転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第三章

第123話 キリアンさんはおかん属性?

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「ユーリ!」

 市場を出て大通りを歩いていたら、背後から男性に呼び止められて振り返る。

「あ、キリアンさん。おはようございます」

 挨拶をすると、キリアンさんは辺りを見渡して尋ねた。

「おはよう。今日は一人か?」

 心配そうな面持ちのキリアンさんは、私が一人で行動しているのを案じてくれたようだ。
 ヒデさんとブロンに会うまではメイスと二人きりで居ることが多かったから特に気にしていなかったが、私はまだ十歳の子供だったのだと気づいてすぐに答えた。

「メイスと一緒ですし、ヒデさんはブロンと共に行動しています」

 だから安心してと伝えたかったのだが、それより先にキリアンさんが口を開いた。

「従魔と一緒だとしてもユーリはまだ子供だ。いくらこの街の治安が良いと言っても一人で出歩くのは良くない。世の中にはな、良い人間ばかりじゃないんだ」

 キリアンさんの言うことはもっともだけど、それは私が純粋に子供だったらの話しだ。
 中身は成人した大人だしメイスに身を守る術を教わったのだから、大人に守ってもらうほど弱いとは思わない。
 そうでなければ冒険者なんてやっていられない。
 だけど、キリアンさんは私の事情を知らないのだから心配をするのも無理はないと思う。

「心配していただいてありがとうございます。でも、僕は冒険者です。自分の身は自分で守れます」

 ニッコリと微笑んで遠まわしに大丈夫だと伝えたのだが、その言葉にキリアンさんの端正に整った顔が曇る。
 そんな表情を見せられたら、私が何か悪いことでもしたような気持ちになってしまう。
 居たたまれずに言い訳を考えていたらキリアンさんが口を開いた。

「……その年で冒険者をしているのだから確かに君は強いのだろう。それに君は賢い。だが、この前も言ったように、この街の周囲には強力な魔物が多い。街に居れば安全だが、一歩でも外に出てしまえば安全を確保するのは難しい。熟練の冒険者でも危険が伴うんだ」

 その話しはキリアンさん本人から聞いたから理解しているつもりだ。
 だから、分かっているよと返事をする代わりに頷いた。
 私が頷いたのを見たキリアンさんは、更に話しを続けた。

「だから、しばらくは俺が付き添おうと思う。経験を積むために熟練の冒険者と行動を共にするのはユーリ自身のためにもなるはずだ」

 しばらく付き添う?
 さらっと告げられたせいで思わず頷き返すところだった。
 慌てて顔を上げてキリアンさんを見つめる。
 その真剣な眼差しを受けて、彼が本気なのだと理解した。

 ありがたい申し出だけど、これじゃあ迂闊にメイスと会話が出来なくなってしまう。
 返答出来ずに困っていると、脳内にメイスの声が聞こえた。
 しかし、その声色はどこか呆れているというか、諦めにも似た感情が滲んでいた。

『はぁ……。お前は厄介な奴に目を付けられたな。アイツを消すのは容易いが、そんなことをすれば大事になるだろう。お前が一人でも強い魔物を倒せると証明出来れば二度と付き添おうなどと言わないはずだ。面倒だがアイツの好きにさせておこう』

 物騒な事を口にしたメイスだが、今のキリアンさんに一人でも大丈夫だと説明したところで理解してくれるとは思えない。
 ここはメイスの言う通りにした方が良さそうだ。
 メイスに目線で返事をした私は、キリアンさんに向かって告げた。

「わかりました。僕としても上位冒険者の闘い方や知識を教えてもらえるのはありがたいです。ですが、僕一人でも大丈夫だと判断したなら、一人の冒険者として認めてください」

 遠まわしに私を冒険者として認めていないよね?と、チクリと嫌味を言ってみた。
 だって、いくら私の見た目が幼いからといってそこまで心配される理由が無いし、何より冒険者として認めてもらえていなかったのが悲しかった。
 これは、私なりのささやかな反抗だ。
 しかし、その言葉の意味を理解したキリアンさんは、急に狼狽えて言い訳を口にした。

「あ、いや……認めていないわけでは……。すまない。俺はただ心配で……」

 私より身長も体も大きいキリアンさんがあからさまに項垂れる。
 傍から見れば、私がキリアンさんをいじめたように見えてしまう。
 いじめていないのに、いや、嫌味を言っただけでそこまでしょげるとは思ってもみなかった私は、慌ててまくし立てるようにキリアンさんに声をかけた。

「あ、頭を上げてください!わかりましたからっ!これからご指導のほどよろしくお願いします!」

「っ!ああ、こちらこそよろしく」

 顔を上げたキリアンさんの表情は、これでもかというほど破顔していた。
 
 ……もしかして、嵌められた?
 いまいち釈然としないが、受け入れてしまった以上断るわけにはいかない。
 真横からメイスの深いため息が聞こえたような気がしたけど、尋ねる気力はなかった。

 こうしてキリアンさんと行動を共にすることが決まったのだけど、彼は非常に甲斐甲斐しい性格の持ち主だと後に判明した。


 おかんかよ!と心の中で叫んだのはキリアンさんには内緒だ。
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