【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚

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第40話 粉薬

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 石けんの改良は、意外と早く済んだので、ようやく粉薬の開発に時間を割けるようになった。

 粉薬はやはり分量が難しく、大人と子供で量を変えたり、体格も考慮しないといけない。

 ポーションのように魔法を使わないから、飲んでもすぐには効果が得られないので、難航している。
 父の知り合いの奴隷商人に協力を得たが、病人というより怪我人の方が圧倒的に多く、傷薬関連の粉薬が早く完成したのだ。
 それは良いことなのだが、肝心の風邪薬はほとんど試せていない。

「う~ん。焦らずのんびりやっていくしかないかぁ」

 早く完成させたい気持ちはあるけど、口に入る物だから安全性と効果を確認しないことには先に進めない。

「こればっかりは仕方ないよね」

「そうですよ。焦っても仕方ありませんよ。ミリーさんは良く頑張ってます。高額な治療費を払えない人達にはとても有難いことなんです。粉薬が普及すれば、もっと大勢の人達が助かるはずです。もう少しなんですから、慎重に進めて行きましょう」

「っ!?」

 部屋に一人で居たはずなのに、いつの間にか真横にカルラさんが現れて肩が大きく跳ねた。

「カルラさん。お、驚きました。いつから居たのですか?」

「ふふ、ドアをノックしたんだけど、返事がなかったから勝手に入りました。また倒れているんじゃないかと思ったの。そうしたら独り言が聞こえて。驚かせてごめんなさい」

 ノック音が耳に入らない程気付かなかったことと、独り言を聞かれていたことに恥ずかしくなる。

「えっと、何度も心配をお掛けしてすみません。でも、無理はしていないですよ」

「そのようで安心しました。ミリーさんは没頭すると周りの音が聞こえなくなるのね。それだけ集中力が高いのね」

 ん?褒められたの?高等な皮肉かな?
 まっ、いっか。素直に褒められたと受け取っておこう。

「ありがとうございます。一つのことを考えてると、どうしても他の事が疎かになってしまって。すみません」

「ふふふ、いいのよ。謝る必要はないわ。何度も言ってしつこいようだけど、無理をしないでくれればそれで十分よ」

 そう話しつつ頭を優しく撫でる。
 カルラさんは私を実の娘のように可愛がってくれる。
 それが当たり前のように思えて何だかくすぐったい。
 とても居心地が良い。

「じゃあ、カルラさん。ハーブティー飲んで休憩しませんか?」

 無理をしていないよと、アピールのためにお茶に誘った。
 その言葉を聞いてますます笑みを深めたカルラさんは、えぇ、と頷いた。

「それじゃあ、ローズマリーをお願いしてもよろしいかしら?」

「はい、かしこまりました。今日はガゼボでご用意しますね」

 恭しく礼をした後、ドアマンのようにドアを開けた。
 カルラさんは、ふふふ、と微笑ましい様子で目を細めていた。
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