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第三章
第124話 * キリアンさんは心配性
しおりを挟むというわけで、翌日からキリアンさんと行動を共にすることになったわけなのだが……。
『あっ!まものはっけ―ん!おねえちゃん、ぼくにまかせて!』
声を弾ませたブロンが魔物に近づくと爪を斜めに振り下ろした。
魔力を帯びた攻撃を受けた魔物は断末魔をあげる暇もないまま、胴体を真っ二つにされて静かに地面に横たわる。
今は愛らしい子犬の姿とはいえ、その正体はフェンリル。
そこいらの魔物では到底太刀打ちできないのか、魔物の方が恐れをなして逃げ出して行く。
これでは私どころかヒデさんの出番すらなさそうだ。
ブロンのおかげで楽させてもらえるのはありがたいけど、魔物が逃げ出してしまうせいで今ではただの散歩になっていた。
隣では口をポカンと開けてキリアンさんが茫然と立ち尽くしている。
キリアンさんが同行しているため、私は斜め掛けのバッグに真っ二つにされた魔物を収納するふりをして亜空間に仕舞う。
そこでハッと我に返ったキリアンさんがようやく口を開いた。
「あんなに強いとは驚きだ。普段は魔力を抑えているだけなのか、あそこまで魔力を制御出来る魔物を見たことがない。すっかり見かけに騙されてしまった」
ブロンの凄さに感服した様子のキリアンさんだが、キリアンさんだって一目でそこまで見抜けるのだから、やはり金級冒険者というのは伊達ではないということだろう。
だけど、ブロンを褒められて私も悪い気はしない。
調子に乗った私は、胸を張って鼻息荒く応えた。
「ブロンはとっても愛らしいですけど、とっても強いんです。それに誰よりも魔物の気配には敏感ですし、もふもふの毛並みは最高の癒しなんです」
腰に手をあててふふんと鼻を鳴らした私を見たキリアンさんは、お腹を手で押さえて口を手で覆うとふるふると肩を震わせた。
「ぷっ!あははは!そうか、ブロンは愛らしいか!そうだな。ブロンは愛らしい上に強い!ユーリ達が無事にこの街に来れた理由が分かった気がするよ」
何が可笑しかったのか分からないが、とにかく保護者が居なくても問題ないことは伝わったようで良かった。
……それにしても笑い過ぎじゃない?
私はムッと口を尖らせて呟いた。
「……ブロンは強いけど私だって魔物を狩れるのに」
「ん?ユーリ、何か言ったか?」
私の呟きは耳に届いていなかったようで安堵したが、ここは私も戦えることをアピールしておいた方が良いだろう。
そうでなければ、いつまでたってもキリアンさんが私達から離れそうにないと感じたのだ。
今回、キリアンさんが私に同行することをヒデさんに伝えたところ、悪い人には見えないけど何があるか分からないからと一緒に来てくれた。
メイスが居るからそんな心配をしていなかったけど、ヒデさんとブロンが一緒なら心強い。
確かにここの魔物は今までの魔物とは違い、大きさも強さも桁違いに強いのだろう。
現に、ブロンが倒した魔物は私が倒した魔物と比べても優に二回りは大きい上に、鑑定スキルでは下位の魔物だと表示されていた。
これではキリアンさんが心配するのも仕方がないのかもしれない。
それでも私はメイスの指導の下、剣と魔法の腕を磨いてきた。
魔物と対峙した頃は恐ろしくて足が竦んだこともあった。
だけど、冒険者になった以上避けて通れないことは重々承知の上で旅を続けてきた。
キリアンさんの心配を取り除くため、そして自分のために今までの努力の成果を認めてもらおうと決意した。
「ブロン。今度は私が魔物を倒すから下がってて」
ブロンに下がるように言うと、目を閉じて意識を集中させる。
気配察知のスキルを発動させて近くに魔物が居ないか探っていく。
ここからそう遠くない場所に魔物の気配がして目を開けると、後ろを振り返って告げた。
「向こうの茂みに魔物の気配がするから倒してくるね。皆はここで待ってて」
キリアンさんは手を伸ばして何か言おうとしていたようだけど、私はそれを無視してメイスをブロンの背中に乗せると、隠密のスキルを発動させて茂みに向かって走っていった。
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