【読者への挑戦状あり!】化け物殺人事件~人狼伝説・狼の哭く夜~

あっちゅまん

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第6日目

第40話 到着6日目・朝

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 私、ジョシュアとコンジ先生がこの『或雪山山荘』に到着して6日目の朝を迎えました。

 この日は何事もなく、無事にみんなが朝を迎えている……はずでした。

 というのも、アレクサンダー神父の『聖なる結界』を各部屋の扉に……、といっても、『銀の粉』を扉の外側に振りかけただけでしたが、それでも人狼の苦手とする物質であり、本能のままに動いている人狼にとって、苦手なものは避けるはずでした。

 もともとはケダモノなのですから……。



 何事もなく朝が来た……。

 そう思っていたのも無理からぬ事でしょう?

 メッシュさんも朝食は朝に用意せず、前日、作り置きして済ませるということにしていましたから、部屋の外にまだ誰も出ていないはず……。



 私は腕時計で時間を確認した。

 8時ー。

 窓から見える外の景色は相変わらずの吹雪が舞い荒れていました。

 窓から差す陽の光は強くありませんが明るくなっているのが感じられました。



 「人狼の活動時間は終わったよね?」

 私はそう思い、部屋の扉をそっと開けて廊下の様子を伺いました。

 廊下もしんと静まり返っていて、特に何も変わった様子はありません。


 とにかくコンジ先生の部屋をノックする。


 コンコン、コココン……。



 「ふむ。ジョシュア。君か? まあ、無事で何よりと言ったところだな。」

 「コンジ先生もお変わりないようで……。」

 「まあな? さすがに今日は人狼も何もしてはいまいよ。」

 「私もそうと思いますよ。」

 「人狼は所詮は野生の生き物だからな。外の世界に戻ったのやもしれん……。残念だがな。」

 「コンジ先生ってば……。まだ人狼を捕らえることを諦めていなかったんですね?」

 「あったりまえだろ!? それが目的なんだからさ。目的を忘れることは、愚かな人間にもっともありがちなことだ。……とかのニーチェも言っている。」




 コンジ先生……、ホント、変わってますよね?

 こういう『化け物』にしか興味ないのかしら……。





 「わかりましたよ。じゃあ、メッシュさんのところへ行きましょうよ!」

 「ああ。ジョシュア。君は早く朝食を食べたいだけだろう?」

 「悪いですか? 健康な肉体は健全な食事から始まる……っていうじゃあありませんか?」

 「君……。それを言うなら健全な精神は健全な肉体に宿る……だよ?」



 私たちが部屋の外に出たところで、ジェニー警視がちょうど部屋から外に出てきました。

 「やあ! おはよう! キノノウくん。ジョシュアくん。君たちも今起きたのか?」

 「ええ。やはり、陽の光が出てから出なければ、安心とは言えませんからね?」

 「そうですね。でもコンジ先生は人狼を捕まえたいんじゃあないのですか? なら、夜、行動されたほうがいいのではないです?」

 「ば……、バカなことを言うなよ! ジョシュア! いいかい? 人狼にとって夜間は最も大きく能力を発揮できる時間帯なんだぜ? そこで争ってどうするんだよ……。人狼の正体をこの素晴らしい頭脳で突き止め、ヤツの苦手とする昼間の時間帯に捕まえるのが最も効率がいいんだよ。『君子危うきに近寄らず』や『瓜田に履を納れず』、『李下に冠を正さず』という言葉を知らないのかい? 原文は漢文で『君子防未然 不處嫌疑間 瓜田不納履 李下不正冠』という「古楽府」という中国古典詩にある『君子行』の一節なんだが……。まったく……。君ってやつは本当に浅はかなんだからなぁ。 ぜ……、ぜんぜんビビってるとかそういうんじゃあないんだからな!?」

 「はいはい。わっかりましたよぉ!」



 私たちはまず、同じ『右翼の塔』側1階のメッシュさんの部屋に向かいました。

 メッシュさんの部屋の扉を私がノックする。


 コンコン、コココン……。



 「へい! どなたですかい?」

 「メッシュさん! ジョシュアです!」

 「ジェニーです! メッシュさん、無事ですか?」

 「ああ。お二人いらっしゃるんですね。じゃあ、安心だな。ちょっとお待ちを……。」



 メッシュさんは一人で誰かが訪ねて来たのであれば、部屋の扉を開けないつもりだった様子でした。

 まあ、警戒するに越したこと無いですからね。

 メッシュさんが部屋の扉を開け、顔を見せました。



 「おはようございます! おっと! キノノウ様もいましたんですねぇ。みなさん、お揃いで、無事で何よりですぜ。」

 「ああ。メッシュさん。あなたも無事のようで良かった。あなたの料理は筆舌に尽くしがたいほど素晴らしいのでな。またぜひしっかりとした料理を味あわせていただきたいからな。」

 「そ、それはもう! もちろんですぜ!」



 つか、コンジ先生、メッシュさん自身の心配より、メッシュさんの料理が食べられなくなることの心配をされてたんですか!

