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第16章 自分はあの日から変わりました
第218話 奪われた魔力の真実
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レイキース達が街道近くの洞窟に住む魔物を倒す話をした翌日。
一行は件の洞窟へと向かった。
「む? すまない。どうやら邪魔者が入ったようだ。近くに魔物がいる」
レイキースが洞窟とは別の方向を見て、他の三人に話す。
その言葉を聞いてラルフルは身構える。
小柄な体格には少し大きめのウィッチハットとローブを身に着け、持っている杖に力を込める。
周囲の草陰を見ると、僅かに揺れてこちらを狙っているのが分かる。
「自分も戦います!」
「いや。ラルフル達は先に洞窟に向かっていてくれ。幸い、僕一人でも相手できそうだ」
レイキースは一人だけ残り、他の三人に先へ進むことを提案する。
心配するラルフルだったが、リフィーとバルカウスにも諭され、先に洞窟へと向かうことにした。
■
「……予定通り先に行ったか」
ラルフル達三人の姿が見えなくなったのを確認したレイキースは草陰の中を確認する。
そこにあったのは風を発生させる魔石。草陰を揺らしていた正体はこれだったのだ。
レイキースはその魔石を回収する。
「後はこれを身に着けて、先回りするか」
レイキースはあらかじめ用意しておいた擬態系の魔法効果を持つ漆黒のローブに袖を通すと、転送魔法を使って洞窟へと先回りするのであった。
■
「こ、これが街道を危険にさらしている魔物ですか。強そうですね……!」
「そうですわね。油断はできませんわ」
「…………」
ラルフル、リフィー、バルカウスの三人は、目的の洞窟で人型のモンスターと対峙していた。
漆黒のローブを身に纏い、顔も分からず、声も出さずに剣を持ったその魔物。
だがリフィーとバルカウスにはその正体が分かっていた。
目の前にいるのが、勇者レイキースであることを――
「!? き、来ます!」
正体を隠したレイキースは、一目散にラルフルへと襲い掛かった。
ラルフルは自らに防御魔法をかけながら、得意の炎魔法で迎撃する。
決してラルフルが弱いわけではなかったが、実力の差は歴然であった。
ラルフルが相手しているのは――あの勇者レイキースなのだから。
「――あ、あぐぅ!?」
レイキースが放った剣閃がラルフルに直撃した。ラルフルの実力をもってしても防ぎきれないその威力。
その一閃で、ラルフルは気を失ってしまった。
「……ここまでは予定通りだな」
ラルフルの意識がないのを確認したレイキースは漆黒のローブを脱ぎ捨てて、リフィーとバルカウスと共にラルフルへと近づく。
「そうですわね。それでは、<転魔の術>の準備に入りますわ」
リフィーはそう言って両手を掲げ、二つの魔法陣を地面に描き出す。
一つは倒れたラルフルの下に。もう一つはバルカウスの足元に。
「……本当にやるのだな?」
「ここまで来て怖気づいたなんて言わせないぞ。最早僕達は一蓮托生。やるしかない」
いまだに迷うバルカウスをレイキースが諭す。
バルカウスもここまで来てしまった以上、後戻りはできない。
これから行う残酷な行為。それをせめて目にしまいと、目を瞑ってその時を待つ。
「……<転魔の術>……発動!」
リフィーが<転魔の術>を発動し、ラルフルの魔力をバルカウスへと移し始める。
「――ッ!? うぁ……うああああ!!??」
意識のないラルフルだったが、自分の身に起こっている異常な事態から無意識に悲鳴が上がる。
その悲鳴はバルカウスの耳にも入ってくる。
体に流れ込んでくるラルフルの魔力と耳を覆いたくなる悲鳴。
バルカウスはただひたすらにそれらに耐えるしかなかった。
しばらくして、ラルフルとバルカウスの双方に仕掛けられた魔法陣は消えてなくなった。
「<転魔の術>が完了したわ。これでラルフルが持っていた魔力は全てバルカウスに移されたわ。魔力を失った魔法使いとなったラルフルは、最早抜け殻も同然ですわ」
いまだにぐったりと倒れたままのラルフルを見ながらリフィーが言う。
とうとうやってしまった……。そうバルカウスは思った。
抗える状況ではなかったとはいえ、一人の少年のこれまでの努力を奪い去ってしまった。
そんな自責の念がバルカウスを圧し潰す。
その現実はバルカウスの身に新たに宿った、"本来ラルフルのものであった魔力"がより明白なものとなって心を絞めつけていた。
小さな体からは想像もできな程に蓄えられていたラルフルの魔力。
その全てが今、バルカウスのものとなった。
「さて、後はラルフルを王宮に送って――」
「ならばその役目は拙者に任せていただきたい」
気絶したままのラルフルを抱えてバルカウスはラルフルを王宮に送る役目を引き受けた。
自らの腕の中で眠る少年の体は、いつもより軽く感じた。
「それならば後はバルカウスに任せよう。ラルフルの目が覚めたら予定通り、『黒衣の魔物に魔力を全て奪われた』と説明しておくんだ」
「……分かっている」
レイキースの同意も得て、バルカウスはラルフルを抱えたまま洞窟を後にした。
その後、バルカウスは目が覚めたラルフルにレイキースが言われた通りに説明をした。
