【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚

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第24話 薬師カルラ

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 粉薬を作るため、本格的に薬の勉強をしようと父と話しをした日から一月ほど経った。



「初めまして。私はウォーレン領で薬師をしています。カルラと申します」

 母が実家のウォーレン領に、腕のいい薬師がいるとカルラさんを紹介してもらった。
 幼い頃からお世話になっていて、その頃から容姿は変わっていないと言う。
 ウォーレン領の領民や母の家族は、彼女の薬師としての腕を信用しており、また穏やかな人柄は老若男女問わず慕われているらしい。

「初めまして。私はミリアーナ.ハーベストと申します。よろしくお願いいたします」

 カルラさんは上品なおばあちゃんで、若い頃はもの凄い美人さんだったんじゃないかと容易に想像出来るほど、良い年の取り方をしていた。
 穏やかで澄んだ蒼い瞳は、全て見透かしているような印象を受けた。

 父はどうしても外せない仕事があり、すぐ戻るからと私達を引き合わせた後、ソファに座る暇もなく踵を返して去って行った。
 二人応接室に残されて緊張しながらも、メリダさんに淹れてもらったハーブティーに口を付けた。

「あら?……このお茶、薬草かしら?でも美味しいわ」

 一口飲んだ後、目を丸くしてカップを覗いていたが、美味しいと言うとまた一口含んだ。
 一つ一つの所作が優雅で美しい。
 同性の私でも目が離せない。
 醸し出す空気が違うのだ。

「あ、えっと、ハーブティーと言います。そちらのハーブティーはオレガノを使用しています。お疲れではと思い疲労回復効果があるハーブを用意しました」

 カルラさんに見惚れていて反応が遅れてしまった。

「まぁ、そんな効果があるのね。知らなかったわ。それにこの香り、何だか落ち着くわ」

 カップを手に取りゆっくり円を描くように回して香りを楽しむ。

「はい、オレガノには心身を落ち着かせる効果もありますので」

「……私が教える必要あるのかしら?」

 カップをそっとテーブルに置き、片手を頬に添えて困ったわという表情になる。

「え、いや、あの、薬の知識は全くありませんから、是非、ご教授願えませんか?」

 焦った私は無意識のうちに体を乗り出していた。
 だってポーションを作りたいし、本当に知らないんだもん。
 頬に手を添えたまま首を傾げて暫くの間私を見つめていたが、スッと背筋を伸ばした。

「承りました。暫くの間こちらで基礎を勉強いたしましょう。その後のことは都度話し合いましょう」

「はい!ありがとうございます!よろしくお願いします!」

 勢いよく立ち上がり、深々と頭を下げる。

「ふふ。ミリアーナさんは元気なのね。いいことだわ」

「あ、ミリーと呼んでください。家族や親しい人には愛称で呼んでもらってます」

「…まぁ、いいの?では、ミリーさんと呼ばせてもらうわね」

「はい!」

 砕けた口調のカルラさんは、ますます素敵な笑みを浮かべて目を細めていた。
 カルラさんとの出会いは、私に大きな影響を与えた。
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