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赤の盗賊団
第37話 赤の盗賊団 『ミトラ砦・攻城戦』
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ミトラ砦は、『エルフ国』のホッドミーミルの入り口付近にある。
『エルフ国』の戦争の防衛線であり、国境警備の砦であったのだ。
いまはその砦もあまり意味をなさなくなってきていて、さびれてしまっていた。
かつてミトラ砦は国境守備の前線基地となり、レッドキャップ種族がここでその生命をかけて戦ったのだ。
そして、今またこのミトラ砦をレッドキャップたちが死守すべく、守りを固めていた。
オレたちは竜馬を急がせ、ミトラ砦の正面に辿り着いた。
ギルガメシュ兵長を先頭に、みんながミトラ砦を見上げる。
森の中に巨大な崖があり、その上に築かれた天然の要害であるミトラ砦。
砦の門は高い位置にあり、そこまでの道のりは砦から狙われやすい・・・。
「静かだな・・・。」
アテナさんがそうつぶやいた。
「うむ。だが敵は待ち構えているだろう。ここはいかに進むべきか・・・。」
ギルガメシュ兵長も兵をほとんど失ったため、どうも攻めあぐねている様子だ。
「内部にどれだけの兵がいるかだな。」
マザー・グースカがそう言うと、アイが答えた。
「砦内部には、数は多くありません。全部で、15名。先の戦いでほとんどの者が戦闘に参加したものと推測致します。」
これにはみんなが驚いた。
「アイ殿は内部の敵の数がわかるのか!?」
「すごい・・・。索敵の魔法? いやスキルか?」
「ふむ。こちらの数は25名か。なるほど。数の利では有利ということか。だが、正面からでは狙い撃ちされるぞ?」
ヘルシングさんがそう指摘する。
「大丈夫ですよ。ね? マスター。」
え・・・? どういうこと?
(マスター。アラハバキとお呼びください。)
(あ! アラハバキか! なるほどね。わかった。)
オレはアラハバキを呼ぶ・・・って言っても、イシカもホノリもここにいるから、変身ってやつかな。
「アラハバキーーーーっ!!」
「イエス! ジン様! 承ったのである!」
「イエス! ジン様! 了解なのだ!」
イシカとホノリが二人声を合わせて返事をした。
「フュージョン!!」
と二人が叫んだ途端、周囲の超ナノテクマシンが巨大な機械のパーツとなって、どんどん合体していき、巨大な全長100mの超巨大土偶の姿になったのだ。
「な・・・なんだ!? これは? ゴーレムか!」
「そ・・・それにしても巨大な・・・。」
「ジン様! すっげぇ! 巨大ゴーレム! かっこいい!!」
みんながざわざわしている。
「では、ジン様。アラハバキの波動ビーム砲撃でやっちゃうゾ!?」
アラハバキがそう言ってきた。・・・ん? 波動ビーム砲撃って、アレか? あのものすごいレーザー砲だ。いやいや、あれをここで撃つと、森がヤバい!
「いやいやいや! もうちょっと手加減したヤツで頼む!」
オレはあわててアラハバキに指示を出した。
まわりにいるギルガメシュ兵長やアテナさんたちが、目を丸くして、オレとアラハバキを交互に見ている・・・。
ええい。もういいや。やっちゃえ!
「了解した。」
アラハバキはそう答えると、ミトラ砦の正面の門(さっきまでは高い位置にあり難攻不落かと思われたが、今やアラハバキが見下ろしている・・・。)を前かがみで掴んだ。
バキバキバキッ! メキメキメキ! グワシャーーッン!!
