記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第27章 追憶の番人『殿』

第409話 追憶の解放

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「いやはや! こうして再び僕達、"共通の目的"を持った四人が一同に会するとはね! ハハハッ!」
「この上機嫌王子が……。貴様の奇行のせいで、周囲はどれだけ迷惑を被ったと思ってるんだ?」
「話は聞いたけどよ~、なーんでロギウスはあのジフウの妹なんかと婚約したんだ~?」
「今その話は置いとけ。これ以上その話を続けると、本題に入れねえよ」

 ロギウス、バクト、フロスト、イトー。
 "追憶の領域"を守るという"共通の目的"を持った四人が、魔幻塔に集結していた。
 リョウから無理矢理、魔幻塔の管理を押し付けられたとはいえ、フロストは一応囚人の身。
 その都合でここに集まるしかなかったのだ。

「それにしても、師匠! なぜあなたがユメ様の父親であることを、僕にも黙っていたのですか!? ユメ様からも聞いてませんよ!?」
「ユメとも一度相談したんだが、下手に関係を周知させない方がいいと思ってな。今のお前さんを見てると、その判断は正解だったと思ってるよ」

 イトーとユメの親子関係。同じ剣術流派の弟子の身でありながら、それを全く知らされていなかったロギウス。
 結果としてイトーの直感は正しく、ロギウスは嬉しそうな表情から一転、どこかしょぼくれてしまった。

「こんなのがこの国の次期国王で大丈夫なのか? まあいい。いざとなったらリョウ経由でシシバを動かし、折檻でもしてくれる」
「俺もジフウに頼んどこーかな~。元上司ってことで、命じてよ~」
「やめろ、このバカ学者が。これ以上ジフウにストレスがかかると、あいつは本当に心労で死ぬぞ」
「だったら、お前もシシバを動かすなよな~。それをしたって、ジフウは胃が爆発するぞ~。この、アホ元公爵」

 バクトとフロストも、今回のロギウスの奇行に苦言を呈している。
 そしてお互いに罵り合う、いつもの口論が始まる。

「この二人は本当に飽きないな……。どんだけ喧嘩し合う関係なんだよ……」
「一つ気になったんだけど、バクト元侯爵もフロスト元隊長もそんなに仲が悪いのに、ミリア様やラルフルが付き合うことには反対しないんだね?」

 そんな二人の様子を見て、ロギウスはふとした疑問を口にした。

 ミリアはバクトの実の娘。
 ラルフルはフロストにとって我が子同然。
 両者の親ともいえる二人にとって、ミリアとラルフルが付き合うことには反対しそうなものだったが――



「ミリアが好きな相手など、ミリア自身が決めればいい。俺の出る幕じゃない」
「ラルフルはルナーナの子だ。ラルフルが認めた相手ならば、俺が口出すことは何もねーな~」

 ――バクトもフロストも、二人の意思を尊重する考えだった。

「……この二人。実は相当仲がいいのでは?」
「『喧嘩するほど仲がいい』ってことかもな。『殺し合うほど仲がいい』ってレベルだけどよ」

 ロギウスもイトーも、二人の様子を呆れながら眺める。

 バクトとフロスト。
 互いに違う道を歩むことにはなり、今でこそいがみ合っているが、結局のところ旧友としての間柄はずっと続いているのであった。



「それよりよ~、早く本題を頼むぜ~。"追憶の領域"のことだろ~?」
「貴様との口論など、いつでもできるしな。ロギウス殿下。おおよそ察しはつくが、議題は『ゼロラは"追憶の領域"に入れること』で、いいのか?」
「ええ、それであってるよ」

 今回こうして、"共通の目的"を持つ四人が集まった理由――
 それはゼロラに関することであった。

 これまで四人は【慈愛の勇者】ユメが遺したものを、"追憶の領域"に封印して守ってきた。
 だが、ゼロラの正体がユメの夫であった【伝説の魔王】ジョウインが転生したものだと分かった以上、ゼロラにも"追憶の領域"へと立ち入る資格があると考えた。

