46 / 62
第6日目
第41話 到着6日目・朝その2
しおりを挟む※『或雪山山荘』3階・見取り図
『或雪山山荘』の『左翼の塔』側、3階へ私たちは移動しました。
その館内はシーンと静まり返っていました。
とにかく、そのまま、ママハッハさんと……、おそらく一緒にいるはずのアネノさんの安否を確認しに行きました。
コンコンコンコンッ……
ジェニー警視がママハッハさんの部屋の扉をノックした。
銀の粉が舞い散った。
返事がない……。
「あーあー! おはようございます! ママハッハさん。ジェニーです! ご無事でいらっしゃいますか!?」
ジェニー警視が声をかけた。
「ママハッハさん! アネノさん! キノノウです! 返事をしてください!」
「ママハッハ様! シュジイです。体調はいかがでしょうか? 部屋の扉を開けてください!」
コンジ先生も、シュジイ医師も一緒に呼びかける。
どんどんどんどんっ!!
少し乱暴にコンジ先生が扉を叩いた。
……が、やはりママハッハさんやアネノさんの返事は返ってこなかった。
「ま……、まだ寝ているのでしょうか?」
私はおそるおそる声を出した。
「いや……。今、この部屋の扉を叩いた際、アレクサンダー神父が昨日、扉に振りかけていた『聖なる結界』とやらの『銀の粉』が舞い散ったのが確認できた。つまり、この扉は昨夜から今朝の今まで開かれていない……ということを意味している。」
「なら、どうして、返事してくれないのでしょう?」
「うーむ。私たちを警戒されているのではないか? なあ? キノノウくん。」
「まあ、昨日の彼女らの様子からすると、部屋に立てこもっているというのは十分に考えられるとは思いますが……。返事がないのが気にかかりますね。」
「たしかに……ですね。もしかしたら奥様になにか発作でも起きたのでしょうか?」
「シュジイ医師。ママハッハさんはなにかそういった持病をお持ちだったのですか?」
コンジ先生がシュジイ医師に確認をした。
「いえ……。少し血圧は高めではございましたが、特にそういった持病はありませんです。」
「むぅ……。そうなると、ますます、おかしいな? なあ? キノノウくん。私は、念の為、この部屋の鍵が、警備室かカンさんの部屋、あるいはシープさんの部屋にないか確認してくるわ! ジョシュアくん! 一緒に来てくれるか?」
「はい。わかりました。」
私は二つ返事をして、ジェニー警視と一緒にママハッハさんの部屋の鍵が保管されているか、確認しに行くことにした。
まあ、もちろん……、鍵はそれぞれが持っているはずなので、ママハッハさんとアネノさんが部屋の中にいるならば、鍵も部屋の中にあるってことになってしまうのですけどね。
どんどんどんどんっ!
「アネノさんっ! 起きていらっしゃいますか!?」
コンジ先生がアネノさんの部屋の扉を叩いた。
が、やはり返事はなく、扉も開かなかった。
どんどんどんどんっ!
ガチャリ!
ジジョーノさんの部屋の扉はあっさりと開いた。
「うむ。やはりジジョーノさんの部屋も誰もいないか?」
だが、ジジョーノさんの姿はやはりなく、部屋は整然としていた。
ジジョーノさんはイーロウさんとパパデスさんが亡くなった時から、行方がわからなくなってしまっているのだ。
部屋の窓の外は、吹雪で、『右翼の塔』側の部屋が、見えにくくなっていた。
「じゃあ、あっしたちはどうしましょうか?」
メッシュさんがコンジ先生に指示を仰ごうとする。
「ふむ。このまま、ここでシュジイ医師と一緒にママハッハさんとアネノさんを呼び続けていてください。仮にママハッハさんが病気だったとしても……。アネノさんまで一緒に返事がないのは、やはりなにかおかしい……。」
「わかりました。キノノウ様はどうなされるんで?」
「僕は、これから、ジニアスさんとスエノさんを確認しに行ってきます。」
「お……、お一人でですか……?」
シュジイ医師が不安そうにコンジ先生に尋ねた。
「大丈夫でしょう! 今はもう人狼の活動時間ではありません! 特に警戒する必要はないと思われます。」
「そ、それなら安心ですね。そうおっしゃられて、私もホッとしました。」
「ええ。じゃあ、引き続き、呼びかけをお願いしますね?」
「かしこまりました。」
コンジ先生は一人で、ジニアスさんの部屋に向かった。
****
ここからは、私ジョシュアとコンジ先生は別行動のため、後からコンジ先生からお聞きしたものをまとめて書いています。
私達と別行動になったコンジ先生は、ジニアスさんの部屋へ向かう際、なぜか階段を使わず、エレベーターを利用したというのです。
いや、普通、急ぎの時って、階段を利用しませんか……!?