ものすごい轟音とともに、アラハバキが単なる腕力で砦の門をぶっ壊した。
「うわぁあああっ!」
「ぐわっ!!」
「ぎゃふっ!!」
門の内側で門を守っていたであろうレッドキャップたちが瓦礫に埋もれてしまった・・・。
「ジン様。これで入りやすくなりました。どうぞ。」
巨大な手をさっと前に差し出して、まるで召使いが主人を案内するかのように、その入口を指し示すアラハバキだった。
そして、アラハバキが見ている間に、シュルシュルと音を立てて縮んでいき、元の双子のセーラー服姿に戻った。
ミトラ砦の正面はすでに廃墟のように瓦礫いっぱいになっている。
廃墟の前に女子高生・・・。 うーん。なんとシュールな・・。
「ジン殿・・・。とりあえず、行くとしようではないか。なぁ? エリクトニオス。」
「そ・・・そうですね。アテナ様。ジン殿、ご尽力、感謝致す。」
「あ・・・アテナ様。よかったですね。これで進めますね。」
「とてつもないゴーレムをお持ちですな・・・。参りましょうぞ。」
ニーケとグラウコーピスもそう言って先を進もうとする。
「なぁ・・・。我が友エンキドゥよ。」
「なんだ? 我が友ギルガメシュよ。」
「これ・・・最初からジン殿たちに任せていたらよかったんじゃね?」
「・・・ん。みなまで言うな。ギルガメシュ。」
エンキドゥとギルガメシュが呆けた顔をしつつ、前に進みだした。
「砦を壊さなかったのは賢明だな。ヤツラに逃げられても困るからな。」
ヘルシングさんは、いつもと変わらず冷静にそう告げ、前に進んだ。
「イシカ様もホノリ様もすっごい!すっごい!」
ジュニアくんは興奮してまたしっぽをぶんぶんに振っていた。ちぎれそうだぞ。あまり振り回すと・・・。
「これが、あのサンドワームを一撃で倒したというゴーレムなんでやすね。まさかイシカ様とホノリ様が変化したお姿だったとは・・・。」
ジロキチもさすがに驚いた様子だった。
しかし、もっと驚いてる者がいた。
あまりにも驚きすぎたため、目が見開いてまんまるになってしまっている妖精族の二人・・・。
「ぱ・・・ぱぱぱ・・・パック? これって夢かしら?」
「そ・・・そそそ・・・そうかもしれません。ベッキー様。」
「と・・・とりあえず、進みましょうか?パック。」
「ででで・・・ですね。ベッキー様。」
「では、ワタクシたちも行きましょう。マスター。」
「ああ。行くぞ。みんな。」
「了解でございます。ご主人様。」
「あいあいあーい。行くよー。」
「行くのである!」
「行くなのだ!」
オレたち一行も砦の中へ進むのだった。
とにもかくにも、オレたちは正面から堂々と、砦の中に入ることに成功した。
レッドキャップたちは門の前で守っていた者たち以外はまだ姿を現さなかった―。
◇◇◇◇
ミトラ砦の3階にある最奥の間、もともとはレッド・キャプテンがいつもいた部屋だったが、そこに今はサタン・クロース、レッド・マント、仕立て屋テラー、それと―。
ヴァン神族の三人が集まっていた。
「コレをやるしかもはや・・・あなた方も手はないんじゃあないですか? 元には戻れませんがね・・・。」
ヴァン・テウタテスがサタン・クロースに問う。
「ああ。たしかにな。ゾンビでもやつらはまったく歯が立たなかった。もはやこれまでだな。」
「わったくしぃぬぉ!ぬぉ! くわわいいゾンビたちがっ!! 役立たずずだとだとだと! 言うのですくわっ!?」
「いや。ヤツラがとてつもなく強い・・・。そういうことだろなぁ。」
「サタン様の言う通り。我が刃もヤツラに届かなかったのだ。」
「では、失礼して血を吸わせていただく。そして我ら不死の者の血と交換することで、サタン様も吸血鬼のチカラを得ることができる!」
ヴァン・テウタテスはそう言い、サタンの手を取り噛み付いたのだった。
「では、我も。」
「同じく。」
同じようにヴァン・エススが、レッド・マントの手から血を吸い、ヴァン・タラニスがテラーの血を吸い、全員が吸血鬼化した。
すると、みなの目がらんらんと輝き、口からは牙が生え、吸血鬼となったのだ。
「最後の決戦だ。不条理なヤツラに死の鉄槌を!!」
「おおおおおおおおおぉ!!」
吸血鬼たちは砦に侵入してきた者たちを迎え撃つべく、向かっていくのだった―。
~続く~
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