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怪鳥との決闘編
ep69 あんたはお呼びじゃない!
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「な、なんだよ? 鷹広のおっちゃんが、今更アタシに何の用さ?」
「相変わらず、大人への礼儀を知らん姪っ子だ。まあ、今はそのことも大目に見てやろう」
タケゾーと思ってドアを開けたら、そこに立っていたのはアタシの叔父、鷹広のおっちゃんだ。
ただでさえ嫌な夢を見て寝覚めが悪いのに、これはさらに調子が狂う。
鷹広のおっちゃんは工場を勝手に売却した件に始まり、アタシが警察機関から受けた依頼による報酬をネコババしようとする発言をしたりで、ここのところの心証は最悪だ。
「何か用事でもあるんでしょ? だけど、アタシも今日は人と会う約束があるんだけど?」
「ほう? それは赤原のところの子せがれとか? どうしてまた、あんな奴と会うんだ?」
「おっちゃんには関係ないだろ? こっちも用事があるんだから、今日はもう帰ってよ」
そんなわけで、アタシもおっちゃんとは話もしたくない。
自分でも子供っぽいとは思うけど、どうにもこの苛立ちを抑えられない。
タケゾーとの交際についても、おっちゃんには話したくない。
「まあ聞け。今日は隼のためにいい話を持ってきた。これがうまくいけば、あの工場を取り戻すことだってできるぞ?」
「そ、それって本当なの!?」
「ああ。わしの話を呑んでくれればな」
そうして鷹広のおっちゃんがここにやって来た理由だが、なんと空鳥工場を取り戻すという夢のような話。
そのための条件が何かは分からないが、これは流石にアタシも聞き逃せない。
多少の条件ならば、無理をしてでも呑む価値はある。アタシにとって、あの工場は今でも本当の実家なんだ。
なんだ。おっちゃんもたまにはいい話を用意してくれて――
「わしの方で、隼の縁談話を用意しておいた。この資料の男と結婚すれば、相手の資産で工場を買い戻せるぞ」
「……は?」
――そんな期待をわずかに抱いたアタシが馬鹿だった。
空鳥工場を買い戻す条件というのは、おっちゃんが決めた相手とアタシが結婚するということ。そんな話、勝手に進めないで欲しい。
今のアタシは幼馴染のタケゾーと交際中。これでも、こまめにSNSでやり取りするぐらいには熱々カップルだ。
それだというのにどこぞの知らない男と急に結婚だなんて、アタシには耐えられない。
「悪いんだけど、そんな条件だったら、アタシは御免被るよ」
「何を言っている? お前のような傷ものの体であっても、結婚してくれる相手がいるのだぞ? 職も収入も安定しているし、不満はないだろう?」
条件を聞いたアタシは即座に断るも、おっちゃんは引き下がらない。
持っていた縁談相手の資料をこちらに渡し、目を通すように促してくる。
その資料を見る限り、確かに結婚するならば悪くない相手かもしれない。
年齢はアタシより上だが、写真の顔は結構ダンディーなタイプのイケメン。収入面についても、営業職としてかなり高収入だ。
てか、勤め先が星皇カンパニーの本社じゃん。星皇社長のお膝元じゃん。
まあ、これらの条件だけ見ても決して悪くはない。
――でも、タケゾーより魅力的には見えない。
「アタシ、今付き合ってる相手がいるんだよね。だから、たとえこの縁談で工場が戻ってくるとしても、アタシはお断りだよ」
一応は彼氏がいるという体裁で断りを入れるが、たとえ彼氏がいなかったとしてもアタシは断っていただろう。
そもそもの話、アタシはこういう金目当ての結婚なんて嫌だ。これでも、結婚するならしっかりと交際してからにしたい。
ついこの間までは『結婚するなら相手はロボットでもいい』みたいに考えていたが、アタシの考えにだって変化はある。
タケゾーと交際してみても分かったのだが、ずっと一緒にいる相手だからこそ、互いに心許せる相手と結ばれたい願望が強くなってくる。
だから、今のアタシはどこの馬の骨とも分からない相手との結婚なんて、どんな好条件を積まれてもお断りだ。
「隼が今付き合ってる相手というのは、まさか赤原の子せがれか?」
「……そうだよ。何か文句でもあんの?」
「あいつはやめておけ。仕事も保育士で、収入だって少ないだろ? 警部だった親父さんが生きていれば、まだ考えられなくもなかったが――」
「いい加減にしなよ……! タケゾーのことを馬鹿にすんなぁああ!!」
パシィインッ!
