水を流し込んだ後、ポツリと呟いた。
「そうですか。それなら歩くしかないですね」
私の返事を聞いた女将さんはコップに水を継ぎ足すと、次のテーブルに歩いて行った。
すると、その言葉を聞いたヒデさんが、信じられないとばかりに目を大きく見開いた。
「……歩くの?……マジ?」
マジも何も、わざわざ乗り合い馬車に乗るために二日もここで待つのは時間が惜しいんだけど。
それに、ずっと乗り合い馬車に乗って移動してきたせいか、体が鈍っている気がする。
何かおかしなことを言ったのかと首を傾げていたら、不安そうな表情をしたヒデさんが恐る恐るといった様子で話し始めた。
「……長時間歩くのって初めてで……。不安しかないんだけど……」
なるほど。徒歩での旅に不安があるのね。
でも、金銭的に余裕があれば乗り合い馬車での移動でも構わないけど、これから先のことを考えるなら徒歩での旅にも慣れておくべきだと私は思うのだけど。
どう答えようかと頭を悩ませていると、メイスの大きなため息が聞こえた。
『は―……。ヒデ、お前は冒険者だろう?冒険者とはその名の通り冒険をする者を指す。いつも馬車で移動出来るわけではないし、依頼で馬車でも行けないような場所に赴かなければならないこともある。体を鍛えておくことは冒険者にとって当たり前のことだ。なぜなら冒険者は常に死と隣り合わせの職業だからな。死にたくなければ体を鍛えろ。そして強くなれ。歩くことも冒険者にとって重要なことだ。分かったな?』
メイスの説明を受けてヒデさんは顔を俯かせた。
返事を返さないヒデさんに向かって、メイスの地を這うような低い声が静かに響いた。
『分かったのか?』
久しぶりに聞いた恐ろしいほどの低い声に、ヒデさんは弾かれたように顔を上げて頷く。
「……はい。頭では理解してる。……だけど、体力に自信がなくて……」
自信なさそうに呟いたヒデさんに、私は笑顔で語る。
「大丈夫。私だって自信なかったよ。でも、結局は慣れなんだよね。ヒデさんに会うまでずっと徒歩で旅してきた私が出来たんだから、きっとヒデさんもそのうち慣れるよ」
その言葉に、ヒデさんは驚愕の眼差しを向けて固まってしまった。
あれ?何かおかしなこと言った?
首を捻っていると、ヒデさんの口元が段々と緩んできた。
「ふっ。あはは!そっか、ユーリさん徒歩で旅してきたんだ。凄いね。だったら僕も頑張らないとね!」
何か釈然としないが、前向きになれたのなら大丈夫だろう。
その後、しっかりと夕食を摂った私達は、明日に備えて早めの就寝をとることにした。
「それにしても、あの報酬額には驚いちゃった。ブロンって強いんだね」
感心した様子のヒデさんが、腕に抱きかかえられたブロンに尊敬の眼差しを向けて語りかける。
『ぼく、つよいよ』
ふんす、と鼻息荒く答える今のブロンの姿は、どこから見ても愛らしい子犬にしか見えない。
しかし、その正体は大きなフェンリルである。
愛らしい姿とのギャップに私は内心笑いを堪えていた。
明日でこの王都ともお別れだと思うと、急に寂しい気持ちになる。
建物自体はエストロッジ国とそう大差はないはずなのに、こうも居心地が良いと感じてしまうのは、きっとここの空気が私の気性と合っているからかもしれない。
名残惜しいが、私の最終目的地はカミール領だ。
カミール領に着いた後の計画は何も立てていないが、まだ十歳の私が将来について考えるのは早い気がする。
しばらくはカミール領で暮らしながら、将来についてゆっくりと考えようと思う。
幸いにも数年はニートでも困らないくらい資金に余裕がある。
部屋か借家を借りて出来るだけ節約をすれば問題ないだろう。
ヒデさんにも道中で、この先どうしたいのか聞いておこう。
