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1章
ルシアの生い立ち 両親の死
しおりを挟むルシアは、国王が番にして奥の宮に囲うオメガとの間に生まれた。オメガの番は、正式な側室とは認められず密やかに囲われる。ルシアの母もそのように囲われる存在だった。
国王とルシアの母は、ただの番ではなく、運命の番だった。アルファとオメガの運命の存在は稀なことで伝説とさえ言われた。奇跡的に出会い番った国王とルシアの母。当然その愛も深く大きかった。
深く愛し合う運命の番から生まれたルシア、当然のごとく両親の愛を一身に受けて成長した。
オメガの番から生まれてきた子供は、アルファの場合は非嫡出子の扱いではあるが王子王女として認められた。しかしオメガは認められない。
オメガの子は、たとえ王の子であろうと悲惨な運命だった。いや、むしろ王の子であるので、他国へ貢物にされたり、家臣に下賜品のように下げ渡された。
その後の運命は、相手次第。まれに大切にされることもあったが、奴隷のような状態になることも周知の事実だった。
ルシアがオメガと判明した時、国王はこの哀れな子の将来を憂いた。国王はルシアの母を、運命の番として心から愛した。
愛する番から生まれたルシアも愛しい。母に似て美しく、優しいルシアを国王は心から可愛がった。そのルシアを下賜品のような扱いで他へやることなど考えられなかった。
しかし、存在が明らかになればそれは避けられない。国王と言えど長年の慣習に抗うのは難しい。
故にルシアは、密やかにこの奥の宮で、母と共に暮らしてきた。乳母のセリカ他、少しの使用人、そして時折訪れる父王、それがルシアの世界の全てだった。
外の世界を知らないルシアは、不満に感じることも無く、奥の宮で穏やかに暮らした。オメガ故、華奢で儚げな風情ではあるが、特段問題も無く美しく健やかに成長した。
国王もそしてルシアの母も、美しく成長するルシアの将来を思った。
ルシアは、未だ発情期を経験していないが、十五歳という年齢からするとそろそろかもしれない。
番のいないオメガの発情期は辛い。抑制剤もあるが、やはりアルファが抑えてやるのが一番良い。
ルシアの番をどうするか? 国王そして母も愛しいルシアを手放したくはなかった。手放して国王の眼が届かなければ、どう扱われるか分かったものではない。この奥の宮に通って、ルシアの発情を抑えてくれるアルファが理想だった。
国王は、信頼できるアルファである家臣の誰かにと考え、あれこれと人選を考えてはいたが、まだ先のこと急ぐことでもないとも思っていた。
国王の庇護は絶大で、不安はなかった。壮年の国王の時代は長く続くと国王自身も、そして周りの誰もが考えていた。
そのような中での、国王の突然の崩御。奥の宮に知らせが届いた時の皆の驚愕は相当なものだった。
ことに、ルシアの母の嘆きは大きかった。運命の番の死は、半身をもがれるに等しい。母としてルシアを思いやる余裕とてなく、運命の番の後を追った。ルシアは、一人取り残された。
奥の宮という狭い世界ではあったが、優しい両親の庇護のもと幸せに暮らしてルシアは、瞬く間に両親の庇護を失った。
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