その時の絶望に打ちひしがれたラルフルの顔を、バルカウスはいまだに忘れることができなかった……。
一行は件の洞窟へと向かった。
「む? すまない。どうやら邪魔者が入ったようだ。近くに魔物がいる」
レイキースが洞窟とは別の方向を見て、他の三人に話す。
その言葉を聞いてラルフルは身構える。
小柄な体格には少し大きめのウィッチハットとローブを身に着け、持っている杖に力を込める。
周囲の草陰を見ると、僅かに揺れてこちらを狙っているのが分かる。
「自分も戦います!」
「いや。ラルフル達は先に洞窟に向かっていてくれ。幸い、僕一人でも相手できそうだ」
レイキースは一人だけ残り、他の三人に先へ進むことを提案する。
心配するラルフルだったが、リフィーとバルカウスにも諭され、先に洞窟へと向かうことにした。
■
「……予定通り先に行ったか」
ラルフル達三人の姿が見えなくなったのを確認したレイキースは草陰の中を確認する。
そこにあったのは風を発生させる魔石。草陰を揺らしていた正体はこれだったのだ。
レイキースはその魔石を回収する。
「後はこれを身に着けて、先回りするか」
レイキースはあらかじめ用意しておいた擬態系の魔法効果を持つ漆黒のローブに袖を通すと、転送魔法を使って洞窟へと先回りするのであった。
■
「こ、これが街道を危険にさらしている魔物ですか。強そうですね……!」
「そうですわね。油断はできませんわ」
「…………」
ラルフル、リフィー、バルカウスの三人は、目的の洞窟で人型のモンスターと対峙していた。
漆黒のローブを身に纏い、顔も分からず、声も出さずに剣を持ったその魔物。
だがリフィーとバルカウスにはその正体が分かっていた。
目の前にいるのが、勇者レイキースであることを――
「!? き、来ます!」
正体を隠したレイキースは、一目散にラルフルへと襲い掛かった。
ラルフルは自らに防御魔法をかけながら、得意の炎魔法で迎撃する。
決してラルフルが弱いわけではなかったが、実力の差は歴然であった。
ラルフルが相手しているのは――あの勇者レイキースなのだから。
「――あ、あぐぅ!?」
レイキースが放った剣閃がラルフルに直撃した。ラルフルの実力をもってしても防ぎきれないその威力。
その一閃で、ラルフルは気を失ってしまった。
「……ここまでは予定通りだな」
ラルフルの意識がないのを確認したレイキースは漆黒のローブを脱ぎ捨てて、リフィーとバルカウスと共にラルフルへと近づく。
「そうですわね。それでは、<転魔の術>の準備に入りますわ」
リフィーはそう言って両手を掲げ、二つの魔法陣を地面に描き出す。
一つは倒れたラルフルの下に。もう一つはバルカウスの足元に。
「……本当にやるのだな?」
「ここまで来て怖気づいたなんて言わせないぞ。最早僕達は一蓮托生。やるしかない」
いまだに迷うバルカウスをレイキースが諭す。
バルカウスもここまで来てしまった以上、後戻りはできない。
これから行う残酷な行為。それをせめて目にしまいと、目を瞑ってその時を待つ。
「……<転魔の術>……発動!」
リフィーが<転魔の術>を発動し、ラルフルの魔力をバルカウスへと移し始める。
「――ッ!? うぁ……うああああ!!??」
意識のないラルフルだったが、自分の身に起こっている異常な事態から無意識に悲鳴が上がる。
その悲鳴はバルカウスの耳にも入ってくる。
体に流れ込んでくるラルフルの魔力と耳を覆いたくなる悲鳴。
バルカウスはただひたすらにそれらに耐えるしかなかった。
しばらくして、ラルフルとバルカウスの双方に仕掛けられた魔法陣は消えてなくなった。
「<転魔の術>が完了したわ。これでラルフルが持っていた魔力は全てバルカウスに移されたわ。魔力を失った魔法使いとなったラルフルは、最早抜け殻も同然ですわ」
いまだにぐったりと倒れたままのラルフルを見ながらリフィーが言う。
とうとうやってしまった……。そうバルカウスは思った。
抗える状況ではなかったとはいえ、一人の少年のこれまでの努力を奪い去ってしまった。
そんな自責の念がバルカウスを圧し潰す。
その現実はバルカウスの身に新たに宿った、"本来ラルフルのものであった魔力"がより明白なものとなって心を絞めつけていた。
小さな体からは想像もできな程に蓄えられていたラルフルの魔力。
その全てが今、バルカウスのものとなった。
「さて、後はラルフルを王宮に送って――」
「ならばその役目は拙者に任せていただきたい」
気絶したままのラルフルを抱えてバルカウスはラルフルを王宮に送る役目を引き受けた。
自らの腕の中で眠る少年の体は、いつもより軽く感じた。
「それならば後はバルカウスに任せよう。ラルフルの目が覚めたら予定通り、『黒衣の魔物に魔力を全て奪われた』と説明しておくんだ」
「……分かっている」
レイキースの同意も得て、バルカウスはラルフルを抱えたまま洞窟を後にした。
その後、バルカウスは目が覚めたラルフルにレイキースが言われた通りに説明をした。
その時の絶望に打ちひしがれたラルフルの顔を、バルカウスはいまだに忘れることができなかった……。
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