記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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最終章 それが俺達の絆

第445話 決戦・【最盛の凶獅子】③

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「さて……今のところはゼロラはんの優勢や。俺もちっとばかし、次の一手を考えんとなぁ……!」

 覚悟を決めなおしたシシバは、一度戦況を見つめなおした。
 ただ攻めるだけでは、わずかとはいえゼロラの優勢が続く。
 そのままではシシバの敗北は免れない。

 機械の左目によって、最盛期の力を取り戻したシシバ。
 もちろんその技も全てを完全に使えこなせるようになったことを、シシバはこれまでの戦いで実感していた。



「……せやな。まずは"あの技"から使うてみるか……!」

 考えがまとまったシシバは、再度ゼロラに対して構える。
 拳を固く握り、再び動き出す――

「見せたるわ……! 最盛期の力を取り戻したからこそできる、俺流の<ジークンドー>をなぁあ!!」

 先程までとは違い、シシバはタイミングを見計らうように間合いを取る。
 そして始まるシシバお得意の、ゼロラでもギリギリ目で追えるレベルの超高速移動――
 シシバが纏う<赤色のオーラ>が残影として残るほど、素早い動きでゼロラを撹乱する。

「今度は以前と同じ戦い方か……!?」

 シシバの動きを見て、ゼロラも身構える。
 以前と同じ戦い方ならば、シシバはゼロラに向かう時には正面を向いて突っ込んでくる。
 だが今のシシバがそうするとは思っていなかった。
 両目を取り戻したシシバなら、どの角度からでも攻撃は可能と読んだ――





「左か!?」


 ガチィインッ!!


「キシシシ! ここまでは読みおるよなぁ……!」

 ゼロラはシシバの動きを読み、左から襲い掛かるシシバの右拳をガードした。
 ゼロラの左腕とシシバの右腕が完全に密着した状態――



 ――シシバの狙いはそれであった。



「<鬼勁きけい>!!」



 ――ズギャァアアン!!



「うぐぉお!? こ、この威力は!?」

 密着状態から放たれたのは、シシバが得意とする大技――<鬼勁>。
 <ジークンドー>にあるゼロ距離からのパンチ技――<寸勁>に魔力を交えることで、シシバなりにアレンジした"生身の爆弾"とも言える技。
 この技も"ゼロ距離の感覚"を触れてからでないと測れなかった今までと違い、"触れる前から測れる"ようになったことで、その威力はゼロラのガードをも弾き飛ばす程になっていた。

「これで終わるわけ……ないやろがぁあ!!」

 さらにシシバは追撃へと移る。
 ガードが弾かれたことで体勢が崩れたゼロラに対し、今度は回し蹴りを放つ。


 ドゴォオン!!


「フングゥウ!!」
「ほーう……。耐えおるか……!」

 腕によるガードが間に合わないと判断したゼロラは、全身に力を込めて耐えきる構えをとる。
 シシバの回し蹴りが横腹へとめり込み、その体もわずかにずれる。
 それでもゼロラはその一撃を耐えきり、反撃の拳を振り下ろそうとした――





「<鬼勁>!!」
「なっ……!?」


 バギャァアアン!!


 ――その瞬間、シシバが再度<鬼勁>を放つ。
 それも今度は手からではなく、回し蹴りによってゼロラの腹にめり込ませた足からだ。

「ゴ、ゴフゥ!?」

 その一撃をまともに食らい、ゼロラの口から鮮血が溢れ出す。
 どれだけ守りを固くしても、内臓まで届くほどの威力――

「――ングゥウ!!」
「チイィ! これまで耐えおるんか!? そっちも人のこと言えへん、大概の"化け物"やで……!」

 ――それでもゼロラは踏みとどまり、シシバへ反撃の拳を振り下ろす。
 だがゼロラが受けたダメージは大きい。
 ゼロラの拳はシシバにあっさり読まれ、再度二人の距離が離れる。

「ゲホッ……! その<鬼勁>って技……足でもできるのかよ……!?」
「足どころか、やろうと思えば全身どこからでも放てるな。両目が健在の俺ならば、触れてさえいれば直撃やで……!」

 シシバの言っていることは事実だった。
 距離感を完全に掴めるようになったシシバなら、<鬼勁>を放つ体の部位など関係ない。
 体内の力の流れと魔力を混ぜ合わせ、相手の体へとその流れを解き放つこと――
 それさえできれば、<鬼勁>を放つ場所など関係がない。

 ガードさえ突き破る技を、シシバはその手に取り戻していた――

「せやけど……まさかあんさんが<鬼勁>を耐えて、反撃に移るとは思わんかったで」
「一発の威力は上がったみてえだが、手数自体は減ってるからな……」

 強いて弱点を挙げるなら、その手数。
 <鬼勁>を放つことに集中するため、シシバの手数はこれまでよりも大幅に減っていた。
 無論、それを覆す程の威力が<鬼勁>にはある。

 それでもシシバはまだ満足していなかった。
 <鬼勁>をまともに食らいながら、それでも反撃へ転じてくるゼロラ――
 これまでのゼロラの底力をよく知るからこそ、シシバは更なる一手を打とうとした――

「……こないなったら、俺の正真正銘の必殺技で、あんさんを圧倒させてもらおか……!」

 そう口にした後、シシバは全身を脱力させる。

「その構え……例の無差別攻撃か?」

 ゼロラも見覚えがある、シシバの構え。
 シシバが自身のスピードを最高速まで引き上げるための予備動作だが――

「今回は別の技や。両目を取り戻し、最盛期の力と技を取り戻した俺やからこそできる、切り札ってやつや……!」

 ――シシバが用意しているのは別の技だった。


 シュゥウウンッ! シュゥウウンッ!


 初手の動きこそこれまでと同じ、自らのスピードを最大限に活かした超高速移動。
 これまでと違い、ゼロラの位置を確認しながら、シシバは<赤色のオーラ>による残像を作りつつ、その周囲を動き回る。

「くっ!? 本当に分身してるように見える速さだ……!」

 シシバが残す残像は、ゼロラの目にも色濃く写っていた。
 ある程度動き終えると、シシバはゼロラへと向かい始める――





 ――その両脇には、シシバが残した残像がはっきりとした形となり、シシバの動きに合わせて動いていた。





「馬鹿な!? まさかこの残影は――」
「分かったか!? この残像は……幻覚とかやない!!」

 そこからゼロラへ放たれる、"三連続"の回し蹴り――

 シシバの残像は、確かな質量を持っていた――



「これこそが俺の切り札――<獅子重録影>や……!」
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