【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚

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第36話 次の段階へ

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 奴隷の話しに衝撃を受けてから数日。

 屋敷の一室に研究室を設けることになり、物置部屋の荷物を片付けていた。
 場所的に人の出入りはほとんどなく、日当たりも悪くないし、何より十分な広さがあり、研究室にしようと父に相談した。
 娘に甘い父は二つ返事で了承してくれたので、着々と準備を進めてきた。

「お嬢様、道具をお持ちしました。何処に置きましょうか?」

 重そうな木箱を抱えて声を掛けてきたのは、従者兼護衛のジークさん。
 体格が良すぎて木箱が小さく見える。

「ありがとう。じゃあ、あっちのテーブルに置いてもらえる?」

 振り返り壁際のテーブルを指差す。

「かしこまりました」

 軽く頷くと、テーブルに木箱を置いた。

「お嬢様、この分で荷物は運び終えましたが、他に何か手伝うことはありますか?」

「ううん、ありがとう。助かったわ。後は私がやるから大丈夫よ」

「では、失礼いたします」

 大量に運ばれた荷物を使い勝手が良いように、テーブルや棚にそれぞれ並べていく。
 十分な広さの部屋は、すぐに荷物で溢れかえった。

「なんか、研究室っていうよりも調剤室に近いかな。エヘヘ、楽しい。ワクワクする」

 整理整頓された部屋を見回して、高揚感が増す。
 自分の城みたいで、嬉しさがこみ上げてくる。
 誰も見ていないことを確認した私は、ピョンピョンと跳ねて小躍りしていた。


 メリダさんが夕食だと呼びに来るまで、新しく出来た研究室でこれからのことを想像して過ごしていた。



「ミリー、無理していないか?また倒れるようなことだけは止めてくれ。いつでも私を頼ってほしい」

 ほぼ一日中荷物の整理をしていたことで、心配させたようだ。

「はい、ありがとうございます。無理はしていません。時間を掛けてのんびり片付けましたから。心配掛けてすみません」

 その言葉を聞いた父達は、安堵の表情を浮かべた。

「それなら良い。自分を大切にしてくれたら私は安心だ」

 父の隣の席の母も頷く。

「えぇ、そうよ。我が子を心配しない親なんていないわ。倒れる度に気が気じゃなかったんだから。もっと周りを頼ってほしいの」

 母に言われて私は反省する。
 服をツンツンと引かれて首を横に動かすと、瞳を潤わせた弟と目が合った。

「姉さま。無理はダメ、絶対」

 マーカスくん!分かった。姉さま、無理しないよ。
 母の隣では笑みを湛えたカルラさんが、無言のまま見つめていた。
 怖い、怖いですカルラさん。
 もう無茶はしませんから、その目止めていただけますか?
 この中で一番恐ろしいのは、カルラさんだと思う。

 温厚な人ほど怒らしてはいけないって言うけど、本当なんだと実感した。
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