38 / 256
赤の盗賊団
第36話 赤の盗賊団 『犯人しか知り得ない事実』
しおりを挟むサタン・クロースとレッド・マントが転移呪文で転移しいなくなった後―。
オレたちが『赤の盗賊団』の残党を倒し、戦闘が終了したところに、ちょうどコタンコロが戻ってきた。
上空から巨大なフクロウがふわりと舞い降りると、ギルガメシュ、エンキドゥ、オット、ウントコが地面に下ろされた。
コタンコロは人間大に小さくなり、フクロウの頭を持った鳥人の姿になった。
「ご主人様。ヤツラを片付けて参りました。」
「コタ。ご苦労だったな。助かったよ。ありがとうな。」
「いえ。もったいなきお言葉。我はジン様の下僕が一つ。遠慮なく使ってください。」
「うん。これからも頼むよ。」
「イシカもホノリもよく来てくれた。ありがとね。」
「うん、当たり前だよ~ジン様。イシカは下僕であるからな。」
「そうそう。当然なのだ、ジン様。ホノリは下僕なのだぞ。」
「アイ。オレも基準を明確にしていなかったのが悪かったな。今度からはもっと意思疎通を行うとしよう。」
「いえ。マスター! 謝らないでください! マスターの御心を汲み取れぬワタクシが悪かったのです!申し訳ございません!」
「いや、いいんだ。『仲間』とそうじゃないかは・・・またゆっくり考えていこう。」
「イエス。マスター!」
「ヒルコもよくやった。」
「あーい。僕もジン様のお役に立てて嬉しいですよー。」
ギルガメシュ兵長たちがやっと空酔いから醒めたようで立ち上がってきた。
「ジン殿・・・。本当に助かった。礼を言う。」
「ああ。本当に危なかった。コタンコロ殿には窮地を救っていただいた。」
「間に合ってよかったです。」
そこへアテナたちも駆けつけてきた。
「おお! ギルガメシュ殿! 別動隊の方はいかがした?」
「いえ。申し訳ありません。我々のほかは全滅です。」
「な・・・。そうだったか。それは大変だったな。」
「ふがいなき結果で言葉もありません。」
「いや。卿らだけでも無事でよかった。」
アテナはそう言ってオットのほうを見た。
「オット。ウントコ殿は大丈夫か?」
「うん。ギルガメシュさんがくれたパナケイア薬をさっき飲んだので、あと数刻もすれば目覚めるかと思う。」
「そうか。卿らはイラムの街へ引き返すがよいぞ。竜馬を使うと良い。えーと、付添いは誰かおらぬか!」
「グースカ衆の者をつけましょう。おい! 誰か!」
マザーさんがそう言って配下の者に指示をした。
「は! 私が行きましょう。」
「じゃあ、頼んだぞ。」
「ギルガメシュ。別動隊へ襲撃してきた中に、ヴァン・テウタテスたちはいなかったか?」
そこにヘルシングさんがギルガメシュ兵長に尋ねた。
「いや。私は見てはいないが・・・。エンキドゥ! 君はどうだ?」
「いえ。ギルガメシュ様。私も見てはいません・・・。ヘルシング殿。だが、テウタテスたちは『赤の盗賊団』の被害者ではないか?」
「ああ。だが、ヤツラはどうも臭い。血の臭いがしたのだ。」
ギルガメシュ兵長が驚き、ヘルシングさんに聞く。
「それは、ヤツラが吸血鬼だと言いたいのですか?」
「まだ確証はない・・・。が、テウタテス、エスス、タラニスの三人は怪しいとオレは思う。」
「なるほど。では、これから向かうミトラ砦にヤツラもいるかもしれないですな。」
「ヘルシングさんも、やはりあのテウタテスたちが怪しいと見抜いていたんですね?」
「というと、ジン殿もか?」
「はい。あいつらが生き残っていることがすでにおかしかったんです。」
「それはどういうことだ?」
マザーさんがそこで質問をしてきた。
「ええ。あの妖精族のペッコくんは見逃されましたが、他には生き残ったものは今までいませんでしたよね?」
「ああ。たしかにな。だが、冒険者のウマヅラハギが犠牲になったから・・・というわけではないのか?」
マンさんがそう指摘する。
「たしかに。ですが、今まで生き残りがいなかったからこそ、その正体がつかめなかったのも事実ですよね? それほど『赤の盗賊団』は慎重に行動してきたということです。」
「なるほどな。それはそのとおりだな。テウタテスたちの時には三人も逃している・・・。『赤の盗賊団』にしては抜かり過ぎというわけか。」
グラウコーピスさんがそう賛同する。
「だが、それだけで怪しいとは断言できはせぬのではないか?」
今度はエリクトニオスが指摘した。
「それだけならそうですが、ペッコくんはこう証言しましたよね? 『む、おまえは悪い子ではねぇな・・・。いね、いね。』と言われて見逃されたと・・・。」
「そうだったな。たしかに、それはオレもなぜペッコのやつだけが見逃されたか疑問に思ったから尋ねたんだ。」
ヘルシングさんがそう付け加えた。
「そうです。つまり、ペッコくんは子供だったから見逃されたと。ならば、オトナのテウタテスたちが見逃されたのはおかしいんじゃないかと思ったんです。」
