転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第三章

第137話 領主様からの呼び出し

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 ポーション作りから更に数週間が経ったある日のこと。
 私達は再び領主様のお屋敷に呼ばれることとなった。
 応接室にはすでに領主様が待ち構えており、心なしか顔色が青白いように見受けられた。
 領主様は私達に席に着くように促すと口を開いた。

「急な呼び出しに応じてもらったこと感謝する。早速で申し訳ないのだが、実は随分と前からホーリー草の採取依頼を出しているのだが、如何せん希少な薬草ということもあり目標の本数に至っておらんのだ。そこで、ユーリ殿たちにも採取を頼みたいと思ってな。出来れば急ぎでお願いしたいのだが……この依頼、受けてはもらえないだろうか?」

 領主様の真剣な眼差しを受けて只事ではないと感じた私は、失礼ながら質問をさせてもらうことにした。

「あの、領主様。質問してもよろしいでしょうか?」

「ああ、構わない。何だね?」

 その問いかけに、領主様は訝しむ様子もなく頷いた。

「ホーリー草はいくつ必要なのですか?そのご様子だとお急ぎではありませんか?ご家族のどなたかに何かあったのですか?」

 矢継ぎ早に質問をされた領主様は一瞬目を見開いたあと、辛そうに唇を嚙み締めると目を伏せてポツリポツリと語り始めた。

「……実は末の息子のことなのだが、あの子は生まれつき病弱で医師からは成人まで生きられないだろうと告げられた。だが、あの子も私の大事な息子だ。このまま指を咥えて何もせずにはいられなかった。書物を漁り調べた結果、ホーリー草があの子を救えるのではないかと考えた」

 私は医師が居ることに安堵したものの、領主様の口ぶりから経過はあまり良くなさそうだと感じて話しの続きを待った。

「王都の高名な医師によると、ホーリー草であれば改善するかもしれないと告げられた。だが、問題は数だ。冒険者ギルドに常時依頼を出してはいるがホーリー草は希少な薬草でな、月に一本手に入れば良い方で中々難航しておる。冒険者の皆は快く引き受けてくれたのだが、熟練の冒険者でも探し出すのが難しい上に、これ以上ホーリー草の採取だけに時間を割いてもらうのは偲びなくてな」

 領主様はそこで一旦話しを区切ると、真剣な眼差しを私達に向けて深々と頭を下げた。

「そこでユーリ殿たちにもホーリー草を探してほしいのだ。月に一本でも構わない。そうすればあの子は生きながらえるのだ。難しいことは百も承知。だが、どうかこの依頼受けてはもらえないだろうか」

 切々と訴えかける領主様の姿は、領主というよりも、ただ子供の無事を願う父親だった。
 その姿に胸を打たれた私は、数週間前に作っておいたポーションがあったのを思い出した。
 あのポーションであれば、病弱だという末の息子さんは健康になるかもしれない。
 漠然とだが、なぜか確信していた。
 そして、頭を下げたままの領主様に話しを切り出した。

「どうか頭を上げてください。僕から大事なお話しがあります。これから話す内容を誰にも話さないと約束していただけますか?」

 この場には領主様と私達のみ。
 すでに人払いをしてあるため、他所に情報が洩れる心配はないだろう。
 それに、領主様はお母様の身内ともいえる存在で、その為人はこの数週間で理解したつもりだ。
 領主様はきっと約束を守ってくれる。
 頭を上げた領主様に、斜め掛けのバッグから虹色の液体入りのガラス瓶を取り出してテーブルに置くと告げた。

「これはホーリー草で作ったポーションです。一口飲めば瞬時に怪我や病気を治してくれます。ただ、病弱ということですので、どこまで効果があるのかはわかりませんが……」

 鑑定では、一口で四肢欠損や不治の病に効果があると書かれていた。
 ただし、病弱というだけではどこまで効果があるのか分からないが、試すだけの価値はありそうだ。

 領主様は、テーブルに置かれた虹色の液体入りのガラス瓶を凝視したあとポツリと呟いた。

「……これがホーリー草で作ったポーションだというのか?もっと透明な色をしていたと思うが、このような綺麗な色は初めて見た……」

 透明?
 確かに、煮出している間は透明だった気がするけど、冷ましたら綺麗な淡い虹色に変化したよ?
 まぁ、十本もホーリー草を使ったからねぇ。
 一本や二本じゃ変化しないんだろうね。

「そうなんですか?きっと使用した本数とかで変わるんじゃないですかねぇ……」

 そう返事をしてすぐに話しを付け加える。

「あっ。もし、お疑いであれば調べていただいても構いませんよ」

 初めて見たのなら信用してもらえないのも分かる。
 そう思って言ったのだが、領主様はポーション入りのガラス瓶を手にすると勢いよく立ち上がった。

「今から息子の部屋に向かう。ユーリ殿ついて来てはもらえないだろうか」


 いきなりのことに呆気に取られた私は、足早に扉に向かう領主様を追いかけるようにして後に続いた。
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