だけど……。
このコンジ先生の何気ない行動が、意外な発見につながったのです。
後から振り返ると、コンジ先生の鋭い嗅覚が何かを感じ取っていたのかも知れません。
エレバーター内に入った瞬間に、コンジ先生は床についたわずかな血痕と、何かの異臭を感じ取りました。
「なんだ‥…? 血……か! そして、かすかに腐敗臭……?」
コンジ先生は、床、壁、扉とすばやく見渡し、最後に天井を見上げました。
エレベーターの天井には、点検用の天窓があるのですが、そこから、かすかに血が滴っていました。
コンジ先生は、迷わず、天窓を押し上げて開こうと手を伸ばしました……が、長身で身長185cmあるコンジ先生ですが、さすがに天窓までは手が届く程度で、押し上げて開くまでには行かなかったのです。
そこで、コンジ先生は2階に着いたところで、外に出て、エレベーターをそのまま開きっぱなしにしておいて、ジニアスさんの部屋に先に向かったのです。
「ジニアスさん! スエノさんも一緒ですか!?」
ジニアスさんの部屋の扉の外から声をかける。
部屋の中から返事が聞こえる。
「はい! キノノウさんですね? 無事でいらっしゃいましたか?」
「キノノウ先生! ヤダ……。どうして私もいるとおわかりになったんです?」
「いや! 今はそんなことはどうでもいい。ジニアスさん! ちょっと一緒に来てください!」
「え……? まさか……。なにか、あったんですか?」
「そんな……!? 昨夜はみなさん、アレクサンダー神父の『聖なる結界』で守られていたのではないのでしょう!?」
「とにかく! エレベーターに一緒に来てください!」
そこで、コンジ先生とジニアスさん、スエノさんは一緒に、『左翼の塔』側2階に留まっていたエレベーターに駆けつけたのでした。
再度、コンジ先生が、ジニアスさんとともにエレベーター内に入り、身長が197cmもあって現役のサッカー選手で体力とチカラがあるジニアスさんに身体を抱えあげてもらい、コンジ先生が天窓を押し上げて、エレベーターの上を確認したのです。
もっとも、ジニアスさんであれば天窓まで手も届いたのでしょうが……、コンジ先生は自身で確かめたかったのでしょうね。
そして……!
天窓を押し上げると……。
ぽたり……
ぽたり……
血が垂れ落ちてきます。
エレベーターの上にナニカがあります。
いえ……。
誰かがあった……と言うべきでしょうか?
そう。
何者かの惨たらしく惨殺された死体がそこにあったのです!
コンジ先生は躊躇なく、その死体を掴み、天窓からエレベーター内に引きずり下ろしました。
ドサリ……
「ひぃ!? な、なんですか!? ……って、これは!?」
ジニアスさんがその落ちてきたナニカに驚き、声を上げました。
「ジジョーノ姉さま……。」
エレベーターの外から、コンジ先生たちの行動を見守っていたスエノさんが、ぼそりとつぶやきました。
そうです。
コンジ先生が引きずり落とした死体は、ジジョーノさんの死体だったのです。
「スエノさん! この遺体はジジョーノさんで間違いありませんか?」
「は……はい。顔があまり損傷されてないようで、ジジョーノ姉さまに間違いありません……。ですが、いったいどうして……!? 姉さま……。」
スエノさんはショックのあまり、呆然としていました。
「ふむ……。死後硬直がいったん起きてから、腐敗が進んだために硬直が今は解けているようだな……。つまり、死後1日以上は確実に経過しているということだ。」
コンジ先生が、さらりと言ってのけたのであります。
ジジョーノさんは、やはり行方不明となった時には殺されていた……と考えるのが自然なのでしょうか?
この発見により、人狼がジジョーノさんに化けて、どこかに潜んでいたということは否定されたのであります。
~続く~
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】結界守護者の憂鬱なあやかし幻境譚 ~平凡な男子高校生、今日から結界を繕います~
御崎菟翔
キャラ文芸
【平凡な高校生 × 妖従者たちが紡ぐ、絆と成長の主従現代和風ファンタジー!】
「選ぶのはお前だ」
――そう言われても、もう引き返せない。
ごく普通の高校生・奏太(そうた)は、夏休みのある日、本家から奇妙な呼び出しを受ける。
そこで待っていたのは、人の言葉を話す蝶・汐(うしお)と、大鷲・亘(わたり)。
彼らに告げられたのは、人界と異界を隔てる結界を修復する「守り手」という、一族に伝わる秘密の役目だった。
「嫌なら断ってもいい」と言われたものの、放置すれば友人が、家族が、町が危険に晒される。
なし崩し的に役目を引き受けた奏太は、夜な夜な大鷲の背に乗り、廃校や心霊スポットへ「出勤」することに!
小生意気な妖たちに絡まれ、毒を吐く蛙と戦い、ついには異世界「妖界」での政変にまで巻き込まれていく奏太。
その過程で彼は、一族が隠し続けてきた「残酷な真実」と、従姉・結(ゆい)の悲しい運命を知ることになる――
これは、後に「秩序の神」と呼ばれる青年が、まだ「ただの人間」だった頃の、始まりの物語。
★新作『蜻蛉商会のヒトガミ様』
この物語から300年後……神様になった奏太の物語も公開中!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/174241108/158016858
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」
(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。
王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。
風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
