記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第17章 追憶の番人『公』

第231話 因縁関係

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「よお、イトーさん」
「おお、ゼロラか。営業時間中に来るなんて久しぶりだな」

 思えば久しぶりに営業時間中にやって来たイトーさんが経営する酒場兼ギルド。
 冒険者も相変わらずやってきているが……どうにも普段とは違うようだ。

「ゼロラ殿も来たのか。すまないがちょっと取り込み中だったものでね」
「ロギウスも来てたのか」

 どうやら普段と違う原因はロギウスにあるようだ。
 そういえばロギウスはイトーさんが宗家を務める理刀流という剣術の使い手だったな。いてもおかしくはないか。

 ――もっとも、この国の王子がこんな酒場に平然といたら冒険者達も驚くだろう。

「フロストの件では助かったぜ」
「いやいや。こちらこそゼロラ殿のおかげで助かったよ。あなたが僕の動きに合わせてくれたから、あんな状況も打開できたんだ」

 ロギウスは謙遜しているが、こちらこそ助かったというものだ。
 ロギウスの作戦には助けられたし、理刀流という戦いの動きも俺には不思議と合わせやすかった。

 そういえばイトーさんは東洋の国で理刀流宗家をしてたんだったな。
 俺がロギウスの理刀流に動きを合わせやすかったのも含め、本当に俺は東洋の出身なのかもしれない。



 ――だが、今の俺がするべきことは目の前の課題だ。
 俺の過去は全てが終わった後にまた考えればいい。

「ロギウスもいるなら丁度いい。ちょっと二人に聞きたいことがある。――バクトとフロストは何であそこまで仲が悪いんだ?」
「……さあな。俺も詳しいことは知らない」
「……僕も師匠と同じくだね」

 イトーさんもロギウスも知らないとは言い張っているが、どこか言い淀んでいるところがある。
 ――それなら聞き方を変えてみるか。

「じゃあ、バクトはラルフルやミリアに対して、何か思うところがあるのか? もしあるのならば、今後のバクトの人間関係のためにも聞いておきたい」

 俺が質問を変えてみると、イトーさんとロギウスは少し黙り込んでしまった。

「……どうにも、ゼロラには勘づかれたみたいだな」
「……まったくですね。ゼロラ殿に下手な隠し事はしない方がよさそうだ」

 暫くすると、イトーさんとロギウスは観念したかのように話を始めた。

「俺達がバクトとフロストの関係で知ってることなんてそんなに詳しいことじゃない。ただあの二人は俺達四人が"共通の目的"で繋がるよりずっと前から知り合いではあったらしい」

 イトーさんが言うように、公爵であるバクトと元王国騎士団二番隊隊長のフロストならばかなり昔から知り合いでもおかしくないな。

「僕と師匠が知っているのは、元々あの二人は"お互いに個人の秘密を共有し合っている"ということだけだよ」

 秘密を共有? ロギウスは気になることを言いながら、話を続けてくれた。

「フロスト元隊長が持っている秘密はラルフルとマカロンとのことだ。それは以前に話した通りだよ。だけど……バクト公爵が持っている秘密は、"ミリア様とのこと"だね」
「バクトとミリアの秘密? それが何かまでは分からないのか?」
「生憎だね。僕達も態度でしか察せないし、本人も絶対に口を割らない。――知っているのはフロスト元隊長だけさ」

 フロストだけがバクトとミリアの関係に関する秘密を知っている……。
 バクトとフロストはお互いに秘密を共有していてそれを周囲に勘繰られないためにも、表面的に仲が悪いのかもしれない。

 ――表面的に仲が悪いだけにしては悪すぎる気もするが。

「まあ、あの二人の仲が悪いのは秘密を共有しているだけじゃないだろうな」
「確かにそれだけの理由だったらお互いに銃を向け合ったりはしないだろうな」
「また出合い頭に喧嘩してたのかあの二人は……。銃を向け合うだけで済んでよかったよ。以前はグレネードを投げ合ってて、僕も師匠も止めるの大変だったからね……」

 銃を向け合う"だけ"で済んでよかった!?
 グレネードって王宮を脱出する時にギャングレオ盗賊団が使ってたあの爆弾だろ!?
 完全に殺し合ってるじゃねえか!?

 ――やっぱり仲が悪いのは単純に馬が合わないだけかもしれない。

「大体の事情は分かった。俺も無理に深入りしないようにはしたいが、当事者であるミリアの気持ちもあるからな」
「分かったよ、ゼロラ。俺達が喋ったってことは言うんじゃねえぞ?」

 イトーさんが言うようにあまり口外はしない方がいいだろう。
 だが、ミリアが関わっているのなら多少は足を踏み入れて事情を確認したい。
 ミリアとはラルフルやリョウとの関係も含めてどうにも放っておけない間柄だ。
 俺で何か力になれるのなら、力になってやりたい。

 俺はまずミリアと話をしに行くことにした。





「あ、そうだった。これ、俺が作ったたこ焼きだ。よかったら食べてくれ」
「ゼロラ殿……何でこんなものを作ってるんだい……?」
「将来的にたこ焼き屋を始めようと思い、修行中だ」
「たこ焼き屋始める気かよ……」
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