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第11章 騎士に巻き付く龍の尾の蛇
第148話 バクトの策
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「バルカウス! なぜ今回の作戦を失敗したのですか!? レーコ公爵の顔に泥を塗るつもりですか!?」
「……すまない」
レーコ公爵邸でバルカウスはリフィーに責任を問われていた。
黒蛇部隊やゼロラの邪魔があったとはいえ、王国騎士団を率いていながらの失態。レーコ公爵を敬愛しているリフィーの怒りは頂点に達していた。
「構わないわよ、リフィー。バクト公爵を蹴落とす決定打にはならなかったけど、それでも追い詰める手段はまだあるわ」
怒り心頭のリフィーに対して、レーコ公爵は落ち着いた物腰で答える。
確かにここでバクト公爵を権力争いから外せなかったことは痛手ではあるが、レーコ公爵にはまだ勇者レイキースとその仲間達という"手札"がある。それがある限り、バクト公爵とボーネス公爵がどう出てこようとまだ自身が優勢であると考えていた。
「レーコ公爵がそう言うのならば、これ以上この件でバルカウスを咎めるのはやめるんだ、リフィー」
「は、はい……。レーコ公爵とレイキース様がそうおっしゃるのならば……」
傍で話を聞いていたレイキースが口を挟む。
「だが、バルカウス。お前が素手の武闘家一人も倒せなかったのはいただけないな。何のためにお前にその魔力を授けたと思ってるんだ?」
作戦失敗を咎めはしなかったレイキースだが、バルカウスがゼロラに実質敗北したことについては不満であった。
元々は純粋な戦士であり、魔法の使えなかったバルカウスだったが、過去にレイキースの手により魔力を与えられて魔法を使えるようになっていながらの敗北。
その現実を突きつけられたバルカウスはただただ黙って話を聞くしかなかった。
「お取込み中失礼します」
レーコ公爵と勇者パーティの三人が話している最中、屋敷の使用人が部屋に入ってきて何かをレーコ公爵に耳打ちした。
「!? な、なんですって!?」
その知らせを聞いたレーコ公爵はドレスの裾を上げながら、慌てて外へと出ていった。
■
ザワザワ ガヤガヤ
「これって本当なのか?」
「まさかレーコ公爵が勇者様達を――」
レーコ公爵が向かった先は王都の城門前大広場。そこの掲示板に複数の紙が張り出されていた。
「あ……あぁ……そ、そんな……」
張り出されていたのはレーコ公爵が勇者レイキースを自らの傘下に収めるために送った賄賂、戦士バルカウスへの誘惑、賢者リフィーとの密談等、レーコ公爵にとって目を覆いたくなるような場面の数々が鮮明に紙に写されていた。
「これって"写真"だったか? 異国の"カメラ"ってもので撮ったていう」
「じゃあこれって、本当にあったこと?」
状況のマズさに顔を青ざめるレーコ公爵。勇者パーティーはあくまでレーコ公爵の人柄に惚れて付き従っていることを世間には印象付けていたのだが、こんなスキャンダルを張り出されてはそんなイメージは払しょくされてしまう。慌てて掲示板を取り外すよう部下に命じようとするが――
「レーコ公爵! あの掲示板にあるものはどういうことですか!?」
「あれって"写真"ですよね!? ではあれは本当にあった出来事なのですか!?」
「勇者様達を誘惑していたのですか!?」
「その辺りの事情を詳しくお願いします!」
レーコ公爵の周りを四人のハンチング帽をかぶった女性達に囲まれ、事情を問い詰められてしまった。
この四人はギャングレオ盗賊団・忍衆の四人。そして掲示板に写真を張り出したのも、その写真を用意したのもこの四人。
全てはバクト公爵がレーコ公爵を潰すために用意しておいた策であった。
「い、いやぁあああ!!??」
レーコ公爵の悲壮な絶叫が広場に木霊した。
■
「レーコ公爵は火消しに追われるだろうな。裏で糸を引いているのはバクト公爵だろう」
「は、はいぃ……」
レーコ公爵のスキャンダルを聞いて魔幻塔で話をしていたのはボーネス公爵と王国騎士団軍師のジャコウであった。
「このままではバクト公爵の一人勝ちだ! ジャコウ! <魔王の闇>の研究はどうなっている!?」
バクト公爵が"三公爵"の中での優勢を確立していく中で、ボーネス公爵はジャコウに<魔王の闇>の研究を急がせていた。
「せ、先日こちらに異動させてもらったリョウ大神官なのですが……この魔幻塔の警備も掻い潜って勝手に外へ抜け出しており、あまり協力的でもありませぬ……」
リョウが魔幻塔に配属されたことで、彼女の魔力を使って研究も進むと思われていたが、リョウの身勝手な行動のせいで研究が進まないことへの焦りと苛立ちを伝えるジャコウ。
「……まあいい。今ここであの大神官の機嫌を下手に損ねるわけにもいくまい。どの道、魔幻塔から完全に逃げ出すわけにもいかぬしな」
リョウという最高の実験材料を手に入れたボーネス公爵は、彼女が魔幻塔から逃げ出せないように魔力による契約を交わさせている。それが解除されない限り、リョウがルクガイア王国から離れることはできない。
「ボーネス公爵……。実はわしが研究している<魔王の闇>とは別の闇魔法の気配が魔王城の方角から確認されているとの報告があります……」
「なに? あの城はもうただの廃墟ではなかったのか?」
ジャコウが言うには港町ウォウサカの漁師の間で『魔王城から不気味な闇が漂っている』という噂があるようだ。