「僕は賛成だ。むしろゼロラ殿以上に、"追憶の領域"に立ち入る資格がある者はいない」
「俺も同意見だ。奴が【伝説の魔王】だったという過去など、どうでもいい。――いや、"だからこそ"立ち入らねばならないか」
「こーゆー時だけ、アホバクトと一緒の意見なのは気に食わねーけど、俺も賛成だ~」

 ロギウス、バクト、フロストの三人は、あっさりとゼロラが"追憶の領域"に入ることを認めた。
 この三人にとって、ユメとゼロラの関係を邪魔する理由はない。
 反対する理由など、どこにもなかったのだ。



 ただ一人だけ、"理由が存在する"者がいた。

「師匠。あなたはユメ様の父親です。今回の議題についての賛否は、あなたの意見がどうしても必要です」

 ロギウスはイトーへと尋ねる。
 その言葉を聞き、バクトとフロストもイトーへと目を向ける。

 全ての決断はユメの父親であるイトーにゆだねられている――



 ――だがそのイトーも、ゼロラと直接剣と拳で語り合ったことで、決心はついていた。

「俺も異論はねえよ。ゼロラを追憶の領域に入れる。それと、その娘のミライもだ」

 イトーの言葉に迷いはなかった。

 ユメの夫だった、ジョウイン。その生まれ変わりである、ゼロラ。
 結婚後のユメの生活を知り、ゼロラのことも認めたイトーに、異議を唱える理由はなかった。



「では、決まりということで。ゼロラ殿とお子さんのミライちゃんには、後日連絡します。日付が決まり次第、ここの四人も"追憶の領域"の前で落ち合いましょう」
「バカフロスト。その日だけは貴様も仮釈放できるよう、俺が手筈してやる。感謝しろ」
「恩着せがましーぞ、アホバクト。まー、ここの四人全員が揃わねーと、"追憶の領域"の封印は解けないシステムだからな~」
「厳重警備とはいえ、本当に面倒なシステムを作ったな……。いや、それで助かってるんだが」

 四人全員の同意が得られ、後はゼロラとミライを"追憶の領域"に招く段取りをするだけ。
 長きに渡り誰も立ち入れなかった、"追憶の領域"――
 その封印が、もうじき解放されようとしていた――





「キシシシ! なーんや、おもろそうな話をしてまんな~?」

 そうして議論が終わり、解散しようとした四人の元に、何者かが声をかけてきた。

「シシバ!? 貴様、何故ここにいる!?」
「盗み聞くような真似してすんまへんな~、バクトはん。俺は個人的な用事でここに来ただけで、やましい気持ちなんて一切ありまへんで」

 四人の元に割り込んできたのは、シシバであった。
 バクトに睨まれるが、シシバは呆気からんと答えている。

「ここで俺が見聞きしたことは、俺の胸の内にしまっときますわ。安心しておくんなはれ」
「俺とミリアの関係を勝手に喋ろうとした貴様が、よくも抜け抜けと……!」
「まあまあ……バクト元侯爵。あの時とは事情が違うから、素直に守ってくれますよ」
「仮に喋ろうものなら、ここにいる全員を敵に回すことになるしな」

 バクトはシシバに怒りを向けるが、ロギウスとイトーの仲裁でなんとか場が鎮まってくれた。
 シシバもここにいる全員を敵に回すような真似はしたくない。
 個人的な要件さえ済めば、後は自身にとって関係のない話であった。



「……いいだろう。ところで、シシバ。貴様は何の要件でここに来た?」
「ちーっと頼み事をしようと思いましてな。バクトはんにフロストはん。あんさんら二人に要件があるんですわ」
「は~? 俺とアホバクトに頼み事だ~? 一体何の話だってーんだ~?」

 シシバの目的はバクトとフロストにあった。
 改革の戦いの前日、シシバが目にしたラルフルの実力――
 それに感化され、シシバも両目があったころの"最盛期"の力を欲していた。

 一度は折れた、純粋な素手での武闘家としての道。
 それを再び取り戻すために、シシバはバクトとフロストに、ある要望を出した――



「バクトはん、フロストはん。あんさんら二人の力で、俺の"新しい左目"を作ってはくれへんやろか?」
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