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第41話 束の間
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粉薬の開発が始まってもうすぐ九ヶ月。
父の知り合いの奴隷商の協力のもと、風邪薬の方もようやく販売にこぎつけそうで一安心。
傷薬や消毒薬、鎮静薬等は既に販売を始めて三ヶ月経つ。
こちらは主に騎士や冒険者に需要があるそうで、ひっきりなしに注文が入り大忙しの様子。
新たに従業員を雇用したりハーブ畑を広げたり、日に日に父の仕事が増えていき、心なしか疲れているように見えた。
執事のウィリアムさんも、毎日仕事に追われて時々ため息を吐いている姿を目にした。
目的の風邪薬が出来たから、もうこれ以上増えることはないと思う。
本当にごめんなさい。
「ミリーさん、おはようございます」
背後から聞き慣れた声がする。
「おはようございます。カルラさん」
今朝は淡い紫色のゆったりとしたワンピースを着ている。
何を着ても似合うなぁ、とまじまじと眺めていたら、恥ずかしいような困ったような表情をしていた。
その様子にハッと気付き咄嗟に早口で話す。
「あ、あの、カルラさんは何を着てもお似合いで綺麗だなあと見惚れていました」
「あら、まあ、ふふ、ありがとうございます。嬉しいわ」
少しはにかんだ表情をして口元に手をあてる。
その後、真顔になり意を決した瞳を向けた。
「ミリーさん、大事なお話しがあります。少しお時間よろしいかしら?」
「……はい。分かりました。研究室の方が良いですか?」
「えぇ、ありがとう」
何だか聞きたくない。
急に足取りが重くなった。
ジークさんには二人で大事な話しがあるからと、側を離れてもらった。
研究室に入って暫く重い空気が流れた。
「……ミリーさん。私、そろそろここを離れようと思っています」
やっぱり。何となく分かっていた。
寂しいな、そんな感情が心を占めていた。
俯き唇をギュッと嚙みしめ、ただ黙って聞いていた。
そっと背中に回された腕が私を優しく包む。
「居心地が良すぎてつい長居してしまったわ。でもずっと会えない訳じゃないから、悲しむことはないわ。隣の領なんだし、また会えるわ。きっと必ず」
幼い子を諭すようにゆっくりと優しく告げる。
私にはそれを止める権利はない。
だから頷いた。
「わか、り、ました」
俯いていたせいで、涙が床に落ちた。
カルラさんにも分かったのだろう。
「いい子。いい子ね。本当にいい子。我慢しなくていいのよ。泣きたい時は泣いていいの」
子供をあやすように背中をポンポンと撫でるように叩かれて、私は我慢出来ずに堰を切ったように泣いた。
その間、カルラさんはずっと背中を優しく擦っていた。
父の知り合いの奴隷商の協力のもと、風邪薬の方もようやく販売にこぎつけそうで一安心。
傷薬や消毒薬、鎮静薬等は既に販売を始めて三ヶ月経つ。
こちらは主に騎士や冒険者に需要があるそうで、ひっきりなしに注文が入り大忙しの様子。
新たに従業員を雇用したりハーブ畑を広げたり、日に日に父の仕事が増えていき、心なしか疲れているように見えた。
執事のウィリアムさんも、毎日仕事に追われて時々ため息を吐いている姿を目にした。
目的の風邪薬が出来たから、もうこれ以上増えることはないと思う。
本当にごめんなさい。
「ミリーさん、おはようございます」
背後から聞き慣れた声がする。
「おはようございます。カルラさん」
今朝は淡い紫色のゆったりとしたワンピースを着ている。
何を着ても似合うなぁ、とまじまじと眺めていたら、恥ずかしいような困ったような表情をしていた。
その様子にハッと気付き咄嗟に早口で話す。
「あ、あの、カルラさんは何を着てもお似合いで綺麗だなあと見惚れていました」
「あら、まあ、ふふ、ありがとうございます。嬉しいわ」
少しはにかんだ表情をして口元に手をあてる。
その後、真顔になり意を決した瞳を向けた。
「ミリーさん、大事なお話しがあります。少しお時間よろしいかしら?」
「……はい。分かりました。研究室の方が良いですか?」
「えぇ、ありがとう」
何だか聞きたくない。
急に足取りが重くなった。
ジークさんには二人で大事な話しがあるからと、側を離れてもらった。
研究室に入って暫く重い空気が流れた。
「……ミリーさん。私、そろそろここを離れようと思っています」
やっぱり。何となく分かっていた。
寂しいな、そんな感情が心を占めていた。
俯き唇をギュッと嚙みしめ、ただ黙って聞いていた。
そっと背中に回された腕が私を優しく包む。
「居心地が良すぎてつい長居してしまったわ。でもずっと会えない訳じゃないから、悲しむことはないわ。隣の領なんだし、また会えるわ。きっと必ず」
幼い子を諭すようにゆっくりと優しく告げる。
私にはそれを止める権利はない。
だから頷いた。
「わか、り、ました」
俯いていたせいで、涙が床に落ちた。
カルラさんにも分かったのだろう。
「いい子。いい子ね。本当にいい子。我慢しなくていいのよ。泣きたい時は泣いていいの」
子供をあやすように背中をポンポンと撫でるように叩かれて、私は我慢出来ずに堰を切ったように泣いた。
その間、カルラさんはずっと背中を優しく擦っていた。
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