記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第17章 追憶の番人『公』

第240話 追憶を守りし四人

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「成程。バクトとミリア様はそういう関係だったのか」
「どうにもバクト公爵は不器用な人だね。ミリア様がどういう人かを考えれば、言ってもよさそうなのに」

 宿場村にあるイトーが経営する酒場。
 そこの営業終了後に四人の男が集まっていた。

 一人は酒場のマスターであり、剣術<理刀流>の宗家でもある、イトー理刀斎。
 もう一人はそのイトー共に話を聞いていたルクガイア王国王子でイトーの弟子でもある、ロギウス。

「クーカカカ~! そー思うだろ~? それだってーのにこいつは変な意地張りやがってよ~。クーカカカ~!」
「……黙れ、バカフロスト。俺の秘密を勝手にバラしやがって……」

 そして笑い声を上げながら話しをする元王国騎士団二番隊隊長、ドクター・フロスト。
 それを横目で恨めしく睨む"三公爵"の一人にしてギャングレオ盗賊団の元締め、バクト。



 ――"追憶の領域"を守る四人が一同にこの酒場に会していた。
 そんな四人の話題は、フロストが漏らしたバクトの秘密についてだった。

「だがよ、フロスト。お前さんがバクトの秘密を話しちまったのは事実だ。いっそのことお前さんの秘密も話しちまったらどうだ?」
「そうだね。僕達四人がこうやって同じ勢力に入った以上、お互いのことも深く知っておきたい」

 イトーとロギウスはフロスト自身の秘密も喋ることを提言する。

「そーだな~。この際だから俺も――」
「やめろ、馬鹿どもが」

 フロストはいっそのこと話してしまおうとしたが、それを止めたのは唯一フロストの秘密を知るバクトであった。

「ん? なんでバクトが止めるんだ? フロストの秘密ってそんなにヤバイのか?」
「内容がヤバイかヤバくないかの問題じゃない。こいつの秘密が公になった時、この馬鹿が起こす行動が問題なんだ」

 イトーの質問にバクトが苛立ちながら答える。
 それは唯一フロストの秘密を知り、フロストがどういう人間かをよく知っているからこそできた予想――

「このバカフロスト……間違いなく、レーコ公爵を殺しに行くぞ」
「……よく分かってるじゃねーか。アホバクト」

 フロスト最大の行動理念。それは"レーコ公爵への復讐、及び殺害"。
 フロストが味方となった今、そのような無鉄砲な行動を起こさせるわけにはいかなかった。

「あのクソアマ公爵だけは必ず殺してやる……! 四肢をもいで、生きていることを後悔させながら殺して――」
「わ、分かったよ! フロスト元隊長の秘密はもういいから!」

 フロストが瞳に狂気的な光を宿しながら放つ発言の数々に、ロギウスも思わず話を止めることにした。

「……なーんだ。まあ、俺も一応お前らと手を組んでるからな~。今のうちは大人しく協力してやるよ~。クーカカカ!」

 ロギウスに話を止められたことで、フロストは普段の調子に戻る。
 その場にいた三人はフロストの異常性を改めて実感した。

「しかしまー、なんだ~? いつだったかイトーのおっさんが言ってたように、俺達四人は結局ゼロラに会ったことを発端に味方同士になっちまたな~」
「『味方同士になる』とまでは言ってねえよ。ただ、ゼロラの存在が今後大きくこの国を揺るがすことになると思ってただけだ」

 フロストは自らが他の三人と味方になるとは思っていなかった。
 ただ結局、ゼロラの介入によって"マカロンとラルフルを守る"という名目で味方になり、こうして"追憶の領域"を守る四人と共に"共通の目的"以外で話しをするのことにあまり悪い気はしていなかった。

 元々フロストに発言していたイトーもまた、四人全員が同じ勢力に集まったことまでは予想できていなかった。

「シシバの馬鹿さえ納得させた男だ。記憶を失っているとはいえ、元々はどこかの国の英雄だったのかもな」
「同感だね。ゼロラ殿は他者のために行動できる信念がある。それならば元々は王様だったとしてもおかしくない。もっとも、そんな人は聞いたことがないけど……」

 バクトとロギウスもゼロラのことについて語る。

「ま~、仮にそうだったとしてもガラ悪くねーか?」
「確かにゼロラは見た目の印象が悪いからな……」

 フロストとイトーもゼロラのことを悪くは言うが、内心で関心は持っていた。



「なーよ~? ゼロラなら"追憶の領域"に入れてもいいんじゃねーか~?」

 そんなゼロラに対する関心からか、フロストは四人で守っている"追憶の領域"へゼロラを入れることを提案し始めた。

「このバカ学者が……。その件についてはもう少し熟考しろ」
「だがよ~。俺は先代勇者ユメ様についてはそこまで詳しく知らないんだぜ~? お前らがやってた情報操作は知ってるが、俺はその後、このアホ公爵に頼まれてシステムを作っただけだし……」
「そうだとしても駄目だね。"追憶の領域"は人が簡単に踏み入れていい場所じゃない」

 フロストの提案に対してバクトとロギウスは難色を示す。

「"追憶の領域"には誰も入れさせねえよ。もし勝手なことをするなら、お前さんであっても俺は斬るぞ? フロスト」
「か~。理刀斎までそー言うかね~。さぞ愛弟子が可愛かったんだろうよ~。わーかったっての~」

 さらにイトーまでもが反論してきたことで、フロストも折れて大人しく今まで通り"追憶の領域"を守ることに同意する。



 この四人の"共通の目的"は今だ尚変わらない。

 『"追憶の領域"に誰も入れないこと』

 それだけはたとえ同じ勢力下に入った四人であっても、変わることのない目的であった。
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