【伝説の魔王】が使っていた<魔王の闇>とはまた別の存在と思われるが、その闇は魔王城から発生していることを考えると、利用価値はあるかもしれないとボーネス公爵は考えた。
「ジャコウ。その闇について調べろ。わしが逆転するための一手になるやも知れぬからな」
「……すまない」
レーコ公爵邸でバルカウスはリフィーに責任を問われていた。
黒蛇部隊やゼロラの邪魔があったとはいえ、王国騎士団を率いていながらの失態。レーコ公爵を敬愛しているリフィーの怒りは頂点に達していた。
「構わないわよ、リフィー。バクト公爵を蹴落とす決定打にはならなかったけど、それでも追い詰める手段はまだあるわ」
怒り心頭のリフィーに対して、レーコ公爵は落ち着いた物腰で答える。
確かにここでバクト公爵を権力争いから外せなかったことは痛手ではあるが、レーコ公爵にはまだ勇者レイキースとその仲間達という"手札"がある。それがある限り、バクト公爵とボーネス公爵がどう出てこようとまだ自身が優勢であると考えていた。
「レーコ公爵がそう言うのならば、これ以上この件でバルカウスを咎めるのはやめるんだ、リフィー」
「は、はい……。レーコ公爵とレイキース様がそうおっしゃるのならば……」
傍で話を聞いていたレイキースが口を挟む。
「だが、バルカウス。お前が素手の武闘家一人も倒せなかったのはいただけないな。何のためにお前にその魔力を授けたと思ってるんだ?」
作戦失敗を咎めはしなかったレイキースだが、バルカウスがゼロラに実質敗北したことについては不満であった。
元々は純粋な戦士であり、魔法の使えなかったバルカウスだったが、過去にレイキースの手により魔力を与えられて魔法を使えるようになっていながらの敗北。
その現実を突きつけられたバルカウスはただただ黙って話を聞くしかなかった。
「お取込み中失礼します」
レーコ公爵と勇者パーティの三人が話している最中、屋敷の使用人が部屋に入ってきて何かをレーコ公爵に耳打ちした。
「!? な、なんですって!?」
その知らせを聞いたレーコ公爵はドレスの裾を上げながら、慌てて外へと出ていった。
■
ザワザワ ガヤガヤ
「これって本当なのか?」
「まさかレーコ公爵が勇者様達を――」
レーコ公爵が向かった先は王都の城門前大広場。そこの掲示板に複数の紙が張り出されていた。
「あ……あぁ……そ、そんな……」
張り出されていたのはレーコ公爵が勇者レイキースを自らの傘下に収めるために送った賄賂、戦士バルカウスへの誘惑、賢者リフィーとの密談等、レーコ公爵にとって目を覆いたくなるような場面の数々が鮮明に紙に写されていた。
「これって"写真"だったか? 異国の"カメラ"ってもので撮ったていう」
「じゃあこれって、本当にあったこと?」
状況のマズさに顔を青ざめるレーコ公爵。勇者パーティーはあくまでレーコ公爵の人柄に惚れて付き従っていることを世間には印象付けていたのだが、こんなスキャンダルを張り出されてはそんなイメージは払しょくされてしまう。慌てて掲示板を取り外すよう部下に命じようとするが――
「レーコ公爵! あの掲示板にあるものはどういうことですか!?」
「あれって"写真"ですよね!? ではあれは本当にあった出来事なのですか!?」
「勇者様達を誘惑していたのですか!?」
「その辺りの事情を詳しくお願いします!」
レーコ公爵の周りを四人のハンチング帽をかぶった女性達に囲まれ、事情を問い詰められてしまった。
この四人はギャングレオ盗賊団・忍衆の四人。そして掲示板に写真を張り出したのも、その写真を用意したのもこの四人。
全てはバクト公爵がレーコ公爵を潰すために用意しておいた策であった。
「い、いやぁあああ!!??」
レーコ公爵の悲壮な絶叫が広場に木霊した。
■
「レーコ公爵は火消しに追われるだろうな。裏で糸を引いているのはバクト公爵だろう」
「は、はいぃ……」
レーコ公爵のスキャンダルを聞いて魔幻塔で話をしていたのはボーネス公爵と王国騎士団軍師のジャコウであった。
「このままではバクト公爵の一人勝ちだ! ジャコウ! <魔王の闇>の研究はどうなっている!?」
バクト公爵が"三公爵"の中での優勢を確立していく中で、ボーネス公爵はジャコウに<魔王の闇>の研究を急がせていた。
「せ、先日こちらに異動させてもらったリョウ大神官なのですが……この魔幻塔の警備も掻い潜って勝手に外へ抜け出しており、あまり協力的でもありませぬ……」
リョウが魔幻塔に配属されたことで、彼女の魔力を使って研究も進むと思われていたが、リョウの身勝手な行動のせいで研究が進まないことへの焦りと苛立ちを伝えるジャコウ。
「……まあいい。今ここであの大神官の機嫌を下手に損ねるわけにもいくまい。どの道、魔幻塔から完全に逃げ出すわけにもいかぬしな」
リョウという最高の実験材料を手に入れたボーネス公爵は、彼女が魔幻塔から逃げ出せないように魔力による契約を交わさせている。それが解除されない限り、リョウがルクガイア王国から離れることはできない。
「ボーネス公爵……。実はわしが研究している<魔王の闇>とは別の闇魔法の気配が魔王城の方角から確認されているとの報告があります……」
「なに? あの城はもうただの廃墟ではなかったのか?」
ジャコウが言うには港町ウォウサカの漁師の間で『魔王城から不気味な闇が漂っている』という噂があるようだ。
【伝説の魔王】が使っていた<魔王の闇>とはまた別の存在と思われるが、その闇は魔王城から発生していることを考えると、利用価値はあるかもしれないとボーネス公爵は考えた。
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