記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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最終章 それが俺達の絆

第444話 決戦・【最盛の凶獅子】②

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「シシバァアア!!」
「ゼロラァアア!!」

 一度は距離の離れたゼロラとシシバだったが、再度互いに駆け寄り、互いの攻撃をぶつけ合う。


 ドギャン! バギャン! ゴギャン!


 それぞれのラッシュが衝突し、周囲に乾いた音を何度も響かせる。
 そして衝突音と共に発生する衝撃波が、大気をも震わせていた――

「くっ!? とても人間の出せるスピードとは思えねえ……!」
「キーシシシ! 【伝説の魔王】が弱気やなぁ!? 最初に戦った時も言うたが……俺はれっきとした人間やでぇえ!!」

 ラッシュ勝負はシシバの優勢が続いていた。
 ゼロラも再度シシバの腕や足を掴み、投げ技に打って出ることもあったが、シシバはすぐに適応してくる。
 何度投げ飛ばされようと、即座に体勢を立て直し、打撃によるインファイトを速攻で仕掛ける。
 【伝説の魔王】としての記憶が蘇ったゼロラでも、シシバ程スピードに――特に攻撃の手数に特化した相手は記憶になかった。

「流石だな、シシバ。今のお前なら、ユメにだって勝てそうだ」

 ゼロラは心の底からそう感じた。

 シシバはその昔、【慈愛の勇者】ユメに一度負けている。
 だが今のシシバの実力は、その当時とは違う。
 年月が経ったことによる実力の向上もあるが、最大の変化はシシバが"隻眼の状態から戻った"ことにあった。

 シシバはこれまで隻眼と視力低下というハンデを背負い、全力を出せなかった。
 そのハンデがなくなったことで、シシバは確かに最盛期の力を取り戻していた。

 だがそれ以上に、"これまでのハンデがなくなった"ことが、シシバに更なる力を引き出させていた。
 不自由な状態でまともに全力を出せなかったこれまでとは違う。
 縛られた鎖から解き放たれた獅子は、その狂った本性と共に、かつてないほどの実力を発揮させていた。

「俺もここまで動けるようになるとは思わんかったわ。これなら、あんさんにももう負けへん――」
「それでも俺は……お前に勝つ!!」

 ゼロラも想像以上の実力を発揮するシシバに、ただ押し負けるつもりはなかった。
 全身に力を込め、肉体そのものの強度を高める――

「ドアホが! 隙だらけやでぇ!!」


 ドゴォオ!!


 シシバはゼロラが力を込めたことでできた隙を逃さず、その拳を全力で腹へとめり込ませる。

 だが――



「悪いが……まだまだだ……!」
「んなっ……!?」

 ――ゼロラはそれに耐え抜いた。
 そして、逆に攻撃後で隙ができたシシバに対し――

「オラァアア!!」
「ンガァア……!?」

 ――拳を振り下ろし、地面へと叩きつけた。
 <灰色のオーラ>を纏ったことで、威力を増したその一撃。
 いくら距離感を取り戻したシシバでも、元々の打たれ弱さを完全に克服したわけではない。
 即座に地面を這うようにしてゼロラから離れ、体勢を立て直すシシバだったが――

「アガァ……!? な、成程な……。『肉を切らせて骨を断つ』……ちゅうところか……!」

 ――そのダメージは甚大であった。
 体勢を立て直すのにも、ふらついて苦労する様子がゼロラにも伺えた。

「ハァ、ハァ……! 俺もお前相手に、無傷で勝てるとは思ってねえよ……!」
「キシシシ……! やってくれるやないかい……!」

 ゼロラにも相応のダメージはあったが、それでもシシバに与えたダメージは大きかった。
 シシバもゼロラの作戦を理解していた。

 "手数勝負"のシシバに対し、ゼロラは"一撃勝負"を仕掛ける作戦をとった。
 どれだけ<灰色のオーラ>で身体能力を向上させても、同じく<赤色のオーラ>を纏わせたシシバのスピードを超えることは叶わない。
 それならばとゼロラは、パワー勝負に集中する道を選んだ。

「まるで、サイバラのアホみたいな戦い方やな……!」
「実際、あいつの戦い方を真似ている。俺と全力でぶつかった時のあいつは、今のお前にも引けを取らない強さだったぜ?」

 そしてその戦い方は、かつて戦ったサイバラのスタイルの模範。
 ゼロラの身に染みついた経験が可能にした、スタイルチェンジスキル――

「おもろい……おもろいでぇ! ゼロラはん! もっと……もっと俺を楽しませろやぁああ!!」

 ――そんなゼロラの戦い方を見て、シシバは再度ゼロラへと突撃した。
 やられたことへの執心などない。
 あるのはただ、更なる高みを見せてくれた目の前の男への興味のみ――

「ハイィィヤァァア!!」
「オォォルゥアァァア!!」


 ボゴォオ! ドゴォオ!


 シシバとゼロラ。互いのパンチとキックが再び入り乱れる。

「ンゴァア!?」
「こんなもんか……? シシバァアア!!」

 シシバの攻撃を食らいながらも、ゼロラは確実に反撃を続ける。
 その反撃を食らっても、シシバが攻撃の手を緩めることはない。
 全身から沸き立つ<赤色のオーラ>が収まることはなく、シシバの闘争心に陰りはない。

 何度も何度も攻防が続き、そのたびに周囲へと衝撃波が飛び散る。
 それでも戦況はややゼロラに傾いており、シシバがわずかに劣勢となっていた。

「あぁ……楽しいなぁ……! リョウの命がかかっとるのに、この喧嘩の時間が楽しくてしゃーないわ……!」

 それでもシシバは笑っていた。
 流石に自身に重なってきたダメージの方が大きく、口元から溢れてきた血を拭いながらも、今この瞬間を盛大に歓迎していた。

「不服ではあるが、俺もだぜ……! ミライのこともあるが、最初に言った通り、お互いに賭けるものがある以上――」
「ああ。細かい考えは抜きや。全力でこの喧嘩を続けようやないか……!」

 ゼロラも同じように、この戦いを受け入れていた。
 人質という理由で始まった勝負だったが、もう細かいことは関係ない。
 二人の男は各々がただ勝利のために、さらに闘志を燃やし始めた。

 <灰色のオーラ>と<赤色のオーラ>は、夜の城門でさらにその輝きを強くする――
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