さらに鷹広のおっちゃんはアタシとタケゾーが交際していることを聞くと、そのことにケチまでつけ始めた。
流石にこれはアタシも思わずカッとなる。おっちゃんの頬目がけて、ビンタを打ち込んでしまった。
そうせずにはいられなかった。アタシのことはいくら蔑んでくれても構わないが、アタシ以外の人を蔑まれるのは我慢ならない。
その相手がタケゾーとなれば尚更だ。
「……いい加減にするのはそっちだぞ? 隼? わしがこうやっていい話を持ってきたのに、それを断る馬鹿な姪っ子がおるかぁ!?」
「い、痛い!? は、放しなっての!」
「こうなったら馬鹿なお前に代わって、わしが縁談を進めてやる! とにかくついてこい!」
そんなアタシの態度が気に障ったのか、鷹広のおっちゃんはアタシの腕を乱暴に引っ張りながら、無理矢理連れ出そうとしてくる。
これは流石にアタシも勘弁願いたい。生体コイルを稼働させて、無敵の魔女パワーで振りほどいてしまおう。
そう思ったのだが――
「さあ! わしの車に乗れ! 今すぐにでも、相手方に挨拶しに行くぞ!」
「ひいぃ……!? く、車……!?」
――少し外に出た先にあったものを見て、アタシの体は思わず硬直してしまう。
そこにあったのはおっちゃんの車だ。おっちゃんはアタシを車に乗せ込み、連れ出そうとしている。
「い、嫌だ! く、車だけは……車で走るのだけは……!」
「そんなワガママを言うんじゃない! これ以上、わしの手を煩わせるな!」
以前タケゾー父に仮逮捕された時と違い、今回は車に乗ることへの恐怖が勝ってしまう。
あの時は手錠をかけられたりで混乱していたが、今回はおっちゃんが手を引っ張ってきて、なんとしてもアタシを車に乗せて連れ出す気だ。
おっちゃんだって、アタシが車を苦手としているのは知っている。それなのにこうやって無理矢理乗せようとしてくるのが、逆に恐怖心に拍車をかけてしまっている。
――アタシの頭は車への恐怖でパニックだ。こんな状況で乗りたくなんかない。
そんな心境のせいで体に力も入らない。
誰でもいいから、アタシを助けて――
「……なあ、叔父さん。隼を無理矢理車に乗せようとして、何をするつもりだ?」
「タ、タケゾー……!?」
「相変わらず、大人への礼儀を知らん姪っ子だ。まあ、今はそのことも大目に見てやろう」
タケゾーと思ってドアを開けたら、そこに立っていたのはアタシの叔父、鷹広のおっちゃんだ。
ただでさえ嫌な夢を見て寝覚めが悪いのに、これはさらに調子が狂う。
鷹広のおっちゃんは工場を勝手に売却した件に始まり、アタシが警察機関から受けた依頼による報酬をネコババしようとする発言をしたりで、ここのところの心証は最悪だ。
「何か用事でもあるんでしょ? だけど、アタシも今日は人と会う約束があるんだけど?」
「ほう? それは赤原のところの子せがれとか? どうしてまた、あんな奴と会うんだ?」
「おっちゃんには関係ないだろ? こっちも用事があるんだから、今日はもう帰ってよ」
そんなわけで、アタシもおっちゃんとは話もしたくない。
自分でも子供っぽいとは思うけど、どうにもこの苛立ちを抑えられない。
タケゾーとの交際についても、おっちゃんには話したくない。
「まあ聞け。今日は隼のためにいい話を持ってきた。これがうまくいけば、あの工場を取り戻すことだってできるぞ?」
「そ、それって本当なの!?」
「ああ。わしの話を呑んでくれればな」
そうして鷹広のおっちゃんがここにやって来た理由だが、なんと空鳥工場を取り戻すという夢のような話。
そのための条件が何かは分からないが、これは流石にアタシも聞き逃せない。
多少の条件ならば、無理をしてでも呑む価値はある。アタシにとって、あの工場は今でも本当の実家なんだ。
なんだ。おっちゃんもたまにはいい話を用意してくれて――
「わしの方で、隼の縁談話を用意しておいた。この資料の男と結婚すれば、相手の資産で工場を買い戻せるぞ」
「……は?」
――そんな期待をわずかに抱いたアタシが馬鹿だった。
空鳥工場を買い戻す条件というのは、おっちゃんが決めた相手とアタシが結婚するということ。そんな話、勝手に進めないで欲しい。
今のアタシは幼馴染のタケゾーと交際中。これでも、こまめにSNSでやり取りするぐらいには熱々カップルだ。
