記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第8章 気付き始めた思い

第97話 兄妹

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 ボクには二人の兄がいる。普段は滅多に会わないが、ボクが連絡を入れると事前に約束した場所にすぐ来てくれた。
 ボクの呼び出しなんて珍しいからかな? 二人とも心配してくれたようだ。持つべきものは家族だね。

 ボクは二人にこの苦しみを打ち明け、それが何なのかを尋ねた。


「さあ、教えてくれないかな? この胸の苦しみはなんだと思う? ジフ兄、シシ兄」

「リョウが急に連絡してくるから何事かと思ったけど、そんなことかよ!?」
「俺、帰ってええか? 俺がジフウの兄貴やリョウに会ってると色々まずいんやが?」
「お前はめんどくさいだけだろが! シシバ!」

 そう! ボクの兄である黒蛇部隊隊長のジフウとギャングレオ盗賊団頭領のシシバという人の上に立つ人間ならば、この苦しみの正体も分かるはずだよね!

「めんどくさいっちゅうよりは呆れとる。こいつ普段は欲望に忠実なくせに、なんでこないなことには鈍感やねん」
「言いたいことは分かるが、こいつは変な所で感情をコントロールできないからな」

 話を聞き終わった二人はなんだかすごく呆れている。でもジフ兄の発言から一つ分かったね。この苦しみは感情から来るもののようだ。

「くそ……。こっちは陛下の命令やら殿下の帰還やらで忙しいってのに……。ボリボリ」
「さっきから何ボリボリ食うとるんや、兄貴は?」
「……胃薬」

 ジフ兄はお腹の調子が悪いのかな? 胃薬をそんなに口に含んだら逆効果だと思うけど?

「それにしても、まさかリョウがゼロラとね~……」
「俺はそのゼロラはんってのと会ったことないんやが、確かサイバラの奴が戦って負けたって言うてたな」
「サイバラってどいつだったっけ?」
「ウチの特攻隊長。グラサン半裸」
「ああ、あの相撲取りか」

 ボクの相談に来たのに二人だけで盛り上がらないでほしいな。でも二人とも原因は分かってるみたいだね。

「二人とも分かったみたいだね? ではズバリ教えてほしい」
「そら"恋"や、"恋"」

 "恋"……。ボクがゼロラ殿に恋してるということかな?
 ありえない……いや、今の僕にはシシ兄の言うこともありえなくない。

 かわいい少年少女を愛でる感情とは違う。ただ追うのではなく、傍にいたいと思うこの感情が"恋"なのか。

「クフフ……クフフフフ……! そうか……これがマカロンちゃんも抱いている感情か……! これは気づかなくても仕方ないかな? クハハハハハ!」
「リョウが壊れた」
「いつものこっちゃろ」

 面白い……面白いよ! ゼロラ殿!
 ボクはこの感情を受け入れよう! ボクはマカロンちゃんのようにまどろっこしいことは嫌いなんだ。そうと決まれば早速準備が必要だね!

「ジフ兄もシシ兄もありがとう! ボクにはこれからやることができたから、失礼するよ! クハハハハハ!」

 こうしてはいられない! ボク自身がこの感情を理解してしまった以上、ボクはこの感情に従って動かせてもらうよ!

 ダダダダダ!

◇◇◇

「……リョウの奴、納得したらしたで速攻で出ていきやがった」
「ええんちゃう? あいつは欲望に忠実なんがスタンダードや」

 俺とジフウの兄貴はリョウが出ていくのを眺めながらだべってた。
 しっかしあのリョウが恋とはな~。そないにゼロラはんってのは魅力的なんか?

「なあ、兄貴。ゼロラはんってのは実際どないな奴なんや?」
「俺も最近知り合ったばかりだ。ただ、喧嘩の腕は相当立つ」

 ……ほ~う。それは聞き捨てならへんな。

「どのぐらい強いんや?」
「お互い手加減してたが、俺と互角にやりあえる。最近じゃパンクタイガーを倒した」
「パンクタイガーって、兄貴が倒したコマンドラゴンと同じぐらい強いっちゅう、あの?」

 そら~、ますますおもろそうな男やな~。

「今は何しとるんや?」
「ガルペラ侯爵と一緒にこの国の改革活動を……って、これは言い過ぎか」

 兄貴も俺には口が軽うて助かるわ。せやけど噂に聞いとったガルペラ侯爵の改革活動にも加わっとるんか。

「ええこと思いついた」
「嫌な予感しかしない……。"国王直轄黒蛇部隊隊長"としては止めたいんだが? お前らギャングレオ盗賊団は俺が陛下に目こぼししてもらってるってことを忘れるなよ?」
「んなもん、百も承知や。それに俺らギャングレオ盗賊団が"何のために存在してるのか"は陛下も承知なんやろ?」
「まあ……ある程度は……」

 ゼロラはんがガルペラ侯爵とつるんでるんやったら、これはギャングレオ盗賊団としても待ちに待ったチャンスや。

「おもろなるでぇ……! ギャングレオ盗賊団結成以来の大一番や! キシシシシ!」
「はぁ……胃が痛い。ボリボリ」
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