転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第二章

第108話 王都出発

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 五日ぶりに旅が再開するとあって早々に就寝した私は、メイスに起こされる前に目を覚ました。
 そんな自分を心の中で褒めながら静かに身支度を整えていく。
 まだ薄暗い明かりの中、手櫛で髪を整えながら窓の外を眺める。
 早朝にもかかわらず、数件の家の窓に明かりが灯っているのを見つけた私は、この世界も元の世界の暮らしと変わらないのだなと感心した。

『お前がもう起きていたとは珍しい』

 外を眺めていたら、背後からメイスの声が聞こえて振り返る。
 珍しいって、いくら何でも失礼じゃない?
 あまりの言い草に口を尖らせて反論する。

「いつもメイスに起こされてばかりいるわけにはいかないからね。たまには自力で起きることだってあるよ」

 ん?自分が発した言葉を耳にして、メイスの言い分が正しいことに気がついてしまった。
 ……確かに珍しいかも。
 ドヤって反論したのに恥ずかしい。
 チラッと見えたメイスの眼差しが半眼になっていたのは、きっと私の思い過ごしだろう。
 私は軽く咳払いをしてメイスに向き合うと話しを続けた。

「んんっ。準備出来たし、ヒデさんを起こしに行こう」

 そう告げて荷物をまとめると、静寂に包まれた薄暗い廊下を慎重に歩いてヒデさんが休んでいる部屋に向かった。
 部屋の前に立ち扉を叩こうと手を伸ばした瞬間、不意に扉が開かれた。

「おぅ!……おはよう。びっくりしたぁ」

 叫び声が出そうになり咄嗟に手で口を覆った後、声を潜めて挨拶を交わす。
 そんな私を見て、笑いを堪えながらヒデさんが挨拶を返した。

「おはよう。ぷ、ふふ。ここじゃなんだから入って」

 朝から笑いを提供出来て良かったよ。
 ヒデさんに部屋に入るように促されて、足音を忍ばせて部屋に入る。
 部屋の扉を閉めた瞬間、ブロンが駆け寄って来た。

『おねえちゃん、おはよ―!』

「ブロン、おはよう」

 足元を駆け回るブロンは朝からご機嫌な様子だ。
 しかし、今は早朝で周りはまだ休んでいる時間帯である。
 私はブロンを捕まえて抱きかかえると、頭を優しく撫でながら諭した。

「朝から元気なのは良いことだけど、周りはまだ寝ているから静かにしてね」

『うん、わかった―』

 私が声を潜めて話しかけたことに気がついたブロンは、すぐに同じように声を潜めて返事を返した。
 純粋で無邪気ではあるけれど、しっかりと状況を説明すれば理解を示してくれるブロンは実に賢いいい子だ。
 私はブロンの頭を優しく撫でた後、床に下ろして皆に告げた。

「食堂が開いていないから、ここで簡単に朝食を摂ろう」

 その言葉に頷いたヒデさんが椅子に腰を下ろす。
 私は、亜空間からおにぎりと味噌汁を取り出してテーブルに置くと、再び口を開いた。

「温かいうちに召し上がれ。いただきます」

「いただきます」

『いただきま―す!』

『うむ。いただこう』

 口々に食前の挨拶を口にした後、おにぎりを頬張る皆。
 出来立てのおにぎりと味噌汁は、渇いた喉と胃袋を十分に満たしてくれた。
 特にメイスとブロンの食欲は留まることを知らないのか、見ているこちらがお腹いっぱいになりそうなくらいの量を平らげていた。
 ブロンは、本来は大きな体格をしているので理解出来るのだが、元々大きくないメイスの体のどこにあれだけの量のおにぎりが収まるのか不思議でならない。
 向かいでおにぎりを食べているヒデさんの頬が心なしか引きつって見えたのは、見間違いではないだろう。

『ぷは―。おなかいっぱい』

 ぱんぱんに膨れたお腹を横にして、ごろんと寝転がるブロン。
 まるでおっさんみたいな仕草に、思わず苦笑を浮かべてしまう。
 メイスも満足したのか、体を横たえて毛づくろいに夢中だ。
 そうして食後の休憩を挟んでいるうちに空が白み始めてきた。

「ねぇ、空が明るくなってきたんだけど、そろそろ出発しない?」

 私の呼びかけにメイスが窓の外に視線を移して立ち上がる。

『……そうだな。つい、忘れていた。皆、準備は整ったか?』

 鬼教官でしっかり者のメイスでも忘れることってあるんだ。
 ちょっと意外だったことに内心驚きはしたが、いくら長命で魔法に長けているといっても完璧ではないことに安心したのは内緒にしておいた。



 それから部屋の鍵を返却した私達は、早朝の人通りの少ない大通りを歩いて王都を後にした。
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