それだというのにどこぞの知らない男と急に結婚だなんて、アタシには耐えられない。
「悪いんだけど、そんな条件だったら、アタシは御免被るよ」
「何を言っている? お前のような傷ものの体であっても、結婚してくれる相手がいるのだぞ? 職も収入も安定しているし、不満はないだろう?」
条件を聞いたアタシは即座に断るも、おっちゃんは引き下がらない。
持っていた縁談相手の資料をこちらに渡し、目を通すように促してくる。
その資料を見る限り、確かに結婚するならば悪くない相手かもしれない。
年齢はアタシより上だが、写真の顔は結構ダンディーなタイプのイケメン。収入面についても、営業職としてかなり高収入だ。
てか、勤め先が星皇カンパニーの本社じゃん。星皇社長のお膝元じゃん。
まあ、これらの条件だけ見ても決して悪くはない。
――でも、タケゾーより魅力的には見えない。
「アタシ、今付き合ってる相手がいるんだよね。だから、たとえこの縁談で工場が戻ってくるとしても、アタシはお断りだよ」
一応は彼氏がいるという体裁で断りを入れるが、たとえ彼氏がいなかったとしてもアタシは断っていただろう。
そもそもの話、アタシはこういう金目当ての結婚なんて嫌だ。これでも、結婚するならしっかりと交際してからにしたい。
ついこの間までは『結婚するなら相手はロボットでもいい』みたいに考えていたが、アタシの考えにだって変化はある。
タケゾーと交際してみても分かったのだが、ずっと一緒にいる相手だからこそ、互いに心許せる相手と結ばれたい願望が強くなってくる。
だから、今のアタシはどこの馬の骨とも分からない相手との結婚なんて、どんな好条件を積まれてもお断りだ。
「隼が今付き合ってる相手というのは、まさか赤原の子せがれか?」
「……そうだよ。何か文句でもあんの?」
「あいつはやめておけ。仕事も保育士で、収入だって少ないだろ? 警部だった親父さんが生きていれば、まだ考えられなくもなかったが――」
「いい加減にしなよ……! タケゾーのことを馬鹿にすんなぁああ!!」
パシィインッ!
さらに鷹広のおっちゃんはアタシとタケゾーが交際していることを聞くと、そのことにケチまでつけ始めた。
流石にこれはアタシも思わずカッとなる。おっちゃんの頬目がけて、ビンタを打ち込んでしまった。
そうせずにはいられなかった。アタシのことはいくら蔑んでくれても構わないが、アタシ以外の人を蔑まれるのは我慢ならない。
その相手がタケゾーとなれば尚更だ。
「……いい加減にするのはそっちだぞ? 隼? わしがこうやっていい話を持ってきたのに、それを断る馬鹿な姪っ子がおるかぁ!?」
「い、痛い!? は、放しなっての!」
「こうなったら馬鹿なお前に代わって、わしが縁談を進めてやる! とにかくついてこい!」
そんなアタシの態度が気に障ったのか、鷹広のおっちゃんはアタシの腕を乱暴に引っ張りながら、無理矢理連れ出そうとしてくる。
これは流石にアタシも勘弁願いたい。生体コイルを稼働させて、無敵の魔女パワーで振りほどいてしまおう。
そう思ったのだが――
「さあ! わしの車に乗れ! 今すぐにでも、相手方に挨拶しに行くぞ!」
「ひいぃ……!? く、車……!?」
――少し外に出た先にあったものを見て、アタシの体は思わず硬直してしまう。
そこにあったのはおっちゃんの車だ。おっちゃんはアタシを車に乗せ込み、連れ出そうとしている。
「い、嫌だ! く、車だけは……車で走るのだけは……!」
「そんなワガママを言うんじゃない! これ以上、わしの手を煩わせるな!」
以前タケゾー父に仮逮捕された時と違い、今回は車に乗ることへの恐怖が勝ってしまう。
あの時は手錠をかけられたりで混乱していたが、今回はおっちゃんが手を引っ張ってきて、なんとしてもアタシを車に乗せて連れ出す気だ。
おっちゃんだって、アタシが車を苦手としているのは知っている。それなのにこうやって無理矢理乗せようとしてくるのが、逆に恐怖心に拍車をかけてしまっている。
――アタシの頭は車への恐怖でパニックだ。こんな状況で乗りたくなんかない。
そんな心境のせいで体に力も入らない。
誰でもいいから、アタシを助けて――
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