「それはたしかに怪しいな。すると、ヤツラはミトラ砦で待ち構えている公算が大だな。」
ツンさんがそう言って、ミトラ砦の方角を仰ぎ見た。
「すごいですね。ジンさんって、あの時にそんなことまで考えていたなんて! ねぇ? アテナ様。」
「ああ。誠にその観察眼には感服する。ジン殿。」
ニーケとアテナがオレをなんだか尊敬するような眼差しでじっと見てきたので、オレはなんだか照れくさくなってしまった。
「ジン様! それにしても、仕立て屋のヤツも絡んでいたって、どうしてわかったんですか?」
今度はジュニアくんがオレに質問をしてきた。
「おお! たしかジン様はテラーが怪しいとすでに見通していたんでございやしたね!?」
ジロキチもそう言ってさらに加えてくる・・・。
「なに!? ジン殿はどれほどの慧眼をお持ちなのか?」
出発の前には少し侮っていた様子のツンさんも今やオレに尊敬の念を抱いている様子でこちらを見ている・・・。
オレはこれ以上、みんなの注目を浴びるのが恥ずかしいなと思った。
「マスターはあの仕立て屋に最初に会った時、ワタクシに『あいつ・・・、なぜオレたちがサンドワームを倒したことを知っているんだ?』ってこうおっしゃったのです!」
「え? ああ! そういえば! たしか、ギルド長のアマイモンさんは情報を抑えていたって言ってましたね。」
「そうでやしたね。なるほど。たしかに言われてみれば、あの時、テラーのやつがその情報を知っているはずがなかったでやすね!?」
ジュニアくんとジロキチも気づいたようだ。
「ああ。そうだよ。犯人しか知り得ない事実ってやつだな。サンドワームは『赤の盗賊団』の魔法で操られていた。
で、サンドワームをオレたちが倒したっていうことは、あの時点では『楼蘭』にいた者か、ギルド関係者、それ以外は・・・『赤の盗賊団』の者だけだ。」
オレはそう、あの時、仕立て屋のヤツが『赤の盗賊団』の一味なんじゃないかと思ったんだ。
「すっげぇ! ジン様! かっけぇ!」
ジュニアくんのしっぽがぶんぶんに振られている。
「いや。初歩的な推理だよ。ワトソンくん。」
「え? いや、僕はカシムですけど・・・。」
「あ・・・あぁ。気にするな。」
シャーロック・ホームズのネタが通じないとは・・・。
「マザーさん。これからどうしますか?」
オレは話題を変え、これからの動きについてどうするか、この一団のリーダーであるマザー・グースカさんに聞いた。
「それについてだが、ここはジン殿。あなたに指揮を採ってもらいたいと思うのだが。」
「え? いやいや。オレなんて。ほら? まだ新人冒険者ですよ? それなら、ギルガメシュさんとかアテナさんとかもっと適任者はいるでしょう?」
「しかしだな。『赤の盗賊団』の奇襲もジン殿たちは見切っていたし、別動隊の全滅を免れたのはまさにジン殿一行のおかげだからな。適任かと思うのだ。」
「うーん・・・。困ったな。ただ情報をいち早く得られただけなんだけどな。」
「うむ。オレもジン殿なら適任だと思うぞ。」
ヘルシングさんもそう賛成してきた。
「私も賛成するわ。悔しいけど、私とパックが生き延びられたのは、ジン・・・さんたちの仲間の助けがあったからなのよ。」
「うん。トムもシドもジムも死んじまったので、おいらたちにはもうできることは少ないけど、援護くらいはさせてもらう。」
ベッキーとパックもそう言って賛成の意を示してきた。
「いやいや・・・。アテナさんでよくないです!? 身分も戦闘力も経験も申し分ないと思いますよ!」
オレはこういう何かのリーダーとかになるのが大の苦手なのだ。全力でお断りさせてもらいたい。
「ふむ。たしかに、ジン殿が適任かと私も思うのだが。」
アテナさんまでそう言ってきた・・・。
「いや! シバの女王様から任務を受けたのは、ギルガメシュさんですよね! なら、ギルガメシュさんが指揮を取るべきです!!いや間違いない!」
オレは断固たる決意で断った。
「むぅ・・・。そこまで言われるなら仕方ない。私が指揮を取ろう。だが、ぜひそのお力を貸してほしい。」
ギルガメシュさんが頭を下げた。
「いえいえ。頭を上げてくださいよ。オレもギルドの任務を受けてるんですよ。協力するのは当たり前ですから。」
なんとか、ギルガメシュ兵長がこの残った一団の指揮を執ることでまとまったようで、オレは内心ホッとしていたのだった―。
~続く~
★第33話の【読者への挑戦状】の回答編が今回の話で明らかになりました。
第17話『盗賊団のアジト』で仕立て屋テラーはなぜか知らないはずのことを喋っていました。
みなさんはおわかりでしたでしょうか?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる