124 / 180
第三章
第124話 * キリアンさんは心配性
しおりを挟むというわけで、翌日からキリアンさんと行動を共にすることになったわけなのだが……。
『あっ!まものはっけ―ん!おねえちゃん、ぼくにまかせて!』
声を弾ませたブロンが魔物に近づくと爪を斜めに振り下ろした。
魔力を帯びた攻撃を受けた魔物は断末魔をあげる暇もないまま、胴体を真っ二つにされて静かに地面に横たわる。
今は愛らしい子犬の姿とはいえ、その正体はフェンリル。
そこいらの魔物では到底太刀打ちできないのか、魔物の方が恐れをなして逃げ出して行く。
これでは私どころかヒデさんの出番すらなさそうだ。
ブロンのおかげで楽させてもらえるのはありがたいけど、魔物が逃げ出してしまうせいで今ではただの散歩になっていた。
隣では口をポカンと開けてキリアンさんが茫然と立ち尽くしている。
キリアンさんが同行しているため、私は斜め掛けのバッグに真っ二つにされた魔物を収納するふりをして亜空間に仕舞う。
そこでハッと我に返ったキリアンさんがようやく口を開いた。
「あんなに強いとは驚きだ。普段は魔力を抑えているだけなのか、あそこまで魔力を制御出来る魔物を見たことがない。すっかり見かけに騙されてしまった」
ブロンの凄さに感服した様子のキリアンさんだが、キリアンさんだって一目でそこまで見抜けるのだから、やはり金級冒険者というのは伊達ではないということだろう。
だけど、ブロンを褒められて私も悪い気はしない。
調子に乗った私は、胸を張って鼻息荒く応えた。
「ブロンはとっても愛らしいですけど、とっても強いんです。それに誰よりも魔物の気配には敏感ですし、もふもふの毛並みは最高の癒しなんです」
腰に手をあててふふんと鼻を鳴らした私を見たキリアンさんは、お腹を手で押さえて口を手で覆うとふるふると肩を震わせた。
「ぷっ!あははは!そうか、ブロンは愛らしいか!そうだな。ブロンは愛らしい上に強い!ユーリ達が無事にこの街に来れた理由が分かった気がするよ」
何が可笑しかったのか分からないが、とにかく保護者が居なくても問題ないことは伝わったようで良かった。
……それにしても笑い過ぎじゃない?
私はムッと口を尖らせて呟いた。
「……ブロンは強いけど私だって魔物を狩れるのに」
「ん?ユーリ、何か言ったか?」
私の呟きは耳に届いていなかったようで安堵したが、ここは私も戦えることをアピールしておいた方が良いだろう。
そうでなければ、いつまでたってもキリアンさんが私達から離れそうにないと感じたのだ。
今回、キリアンさんが私に同行することをヒデさんに伝えたところ、悪い人には見えないけど何があるか分からないからと一緒に来てくれた。
メイスが居るからそんな心配をしていなかったけど、ヒデさんとブロンが一緒なら心強い。
確かにここの魔物は今までの魔物とは違い、大きさも強さも桁違いに強いのだろう。
現に、ブロンが倒した魔物は私が倒した魔物と比べても優に二回りは大きい上に、鑑定スキルでは下位の魔物だと表示されていた。
これではキリアンさんが心配するのも仕方がないのかもしれない。
それでも私はメイスの指導の下、剣と魔法の腕を磨いてきた。
魔物と対峙した頃は恐ろしくて足が竦んだこともあった。
だけど、冒険者になった以上避けて通れないことは重々承知の上で旅を続けてきた。
キリアンさんの心配を取り除くため、そして自分のために今までの努力の成果を認めてもらおうと決意した。
「ブロン。今度は私が魔物を倒すから下がってて」
ブロンに下がるように言うと、目を閉じて意識を集中させる。
気配察知のスキルを発動させて近くに魔物が居ないか探っていく。
ここからそう遠くない場所に魔物の気配がして目を開けると、後ろを振り返って告げた。
「向こうの茂みに魔物の気配がするから倒してくるね。皆はここで待ってて」
キリアンさんは手を伸ばして何か言おうとしていたようだけど、私はそれを無視してメイスをブロンの背中に乗せると、隠密のスキルを発動させて茂みに向かって走っていった。
71
あなたにおすすめの小説
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
底無しポーターは端倪すべからざる
さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。
ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。
攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。
そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。
※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。
※ごくまれに残酷描写を含みます。
※【小説家になろう】様にも掲載しています。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。
ソラリアル
ファンタジー
※本作は改題・改稿をして場所を移動しました。
現在は
『従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々』
として連載中です。2026.1.31
どうして、魔獣と呼ばれる存在は悪者扱いされてしまうんだろう。
あんなに癒しをくれる、優しい子たちなのに。
そんな思いを抱いていた俺は、ある日突然、命を落とした――はずだった。
だけど、目を開けるとそこには女神さまがいて、俺は転生を勧められる。
そして与えられた力は、【嫌われ者とされる子たちを助けられる力】。
異世界で目覚めた俺は、頼りになる魔獣たちに囲まれて穏やかな暮らしを始めた。
畑を耕し、一緒にごはんを食べて、笑い合う日々。
……なのに、人々の噂はこうだ。
「森に魔王がいる」
「強大な魔物を従えている」
「街を襲う準備をしている」
――なんでそうなるの?
俺はただ、みんなと平和に暮らしたいだけなのに。
これは、嫌われ者と呼ばれるもふもふな魔獣たちと過ごす、
のんびり?ドタバタ?異世界スローライフの物語。
■小説家になろう、カクヨムでも同時連載中です■
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる