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第三章
第163話 地下の宝物庫
しおりを挟む長く続く階段をひたすら下へと降りて行くと、厳重に閉ざされた重厚な扉が目に入る。
扉の前で立ち止まった領主様が、こちらに振り返って口を開いた。
「ここが地下の宝物庫だ。ユーリ殿に見せたい物はこの中にある」
薄々分かっていたけど、改めて告げられると私なんかが宝物庫に入って良いのか気が咎めてしまう。
ごくりと生唾を呑み込んだ私に、領主様は声をあげて笑った。
「はっははは!そう緊張することはない。この宝物庫は初代ご当主様が造られたものでな、一度たりとも盗みに入られたことはない。それに、ここに連れて来たのは家族以外ではユーリ殿が初めてだ」
おぉ!またしても初代ご当主様か!
それにしても、こんな凄い地下宝物庫を造ってしまうなんて、しょうたさんはどれだけ凄い人だったのだろう。
感慨に耽っていると、肩からメイスの声が聞こえた。
『微かにアイツの魔力を感じる。確かに並みの人間にはこの宝物庫に入るのは至難の業だな。……それに、奴の気配がする』
最後の方の声は不快そうな感情が滲んでいたけど、その時の私はそれすら気づかずにただ感動していた。
領主様は鍵穴に鍵を差し込んで重い扉をゆっくりと開ける。
中へ一歩足を踏み入れた私は、その広さに思わず感嘆の声をあげた。
「うわぁ~!広い!まるで展示場みたい!」
小物は棚に種類別に並べられ、大物は段になった棚の上に鎮座しており埃一つない。
それに、どこか空気が澄んでいるように思える。
地下だし空気が滞留して澱みそうなものなのだが、一体どうしてなのだろう?
私の疑問に答えたのはメイスだった。
『……ふむ。室内は清潔に保てるように魔法を施してあるのか。実にアイツらしい』
やっぱり魔法だったんだ。
間抜けな顔をして感心していると、領主様が静かに語り始めた。
「この宝物庫には王家より賜った物や初代ご当主様が大切にしていた品々が保管してある。特にあの剣は人を選ぶ剣でな、意思を持っているそうだ」
そう言って領主様が指を差した方角に視線を向けると、ガラスケースの中に王都で見た剣があった。
銅像だったため色は分からなかったけど、あの形は紛れもなくポチと酷似している。
三百年という長い年月にも関わらず、その長剣は色褪せることなく鞘に収まっていた。
「あ、あの剣は……ポチだっけ?」
あまりにも強烈なネーミングは忘れようにも忘れられない。
ポツリと呟いた私の声に、ポチがカタカタと全身を震わせ始めた。
「わっ!動いた!」
「おぉ!意思を持っていると伝え聞いていたが誠であったか!」
ポチが動いたことに思わず後退る私の隣で、領主様が歓喜の声をあげて近づいて行く。
危ないのでは?と心配するも、嬉々として近づいて行く領主様を止められずに見つめていると、領主様が振り返って声をかけてきた。
「ユーリ殿!このような現象は初めてだ!きっとユーリ殿に反応しているのだろう。もっと近づいてみよう」
来い来いと手招きされたが、剣がカタカタと動く様は異様で不気味すぎる。
領主様は面白い玩具を見つけた少年のように瞳を輝かせているが、私としてはカタカタと動く剣に近づくのは避けたい。
後退りながら首を左右に振る。
すると、肩から身を乗り出して剣を眺めていたメイスが言った。
『はぁ……ユーリ、奴の側に行ってやれ。あのままだとガラスの入れ物を壊しかねない』
「えぇっ!?」
いくら意思を持っているとはいえ、ガラスケースを破壊するほどの力はないはずだ。
だけど、先ほどより動きが激しくなっているように思える。
どうして私がと思わなくもないが、大人しくなるのなら従うしか他に方法はなさそうだ。
「……わかった」
怪我人を出すことを考えれば、私一人の犠牲で済むのなら背に腹は代えられない。
半ば自棄になった私は大股でガラスケースに近寄ると、カタカタと動くポチに視線を向けた。
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