 まったく……。

 さすがはコンジ先生ですね。

 いつでもブレませんねぇ……。



 「ん……? なにか言ったか? ジョシュア。」

 「え? いえいえ……。何も言ってませんよぉ!」


 なんて鋭いのかしら?

 心の中でも読まれたの!?



 「キノノウくん。飯の心配よりまず、みんなの安否を確認しようじゃあないか?」

 「おっしゃるとおりです。ジェニー警視。それを今、僕が言おうとしていたところですよ? You took the words right out of my mouth! ジェニー警視、あなたはシンクロニシティを引き起こしたのですよ? いいですか……? シンクロニシティとは、ユングが提唱した概念で『意味のある偶然の一致』を指し、日本語では主に『共時性』と訳され、他にも『同時性』もしくは『同時発生』と訳され場合もある。例えば、虫の知らせのようなもので因果関係がない2つの事象が、類似性と近接性を持つこと。ユングはこれを『非因果的連関の原理』と呼びました。……そこでですね……。」

 「ああ! わかったよ。キノノウくん。みなまで言わなくていい……。」

 どうやら、ジェニー警視もこの短い期間にコンジ先生の性格を掴んでしまわれたようですね。



 私たちはそろって、次は同じ『右翼の塔』側の3階にあるシュジイ医師の部屋に向かいました。

 シュジイ医師もやはり、メッシュさん同様に、複数の声が聞こえて初めて部屋の扉を開けてくれました。


 「おはようございます。皆さま、お変わりなく良かったです。ん? メッシュ。怪我の具合はどうだね?」

 「へぇ。まあ、痛みは少しありますが、まあ、大丈夫ですぜ。」

 「何よりですな。」



 「えっと……。スエノさんは……。」

 「ジョシュア。おそらく彼女は自分の部屋にはいないよ。ジニアスさんの部屋だろうね。彼女と彼はもうそういう仲なんだよ。」

 「あ……。コンジ先生もそういうのわかるんですね?」

 「なんだよ? 君、僕がそういうのわからないとでも思ってたのかい? 僕は恋愛コンシェルジュって呼ばれてるくらいなんだぜ?」


 ……どこの誰にですか……?



 でも、そうすると、この『右翼の塔』側には、もう誰もいない……のですね。

 管理人のカンさん、アイティさん、ビジューさん、シープさん、パパデスさん……。

 もう亡くなられたり、行方がわからなくなってしまったりなんですね。



 「じゃあ、『左翼の塔』側のジニアスさんや、おそらくは一緒であろうスエノさん、ママハッハさん、アネノさん、アレクサンダー神父を起こしに行くか!?」

 ジェニー警視も現在、今、生きている人を確認するかのように言った。



 このまま、3階の廊下を通って、談話室や書斎、遊戯室の前の廊下を通って、『左翼の塔』側へ向かう私たちでした。

 しかし、この時はまだ、これから発見する惨劇を予想していた者は誰もいなかったのでした。


 そう……。

 黄金の頭脳を持つと言われるコンジ先生でさえ、まさか、『左翼の塔』側で、あのような恐ろしい惨劇が行われていたとは、予想できるはずもありませんでした。




 そうなんです。

 人狼によって行われてきた連続する悲劇はまだ繰り返されていたのでした。




 ビュォオオオォ……


 館の外からは、激しく風巻く吹雪の音だけが低く、ゴォゴォと響いていたのでしたー。




 私たちがこの『或雪山山荘』に到着して6日目の朝は、ここからが長く感じられたのであります-。





 ~続く~




※「You took the words right out of my mouth!」
「今まさにそれを言おうとしていたところなんだ。」という意味です。
自分がちょうど考えていたことを相手が口にした瞬間に出る表現です。
※シンクロニシティ
コンジの説明通り、ユングが提唱した概念で『意味のある偶然の一致』を指し、日本語では主に『共時性』と訳され、他にも『同時性』もしくは『同時発生』と訳され場合もある。例えば、虫の知らせのようなもので因果関係がない2つの事象が、類似性と近接性を持つこと。ユングはこれを『非因果的連関の原理』と呼んだ。






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