転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

文字の大きさ
162 / 180
第三章

第162話 宝物庫へ

しおりを挟む

 馬車が屋敷へ到着すると、セバスさんが笑顔で出迎えてくれた。

「ユーリ様、お越し下さるのをお待ちしておりました。旦那様は応接室でお待ちでございます。ご案内いたします」

 セバスさんは、一介の冒険者にすぎない私にも相変わらず丁寧に接してくれる。
 そんな扱いに慣れない私は、ぎこちない笑みを浮かべながら後をついて行く。

 外観は日本風家屋に近いが、一歩室内に足を踏み入れるとそこはやはり領主様の屋敷、見た目的にはシンプルながらも高そうな調度品が綺麗に磨かれて飾ってある。
 一度目、二度目は余裕がなくてじっくりと見ていなかったけど、貴族のしかも伯爵家ともなればある程度体裁を整える必要があるのだろう。
 いかにも成金といった装飾品じゃないところは好感が持てる。

「旦那様、ユーリ様をお連れいたしました」

 控えめに扉を叩いてセバスさんが扉の向こうに居るであろう領主様に声をかけると、すぐに扉の向こうから聞き慣れた声が返ってきた。

「お通ししなさい」

 セバスさんに促されて室内に足を運ぶと、満面の笑みを浮かべた領主様がソファから立ち上がって迎え入れてくれた。

「わざわざ呼び出してすまないね。かけてくれ」

 領主様に促されてソファに腰を下ろすと、セバスさんがお茶を用意して静かに退室した。
 セバスさんが退室したのを見届けた領主様は、お茶を一口啜ると口を開いた。

「ポーションの件では大変世話になった。ユーリ殿のおかげで魔力器官の未発達で苦しむ子供が減ったよ。本当に感謝している」

 あ、私を呼び出したのはポーションのことだったのね。
 領主様はわざわざ進捗を報告するために会う時間を設けてくれたのか。

「わざわざご報告いただきありがとうございます。お役に立てたのなら良かったです」

 領主様の口から、魔力器官の未発達で苦しむ子供が減ったと知らされて安堵する。

「うむ。それでだな、感謝のしるしとしてユーリ殿に渡したい物があるのだが……ちょっと場所を移動するが構わないか?」

 私に渡したい物?
 報酬はすでに受け取っているし要らないんだけどな。

「あの、領主様。すでに報酬をいただいていますし、これ以上はいただけません」

「ユーリ殿は謙虚だな。だが、どうしても見せたい物があるのだ。見るだけなら構わないだろう?」

 やけに食い下がってくる領主様に、私は見るだけなら構わないかと返事をした。

「見るだけでしたら……構いません」

「そうか!では行こう」

 パッと嬉しそうな表情を浮かべた領主様は、ソファから立ち上がるとついて来るように促してきた。
 ポーションを口実に何か他の目的があって呼び出されたのではと気がついたが、今更帰るわけにもいかず領主様の後を追って行くことしか出来なかった。







 広い廊下を進んで行くと、そこは突き当りとなっていた。
 壁には黒髪黒目の中年男性の肖像画がかけてある。
 若干色褪せてはいるが、王都で見た英雄の銅像の人物に似ている。
 きっと、初代ご当主様であるしょうたさんだろう。
 私はその肖像画を食い入るように見入っていた。

 カチッ

 何かの音がして領主様に視線を戻すと、肖像画がかけてある壁が回り始めた。
 まるで、忍者のからくり屋敷のような仕掛けに言葉を失ってしまう。
 ぽっかりと開いた壁の向こう側は、地下へと続く階段が私達を待ち構えていた。

「ここは宝物庫へと続く階段だ。今、明かりをつける」

 領主様はそう告げるなり、壁に埋め込まれている魔石に手を触れた。
 手を触れた魔石から順に明かりが灯っていく。
 随分と奥まで明かりが灯っていくのを見ながら、階段の多さにため息が零れそうになったのは言うまでもない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。

ソラリアル
ファンタジー
※本作は改題・改稿をして場所を移動しました。 現在は 『従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々』 として連載中です。2026.1.31 どうして、魔獣と呼ばれる存在は悪者扱いされてしまうんだろう。 あんなに癒しをくれる、優しい子たちなのに。 そんな思いを抱いていた俺は、ある日突然、命を落とした――はずだった。 だけど、目を開けるとそこには女神さまがいて、俺は転生を勧められる。 そして与えられた力は、【嫌われ者とされる子たちを助けられる力】。 異世界で目覚めた俺は、頼りになる魔獣たちに囲まれて穏やかな暮らしを始めた。 畑を耕し、一緒にごはんを食べて、笑い合う日々。 ……なのに、人々の噂はこうだ。 「森に魔王がいる」 「強大な魔物を従えている」 「街を襲う準備をしている」 ――なんでそうなるの? 俺はただ、みんなと平和に暮らしたいだけなのに。 これは、嫌われ者と呼ばれるもふもふな魔獣たちと過ごす、 のんびり?ドタバタ?異世界スローライフの物語。 ■小説家になろう、カクヨムでも同時連載中です■

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...