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第6日目
第41話 到着6日目・朝その2
しおりを挟む※『或雪山山荘』3階・見取り図
『或雪山山荘』の『左翼の塔』側、3階へ私たちは移動しました。
その館内はシーンと静まり返っていました。
とにかく、そのまま、ママハッハさんと……、おそらく一緒にいるはずのアネノさんの安否を確認しに行きました。
コンコンコンコンッ……
ジェニー警視がママハッハさんの部屋の扉をノックした。
銀の粉が舞い散った。
返事がない……。
「あーあー! おはようございます! ママハッハさん。ジェニーです! ご無事でいらっしゃいますか!?」
ジェニー警視が声をかけた。
「ママハッハさん! アネノさん! キノノウです! 返事をしてください!」
「ママハッハ様! シュジイです。体調はいかがでしょうか? 部屋の扉を開けてください!」
コンジ先生も、シュジイ医師も一緒に呼びかける。
どんどんどんどんっ!!
少し乱暴にコンジ先生が扉を叩いた。
……が、やはりママハッハさんやアネノさんの返事は返ってこなかった。
「ま……、まだ寝ているのでしょうか?」
私はおそるおそる声を出した。
「いや……。今、この部屋の扉を叩いた際、アレクサンダー神父が昨日、扉に振りかけていた『聖なる結界』とやらの『銀の粉』が舞い散ったのが確認できた。つまり、この扉は昨夜から今朝の今まで開かれていない……ということを意味している。」
「なら、どうして、返事してくれないのでしょう?」
「うーむ。私たちを警戒されているのではないか? なあ? キノノウくん。」
「まあ、昨日の彼女らの様子からすると、部屋に立てこもっているというのは十分に考えられるとは思いますが……。返事がないのが気にかかりますね。」
「たしかに……ですね。もしかしたら奥様になにか発作でも起きたのでしょうか?」
「シュジイ医師。ママハッハさんはなにかそういった持病をお持ちだったのですか?」
コンジ先生がシュジイ医師に確認をした。
「いえ……。少し血圧は高めではございましたが、特にそういった持病はありませんです。」
「むぅ……。そうなると、ますます、おかしいな? なあ? キノノウくん。私は、念の為、この部屋の鍵が、警備室かカンさんの部屋、あるいはシープさんの部屋にないか確認してくるわ! ジョシュアくん! 一緒に来てくれるか?」
「はい。わかりました。」
私は二つ返事をして、ジェニー警視と一緒にママハッハさんの部屋の鍵が保管されているか、確認しに行くことにした。
まあ、もちろん……、鍵はそれぞれが持っているはずなので、ママハッハさんとアネノさんが部屋の中にいるならば、鍵も部屋の中にあるってことになってしまうのですけどね。
どんどんどんどんっ!
「アネノさんっ! 起きていらっしゃいますか!?」
コンジ先生がアネノさんの部屋の扉を叩いた。
が、やはり返事はなく、扉も開かなかった。
どんどんどんどんっ!
ガチャリ!
ジジョーノさんの部屋の扉はあっさりと開いた。
「うむ。やはりジジョーノさんの部屋も誰もいないか?」
だが、ジジョーノさんの姿はやはりなく、部屋は整然としていた。
ジジョーノさんはイーロウさんとパパデスさんが亡くなった時から、行方がわからなくなってしまっているのだ。
部屋の窓の外は、吹雪で、『右翼の塔』側の部屋が、見えにくくなっていた。
「じゃあ、あっしたちはどうしましょうか?」
メッシュさんがコンジ先生に指示を仰ごうとする。
「ふむ。このまま、ここでシュジイ医師と一緒にママハッハさんとアネノさんを呼び続けていてください。仮にママハッハさんが病気だったとしても……。アネノさんまで一緒に返事がないのは、やはりなにかおかしい……。」
「わかりました。キノノウ様はどうなされるんで?」
「僕は、これから、ジニアスさんとスエノさんを確認しに行ってきます。」
「お……、お一人でですか……?」
シュジイ医師が不安そうにコンジ先生に尋ねた。
「大丈夫でしょう! 今はもう人狼の活動時間ではありません! 特に警戒する必要はないと思われます。」
「そ、それなら安心ですね。そうおっしゃられて、私もホッとしました。」
「ええ。じゃあ、引き続き、呼びかけをお願いしますね?」
「かしこまりました。」
コンジ先生は一人で、ジニアスさんの部屋に向かった。
****
ここからは、私ジョシュアとコンジ先生は別行動のため、後からコンジ先生からお聞きしたものをまとめて書いています。
私達と別行動になったコンジ先生は、ジニアスさんの部屋へ向かう際、なぜか階段を使わず、エレベーターを利用したというのです。
いや、普通、急ぎの時って、階段を利用しませんか……!?
