【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚

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第34話 休養中

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 ようやく熱が下がり、食欲も復活した私は自室で本を読んで過ごしていた。
 カルラさんにしっかり休養を摂るように言われたからだ。
 あの時のカルラさんは怖かった。
 顔は笑っているのに目は静かな怒りを湛えていた。

 そんな事情もあり、自室で大人しく過ごすことを余儀なくされていた。
 何度も心配を掛けたから自業自得なんだけど、それでも退屈で暇を持て余していた。
 念のため、マーカスは私の部屋に入らないように注意されていたから話し相手もおらず、読書に飽きた私は、ベッドでゴロゴロとしていた。

 コンコンコン

「失礼しま~す。お嬢様ぁ、お加減は如何ですかぁ?お茶をお持ちしましたぁ」

 ノックとともに間延びしたアリスさんの声が聞こえる。
 
「どうぞ」

 入室を許可されたアリスさんが、お茶の準備を始めた。
 一つ一つの動作が可愛く、ちょっとそそっかしいところがあるが、憎めない。
 この前、ハーブ園でカールさんと一緒にいる所を偶然目にしたが、会話が弾んで楽しそうにしていた。
 カールさんは明るくて朗らかで、アリスさんの少し上で年も近い。
 二人はお似合いだと思う。
 もしかして二人はもう付き合っているのかもしれない。
 だとしたら嬉しいな。

「ありがとう。もうすこぶる元気なんだけど、何もすることがなくて。退屈で死にそうよ」

 少し大袈裟だが、退屈なことには変わらない。

「お嬢様ったらぁ、そんなこと仰らないでくださいよぉ」

 アリスさんはまたまたぁ、という素振りをしてカップにお茶を注ぐ。
 テーブルに移動した私は、お茶の香りを楽しんで声をかける。

「あら?今日はカモミールね。飲みたいと思っていたの。ありがとう」

 お礼を伝えてカップに口をつける。

「いいえ、どういたしまして。母がカモミールが良いだろうって言いましたのでその通りにしただけです。私はそこら辺気が付きませんでした。すみません」

 そうなんだ。
 ソフィアさんは気配り上手で、本当によく見ているなぁと感心した。

「いいのよ。あなたにはあなたの、ソフィアさんにはソフィアさんの良さがあるんだから、気にすることはないわ。私はアリスさんの明るくて常に笑顔でいるところが気に入っているんだから」

 私の言葉に目を丸くした後、顔を赤くして両頬を手で抑えたアリスさん。

「っ!そ、そんな、勿体ない!あ、ああ、あり、がとう、ございますっ!」

 身体をモジモジと捩り恥ずかしそうにしていたが、直後、背筋を伸ばすと腰を深く折り頭を下げた。
 その様子が可笑しいやら面白いやら笑いがこみ上げてくる。

「ふ、ふふふ、アリスさん、もういいから。頭を上げて」

 まだ落ち着かない様子のアリスさんを尻目に、私はハーブティーをゆっくり味わうことにした。
 その味は優しさに溢れていて、胸がほっこりと温まった。
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