記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第28章 勇者が誘う、最後の舞台

第412話 追憶への誘い

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「ラルフルにいちゃーん! ただいまー!」
「あ! ミライちゃん! お出かけしてたんですね」

 ゼロラさんとミライちゃんが一緒に出掛けているとは聞いていましたが、どうやら帰ってきたようです。
 自分が休んでいると、部屋にミライちゃんが勢いよく飛び込んできました。

「ひっさつー! ――ダメ! <ミラ・イッテキマス>はダメ!」

 そこから踏み込む構えを見せますが、<ミラ・イッテキマス>はやめてくれたようです。
 ちゃんと学習してくれて助かりました。お利口さんですね。





「あら? ミライちゃんも来てたのね」
「ゼロラさんと出かけてたみたいだけど、どこに行ってたの?」

 そんな自分とミライちゃんの元に、お姉ちゃんとミリアさんもやってきました。

「マカロンおねえちゃーん! ミリアおねえちゃーん!」

 ミライちゃんは二人にもすり寄ります。
 もちろん、<ミラ・イッテキマス>はしません。

「ミライちゃん、今日はご機嫌ね~。何かいいことでもあったの?」
「うんー! ママにあってきたー!」
「え? ユメ様にってこと? どういうことなの?」

 お姉ちゃんとミリアさんは、ミライちゃんの発現に首をかしげています。
 自分もよく分かりません。

「あのねー! 実はねー――」

 ミライちゃんはたどたどしい口調で説明してくれました。

 ロギウス殿下、バクトさん、フロストさん、イトーさん。
 四人が"共通の目的"として守っていた、"追憶の領域"――
 そこにあったのは、ゼロラさんの奥さんでありミライちゃんのお母さんである、ユメ様のお墓だったそうです。

 ゼロラさんとミライちゃんなら、踏み入る資格はあります。
 世の中の噂に左右されながらも、"人と魔の共存"という未来を思い描いた、先代勇者ユメ様――
 今のルクガイア王国は貴族制度の廃止に始まり、身分や種族の格差もなくなってきています。

 ユメ様の意志は、今もこうして生き続けているのですね――



「ですが、ミライちゃん。自分達にそんな大事なことを、話してしまってよろしかったのですか?」
「うんー! ラルフルにいちゃんたちは信用できるから、言っても大丈夫ー!」

 ミリアちゃんにとって自分達は、もう十分に心を許せる相手のようです。
 嬉しい話ですね。魔王城で一人っきりだった頃が、嘘のようです。

 魔王と勇者の娘である、ミライちゃん。
 それはこの国どころか、この世界にとっても奇特な存在です。
 そんな中でミライちゃんは生きていかなければいけません。
 それでもこのように父親であるゼロラさんと再会し、元気を取り戻したミライちゃんなら、この先にある苦難も乗り越えていけるはずです。



「あー! ミリアおねえちゃん! そのお花! 見せて見せてー!」
「え? これ? "清白蓮華"のこと?」

 ミライちゃんはミリアさんが胸元に入れていた、清白蓮華に興味を持ったようです。
 自分が以前プレゼントしたものを、ミリアさんはしおりにして大事に持ってくれています。

 ――ちょっと、恥ずかしいです。

「このお花ねー! ママもパパにプレゼントしたんだよー!」
「ということは、ユメ様の方から告白したんですか?」
「うんー! 『パパは奥手』って、ママも言ってたー!」

 成程。なんとなく分かります。
 ゼロラさんは実際、奥手です。
 お姉ちゃんとリョウ大神官の二人から告白されて、自ら手出ししたことが一切ありません。
 そんなゼロラさん――当時の【伝説の魔王】ジョウインと結婚し、お子さんまでできたユメ様は、中々押しの強い女性だったのでしょうね。

「お姉ちゃん。ゼロラさんと結婚するには、待っているだけでは駄目ですよ?」
「ラ、ラルフル!? 急に何を言い出すのよ! 今この場には、ミライちゃんだっているのに――」

 ――これは失言でした。
 ミライちゃんがいるのに、お姉ちゃんとゼロラさんの結婚話を持ち出しては、ミライちゃんの心境は複雑でしょう。

 自分のうっかりで、ミライちゃんに辛い思いを――



「マカロンおねえちゃん、パパと結婚するのー!? わたしのあたらしいママになるのー!? うれしー! わたし、うれしー!」
「あ、あれ? ミライちゃん? 嫌じゃないのですか?」

 自分の予想とは裏腹に、ミライちゃんは嬉しそうです。
 二本のアホ毛をピョコピョコさせながら、お姉ちゃんとゼロラさんが結ばれることを望んでいます。

「わたし、マカロンおねえちゃんのこと好きー! ママのことも好きだけど、マカロンおねえちゃんとパパがいっしょになっても、うれしー!」

 ――ミライちゃんは純粋ですね。
 何よりも、自らの意志に正直です。

 ミライちゃんが認めてくれたのならば、お姉ちゃんが自らの気持ちを押さえ込むこともありませんね。

「お姉ちゃん。ここは思い切って、ゼロラさんに告白しに行きましょう」
「そ、そんなこと言ったって……。ゼロラさんの気持ちも――」
「マカロンさん! じれったいですね! 弟のラルフルは、思い切ってアタシに告白したのに!」

 お姉ちゃんに対する、自分とミリアさんの告白コールが押し寄せます。
 お姉ちゃんもいざとなると押しが弱いですね。
 このままじゃ、ゼロラさんとの関係に進展なんてありませんよ?





「それじゃあねー! このお花持っていけばいいと思うのー!」
「あっ! ミライちゃん!? それはアタシがラルフルから貰った――」

 そんな自分達三人に、ミライちゃんまで割り込んできました。
 ミライちゃんはミリアさんが持っていた、清白蓮華のしおりに手を伸ばしています。

 ミライちゃん。それは自分がミリアさんにプレゼントしたものです。
 お姉ちゃんがゼロラさんに告白するのに、使えるものではありませんよ?





 ――カッ!!





「え!? な、なんですか!?」
「ミリアちゃんのしおりが……光った!?」

 ミライちゃんがミリアさんのしおりにかすかに触れたその時、突如強い光が辺りを覆い隠しました。

「な、なにこれー!? なんなのー!?」
「これってまさか、ミライちゃんの力に反応してる!?」

 ミライちゃんとミリアさんも突然の事態に、動揺しています。
 ですがミリアさんの言う通り、これはミライちゃんと清白蓮華が共鳴したことで起こった現象――
 そう考えるのが自然な気がします。

「くうぅ……! この光は……!?」
「い、意識が……!?」

 その光は自分とお姉ちゃんを包んで行きます。

 まるでその光に意識を吸い取られるかのように、自分は瞼を閉じてしまいました――
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