【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚

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第35話 奴隷の存在

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 しっかり休養を取ったことで、今朝は爽快に目覚めて身体も軽い。



「すり潰すのが一番きつかったけど、それさえ済めば後は分量を測ってお終い……なんだけど、分量を測る道具と薬を包む紙は、アルベルトさんにお願いしなきゃ。…お父さまからお願いしてもらおう」

 アルベルトさんの嗅覚はとても鋭い。
 何処からか情報を聞きつけて、いつの間にか商談が成立している。
 今回もそうなるだろうが、粉薬の効果を調べないとならないのと、大人と子供で平均的な分量を割り出さないといけないため、すぐにには無理だ。
 父に粉薬の完成まで時間が掛かることを伝えておかなきゃ。



 先ずは、粉薬の効果と分量をどうするか。
 ハーブだから人体に害はないはずだけど、適量という言葉があるように、多すぎても少なすぎてもいけない。
 効果がなければ意味がない。
 粉薬を作った後に熱を出していたなら、自身で確かめたのに。
 具合が良くない人に試すのは気が引けるし、更に悪化したらと思うと躊躇する。



「お父さま、お話しがあります」

 執務室に入るなり、開口一番に告げた。
 父はチラと執事に目をやり、退室を促した。
 扉が閉まるとソファに移動して浅く腰を下ろした。

「以前話していた、粉薬のことか?何か問題が?」

 肘をつき両手を組むと、前のめりで不安そうに聞いてきた。

「問題と言えば問題ですが、粉薬を作るための道具がないので、アルベルトさんに頼みたいのですが、その、ちょっと……」

 言い淀む私に父は、ああ、と察してくれた。

「アルベルトのことだから、商談になるな、間違いなく。」

 その光景が浮かんだのか、苦笑交じりで答えた。

「分かった。私が対応しよう」

 任せておけというように父は頷く。

「ありがとうございます。では、改めて詳細を記した書類を用意します。それと、粉薬ですが、治験が必要になりますので、時間が掛かることと、そのための人間が欲しいのですが……えぇっと……」

 人体実験のための協力者が必要なのだが、そんな都合よく病人は現れない。
 父の伝手でどうにかならないものかと、無茶だと思いながら尋ねた。

「ああ、それなら問題ない。知り合いに奴隷商をしている者がいるから、頼んでみよう」

 父の口から初めて聞く単語が飛び出て、目を見開く。

「え?奴隷、ですか?」

 なんと!奴隷?!この世界は奴隷がいるんだ。
 私は愕然とした。
 奴隷とは縁のない世界でのほほんと暮らしていたから、この世界でも奴隷なんていないのだと勝手に思い込んでいた。

「……はい、お願いします」

 衝撃を受けながらも、何とか声に出した。
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