記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

文字の大きさ
160 / 476
第12章 舞台へ立つために

第161話 手の平で踊れ

しおりを挟む
 ある日の夜中。バクト公爵邸に"三公爵"が揃って集まっていた。

「どうしたんだ、貴様ら? いつもの威勢はどこへ行った?」

 バクトがボーネス公爵とレーコ公爵にキツイ目をニヤつかせながら尋ねる。その問いかけに二人は歯を食い絞めながら堪えるしかなかった。
 ボーネス公爵はオジャル伯爵の失態と寝返り、ジャコウの研究の遅れで大きく立場を危うくしていた。
 レーコ公爵も同様に勇者レイキースとその仲間たちを誘惑して懐柔したスキャンダルが表に出てしまい、火消しに追われてピンチから脱し切れていない。
 "三公爵"内での立場はバクトの圧倒的優勢。
 その状況を二人は歯痒く見ているしかできないでいた。

「……今日は貴様らに協力してほしくて集まってもらったんだがな」
「協力……だと?」

 今この現状でバクトが他の二人に協力など申し出る必要性が感じられない。ボーネス公爵は怪しんだ。

「ガルペラ侯爵の改革活動は知っているな?」
「ええ。なんでも"貴族制度の撤廃"を狙っているそうね。本当に馬鹿な小娘ね。そんなことをして何になるのかしら?」

 レーコ公爵もバクトの協力要請に違和感を覚えたが、ガルペラの改革活動について問われたので素直に答えた。

「わしが最近聞いた話だが、方々の街や村を回って改革のための署名活動をしているそうだな」
「ああ、そうだ。仮にそんなことが実現してしまえば、"三公爵"も意味をなさなくなる」

 ボーネス公爵もガルペラの動きについてはある程度把握している。そこへバクトは危機感を募らせるような発言を交える。

「協力というのは他でもない。ガルペラ侯爵を潰すのに協力してほしい」
「潰すと言っても……具体的にどうするのかしら?」
「近々オジャル伯爵を通して、"円卓会議"を開かせる。その場にガルペラ侯爵にも出てきてもらう」
「まさか……その場でガルペラの権威を失墜させる気か?」

 バクトの提案にレーコ公爵とボーネス公爵は驚きながらも考え込む。
 今やガルペラの勢力は無視できない存在だ。
 仮にガルペラの改革が実現してしまえば、これまで自分達が私欲のために作り上げた貴族社会そのものが崩壊してしまう。
 そうなってしまえばバクトがいくら"三公爵"で優勢を誇っていても、無意味になってしまう。

 だが、二人はバクトが権力の座にまるで興味がないことも、裏でガルペラと結託していることも知らなかった。

「今回ばかりは俺も"手札"を使わせてもらおう。俺の"手札"――ギャングレオ盗賊団をな」
「やはりギャングレオ盗賊団はお主の差し金じゃったか……」
「でもそこまでやるってことは、相当本気なのね?」

 これまで大っぴらにしてこなかったバクトの"手札"、ギャングレオ盗賊団。
 バクトがその名を口にしたことが二人に対して本気度を高めさせた。

 本当の思惑など知らず、『本気でガルペラ侯爵を潰す』と思い込んでいた。

「別に手を貸さないというならばそれでもいい。だが、このまま待っているだけでは"三公爵"も他の貴族も終わりだぞ?」

 畳みかけるようにバクトが二人の不安を煽る。
 確かにこのまま待っているだけではガルペラによってそう遠くない未来、自分達の立場は今よりさらに悪くなってしまう。この話に乗らない手はない。
 バクトも自らギャングレオ盗賊団を"手札"と明言してしまった以上、そのことを突き詰めることでバクトも後で蹴落とせる。起死回生のチャンスにもなりうる。

 ボーネス公爵もレーコ公爵も、バクトの提案に乗るしかなかった。それが全て罠だとも知らずに。

「分かった。わしもバクト公爵に従い、"円卓会議"に出席しよう」
「ええ、そうね。私も今回ばかりは協力してあげるわ」

 二人の了承を得られた。これでボーネス公爵もレーコ公爵も"円卓会議"に出席する。
 バクトの準備がここに整った。

「"円卓会議"は五日後を予定している。貴様らには当日、存分に働いてもらうぞ?」

 全てがバクトの思惑通りに動いていると知らぬまま、ボーネス公爵とレーコ公爵は屋敷を後にした。



「馬鹿なジジイとババアだ。貴様らはただ、この俺の手の平で踊っていればいい」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

処理中です...