そんなことをぼんやりと考えながら歩いていたら、いつの間にか宿にたどり着いていた。
宿で少し早めの夕食を摂っていると、ヒデさんが話しを切り出した。
「ねぇ、ユーリさん。明日王都を発つんだよね?乗り合い馬車の時間を確認しなくていいの?」
その質問に答えたのは、偶々近くを通りかかった女将さんだった。
「あら、お客さん。どちらまで行く予定かしら?」
「カミール領です」
その問いかけに私が答えると、女将さんは困ったような顔をして口を開いた。
「カミール領……。それはまた遠いところまで行くのね。ここから乗り合い馬車は出ているのだけど、カミール領行きは三日に一度しか出ていないのよ。しかも、今日がその日じゃなかったかしら?次の出発は二日後になるわね」
「えっ!?二日後!?」
女将さんの言葉に慌てたのはヒデさんだった。
すぐさま私に顔を向けたヒデさんが縋るような眼差しを向けてきたが、私は徒歩での旅に慣れていたのでその眼差しの意味に気がつかなかった。
それからコップを手に取り水を流し込んだ後、ポツリと呟いた。
「そうですか。それなら歩くしかないですね」
私の返事を聞いた女将さんはコップに水を継ぎ足すと、次のテーブルに歩いて行った。
すると、その言葉を聞いたヒデさんが、信じられないとばかりに目を大きく見開いた。
「……歩くの?……マジ?」
マジも何も、わざわざ乗り合い馬車に乗るために二日もここで待つのは時間が惜しいんだけど。
それに、ずっと乗り合い馬車に乗って移動してきたせいか、体が鈍っている気がする。
何かおかしなことを言ったのかと首を傾げていたら、不安そうな表情をしたヒデさんが恐る恐るといった様子で話し始めた。
「……長時間歩くのって初めてで……。不安しかないんだけど……」
なるほど。徒歩での旅に不安があるのね。
でも、金銭的に余裕があれば乗り合い馬車での移動でも構わないけど、これから先のことを考えるなら徒歩での旅にも慣れておくべきだと私は思うのだけど。
どう答えようかと頭を悩ませていると、メイスの大きなため息が聞こえた。
『は―……。ヒデ、お前は冒険者だろう?冒険者とはその名の通り冒険をする者を指す。いつも馬車で移動出来るわけではないし、依頼で馬車でも行けないような場所に赴かなければならないこともある。体を鍛えておくことは冒険者にとって当たり前のことだ。なぜなら冒険者は常に死と隣り合わせの職業だからな。死にたくなければ体を鍛えろ。そして強くなれ。歩くことも冒険者にとって重要なことだ。分かったな?』
メイスの説明を受けてヒデさんは顔を俯かせた。
返事を返さないヒデさんに向かって、メイスの地を這うような低い声が静かに響いた。
『分かったのか?』
久しぶりに聞いた恐ろしいほどの低い声に、ヒデさんは弾かれたように顔を上げて頷く。
「……はい。頭では理解してる。……だけど、体力に自信がなくて……」
自信なさそうに呟いたヒデさんに、私は笑顔で語る。
「大丈夫。私だって自信なかったよ。でも、結局は慣れなんだよね。ヒデさんに会うまでずっと徒歩で旅してきた私が出来たんだから、きっとヒデさんもそのうち慣れるよ」
その言葉に、ヒデさんは驚愕の眼差しを向けて固まってしまった。
あれ?何かおかしなこと言った?
首を捻っていると、ヒデさんの口元が段々と緩んできた。
「ふっ。あはは!そっか、ユーリさん徒歩で旅してきたんだ。凄いね。だったら僕も頑張らないとね!」
何か釈然としないが、前向きになれたのなら大丈夫だろう。
その後、しっかりと夕食を摂った私達は、明日に備えて早めの就寝をとることにした。
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