記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第23章 追憶の番人『ドク』

第337話 宿命・元ルクガイア王国騎士団二番隊隊長

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「お姉ちゃん! 光魔法で守りをお願いします!」
「分かったわ!」

 フロストさんが背中に付けた四本のアーム。
 このお屋敷をここまで一人で壊してしまうその力は、想像を絶します!
 まずはお姉ちゃんの光魔法で守りを――

「無駄なことを~! この俺が魔法対策に何もしてないと~……思ったのか~~!!??」

 そんな自分達を見て、フロストさんは懐から本体の両腕を使って、何やら爆弾のようなものを取り出してきました。

「<マッジクジャマー>だ~! 魔法なんてもんはな~、仕組みさえ理解しちまえば~、科学の力で無効化できるんだよ~~!!」

 そう言ってフロストさんは<マジックジャマー>と呼ばれるものを、こちらに投げつけてきました――



 ビビビビッ……!

「な、何これ!? 私の光魔法が消されていく!?」
「ク~カカカ~! これでマカロンの力は防いだな~! さ~……俺の力を存分に味わいな~~!!」

 フロストさんは魔法への対策まで取っていましたか……!
 そして、フロストさんのアームを使った連撃が始まります!

 ドグァア!! バギャァア!!

「こ、この威力は……!?」
「ダ、ダメ……! パワーが違い過ぎる……!」

 フロストさんは四本のアームの内、二本で体を支えながら、残りの二本を自分達の眼前へと叩きつけてきます!
 離れた距離からでも、伸ばしたアームはこちらまで届いてきます。
 おまけにそのパワーは、自分達でどうにかできるものではありません!

「さ~! 怯えろ~! そして~、そこで大人しく見ているんだ~! この俺の復讐劇が~……幕を下ろすその瞬間をな~~!! ク~カカカ~!!」

 フロストさんはアームで部屋全体を揺らしながら、自分達へと狂った高笑いを放ってきます。

「い、いやぁ……た、助けて……誰かぁ……」

 部屋が揺れた振動で、レーコ公爵は座り込んだまま立ち上がれないようです。


 ガララァ…… ガラァア……!


 さらに天井も崩れ始め、レーコ公爵の逃げ場はもうありません。

 レーコ公爵がやったことは、自分も許せません。
 お母さんを死なせる原因を作り、フロストさんがここまで壊れてしまった元凶――

 ですが……だからといってここで見殺しにしたら、自分達は天国のお母さんに怒られます!

「フロストさん! お願いです! こんなことをしても――」
「うるさいぞ~! ラルフル~! これ以上~、俺のやることに~、口出しするな~~!!」
「お母さんは――ルナーナはこんなことを望む人じゃない! そんなことはあなただって――」



 ガララァアア!!



 お姉ちゃんと一緒にフロストさんを止めるため声をかけていたその時、天井が大きく崩れ始めました!
 しかもその崩れた巨大な瓦礫の一つが、お姉ちゃんの真上に――

「お、お姉ちゃん!!」

 お姉ちゃんは今、フロストさんの<マジックジャマー>で光魔法が使えません!
 このままでは、お姉ちゃんが瓦礫の下敷きに……!?

 自分は急いでお姉ちゃんを守ろうと近くに行きます!
 ですが、部屋自体の崩壊でうまくただりつくことが――

「キャァアアア!!??」
「お姉ちゃぁああん!!??」





 ――ガシャアアン!





「……あ、あれ? 私……なんともない……?」

 ――瓦礫の下敷きになると思われたお姉ちゃんでしたが、そうはなりませんでした。
 瓦礫は"何か"によって弾かれ、お姉ちゃんは無事でした。



 そして、その"何か"とは――



「ぐ、ぐぬぬ……!? く、くそが……!?」

 ――フロストさんのアームです。
 背中から生えた四本のアームの一本で、お姉ちゃんの頭上にあった瓦礫を弾き飛ばしてくれました。

「じゃ、邪魔な奴らだな~!? さっさとどこかに行きやがれ~~!!」

 その後、フロストさんは再びアームを自分達の目の前に叩きつけて威嚇してきました。



 ですが、"威嚇するだけ"です。
 アームは自分にもお姉ちゃんにも、一切当たっていません。
 あの伸びるアームなら、自分達に攻撃を加えることは十分に可能なはずです。

「どうしたんですか? フロストさん? 自分達が邪魔ならば、そのアームで早く攻撃してきてください」

 自分はゆっくり、フロストさんの方へと歩いていきます――
 "あること"に気付いたから、もうあのアームは怖くありません。

「フロストさん……私達は何があっても、あなたを止めることはやめません」

 お姉ちゃんも"あること"に気付き、フロストさんへと近づきます――

「く、くそ! だったら攻撃して―― な、なんだ? アームの故障か? なんで俺の言う通りに動かないんだ~~!?」

 フロストさんは攻撃しようとアームを動かしていますが、その動きはぎこちなく、とても攻撃してくるようには見えません。
 フロストさんは『アームの故障』と言ってますが、心の奥底で本人も理解しているはずです――

「さあ! 自分とお姉ちゃんを攻撃してください! フロストさん!」
「できるものなら、やってみてください! フロストさん!」

 そもそもフロストさんは、自分とお姉ちゃんに本当は"止めてもらいたかった"はずです。
 だからあんな過去の映像をニナーナさんに残し、ニナーナさんが自分達の命令で動くように設定していたのです。

 自分とお姉ちゃんは、どんどんとフロストさんへと近づいていきます――



「や、やめろ……! 来るな……来るんじゃない! "その目"で俺を見るなぁあ!! 近づくなぁあ!! 頼むからぁあ!!」

 フロストさんは自分達に怯えるように、後へと下がって行きます――
 自分もお姉ちゃんも、フロストさんの言葉に構わず、目を向け続けて近づきます――





「その目で――ルナーナと同じ目で! 俺を見るなぁああ!!」

 自分とお姉ちゃんがフロストさんの傍まで近づいた時、フロストさんはそう叫びながらその場に崩れ落ちました。
 四本のアームも、まるで力を失ったかのように地面へ倒れて行きます。

 この人には……自分達を最初から攻撃することなんて、"できなかった"のです。
 お母さんと同じ目をした、自分達姉弟を――



「な……なんでだよぉ……。なんで死んじまったんだよぉ……。ルナーナァ……!」

 フロストさんは崩れ落ちたまま、大量の涙を流し始めました。
 『ルナーナ』――
 自分達のお母さんの名前を叫びながら――

「俺は……俺はお前を救いたかったんだぁ……! アアアアァ……!」

 ひたすら号泣するフロストさんでしたが、その声や表情からは狂気が消えていました。
 自分達姉弟の――ルナーナの子供の声は、フロストさんに届いてくれました。

 この人の時間はお母さんが死んだ時から、止まったままだったのでしょう。
 ですが……それがやっと動き始めたように見えました――
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