だけど……。
このコンジ先生の何気ない行動が、意外な発見につながったのです。
後から振り返ると、コンジ先生の鋭い嗅覚が何かを感じ取っていたのかも知れません。
エレバーター内に入った瞬間に、コンジ先生は床についたわずかな血痕と、何かの異臭を感じ取りました。
「なんだ‥…? 血……か! そして、かすかに腐敗臭……?」
コンジ先生は、床、壁、扉とすばやく見渡し、最後に天井を見上げました。
エレベーターの天井には、点検用の天窓があるのですが、そこから、かすかに血が滴っていました。
コンジ先生は、迷わず、天窓を押し上げて開こうと手を伸ばしました……が、長身で身長185cmあるコンジ先生ですが、さすがに天窓までは手が届く程度で、押し上げて開くまでには行かなかったのです。
そこで、コンジ先生は2階に着いたところで、外に出て、エレベーターをそのまま開きっぱなしにしておいて、ジニアスさんの部屋に先に向かったのです。
「ジニアスさん! スエノさんも一緒ですか!?」
ジニアスさんの部屋の扉の外から声をかける。
部屋の中から返事が聞こえる。
「はい! キノノウさんですね? 無事でいらっしゃいましたか?」
「キノノウ先生! ヤダ……。どうして私もいるとおわかりになったんです?」
「いや! 今はそんなことはどうでもいい。ジニアスさん! ちょっと一緒に来てください!」
「え……? まさか……。なにか、あったんですか?」
「そんな……!? 昨夜はみなさん、アレクサンダー神父の『聖なる結界』で守られていたのではないのでしょう!?」
「とにかく! エレベーターに一緒に来てください!」
そこで、コンジ先生とジニアスさん、スエノさんは一緒に、『左翼の塔』側2階に留まっていたエレベーターに駆けつけたのでした。
再度、コンジ先生が、ジニアスさんとともにエレベーター内に入り、身長が197cmもあって現役のサッカー選手で体力とチカラがあるジニアスさんに身体を抱えあげてもらい、コンジ先生が天窓を押し上げて、エレベーターの上を確認したのです。
もっとも、ジニアスさんであれば天窓まで手も届いたのでしょうが……、コンジ先生は自身で確かめたかったのでしょうね。
そして……!
天窓を押し上げると……。
ぽたり……
ぽたり……
血が垂れ落ちてきます。
エレベーターの上にナニカがあります。
いえ……。
誰かがあった……と言うべきでしょうか?
そう。
何者かの惨たらしく惨殺された死体がそこにあったのです!
コンジ先生は躊躇なく、その死体を掴み、天窓からエレベーター内に引きずり下ろしました。
ドサリ……
「ひぃ!? な、なんですか!? ……って、これは!?」
ジニアスさんがその落ちてきたナニカに驚き、声を上げました。
「ジジョーノ姉さま……。」
エレベーターの外から、コンジ先生たちの行動を見守っていたスエノさんが、ぼそりとつぶやきました。
そうです。
コンジ先生が引きずり落とした死体は、ジジョーノさんの死体だったのです。
「スエノさん! この遺体はジジョーノさんで間違いありませんか?」
「は……はい。顔があまり損傷されてないようで、ジジョーノ姉さまに間違いありません……。ですが、いったいどうして……!? 姉さま……。」
スエノさんはショックのあまり、呆然としていました。
「ふむ……。死後硬直がいったん起きてから、腐敗が進んだために硬直が今は解けているようだな……。つまり、死後1日以上は確実に経過しているということだ。」
コンジ先生が、さらりと言ってのけたのであります。
ジジョーノさんは、やはり行方不明となった時には殺されていた……と考えるのが自然なのでしょうか?
この発見により、人狼がジジョーノさんに化けて、どこかに潜んでいたということは否定されたのであります。
~続く~
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