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2章
兄王との出会い
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王である父の突然の崩御。王太子であるフェリックスは速やかに即位し国王になった。
王太子として、父王を補佐し助けてきたが、何分余りにも突然の崩御に忙しい日々を送っていた。
「陛下、奥の宮の件ですが」
側近の声掛けにフェリックスは頷いた。
「先の陛下の番は、後を追ったようです」
やはりそうか、亡き父のオメガの番は運命の相手と聞いていた。番のアルファが先だった時、残されたオメガが後を追うのは、珍しいことではない。ましてや運命の番なら……痛ましいが致し方ない。
「それでなんですが……」
言いよどむ側近に、まだ何ぞあるのか? と思いつつ先を促した。
「実は、子供がいるのです」
「子供? 誰のだ」
「先の陛下と、後を追ったオメガとの間の子供でございます」
「――子供がいたのか……」
初めて聞く話にフェリックスは驚愕した。まさか子供がいたとは……。
「いったいどういうことじゃ? 何故今まで公にされなんだのじゃ?」
側近は、自身も驚き詳しく聞き及んだことをフェリックスに伝えた。
「なるほど……それだけ父上の愛情が深く大きかったといえるな……」
そうであるならば、このまま捨て置くことはできない。元々奥の宮の存在は知っていたため、父亡きあと、自分が対処せねばと調べさせたことだ。父の子供であれば自分にとっても弟になる。フェリックスは奥の宮を自ら尋ねることにした。
フェリックスは奥の宮尋ねるべく、王宮の奥の庭園を進んで行った。側近の「陛下、もうすぐです」の言葉と、得も言われぬ芳香を感じたのはほぼ同じだった。
この芳香は、間違いなくオメガのもの。随行する者にアルファを入れずに良かったと思う。これだけの芳香、アルファには毒だ。しかしベータは何も感じないようだ。
それにしても、これだけの芳香を放つオメガとは……フェリックスは未だ会ったことのない弟に思いを馳せた。
ルシアは緊張していた。今日は朝から何も手につかない状態だった。兄上はどんな方だろう。いやそもそも自分を弟とは思ってくださらないだろう。セリカも呼びかけは「先ずは陛下とお呼びください」と言った。
怖い方だったら……この先自分はどうなるのだろう? ルシアの不安は尽きない。
不安と緊張で、じっとしていることができず歩き回っていると「陛下がお着きになられました」とセリカが呼びに来た。
ルシアは、セリカの背に隠れるようにして門まで行き、国王である兄を迎えた。
フェリックスは威厳があるが、しかし穏やかにルシアに対した。
父上に似ておられるとルシアは思った。父に似た優しい表情、そして匂いにルシアは安堵する。体の緊張からくる強張りが解けるのを感じた。
「そなたがルシアだな」
「はい、私がルシアでございます。陛下には態々のご足労申し訳ございません」
「そのように堅苦しいことは申さずともよい。余はそなたの兄じゃ、兄と呼ぶがよいぞ」
なんとお優しい! 「あ、兄上様……」嬉しさのあまり上ずった声で呼びかけた。
そんなルシアに、フェリックスは満足そうに頷いた。
「此度は、父上のこと、そしてそなたの母のことまこと残念じゃった。そなたもさぞや不安であろう。じゃが心配せずともよいぞ。これからは、亡き父上に変わって余がそなたの事は守ってやるからな」
その言葉は、ルシアにとって、両親の死の時から続いていた、不安からの解放だった。
「ありがとうございます、兄上様」
短いがルシアの心からの言葉だった。
広くはないが、亡き父王が贅を凝らした居間で二人は暫しお茶の時間を持った。
フェリックスはこの居間を見るだけでも亡き父王が、番とその子であるルシアを大切にしてきたことが分かると思った。そしてルシアも、決して使用人の数は多くないようだが、大切にかしづかれて育ったことがよく分かり、好ましかった。
ルシアは、兄と共にする初めてのお茶の時間を心から楽しんだ。父が生前尋ねて来ると、この居間で母と三人でお茶を楽しんだ。
あの幸せはもう二度と帰ってこないが、今は兄と共にするこの時間が楽しい。最初の印象以上に兄は父に似ている。兄は、父に代わってそなたを守ると言ってくださった。お父様のように慕っても、甘えてもいいのだろうか? ルシアが考えているとまるで心を読まれているように、フェリックスは言った。
「先程も申したが、余は父上の代わりじゃ。父上にしたように余に甘えてよいぞ」
嬉しそうに頷くルシアが、可愛らしくてフェリックスはルシアの頭から頬を優しく撫でてやると、ルシアの頬はほんのり紅に染まる。それが益々可愛く、抱きしめて唇を奪いたくなったが、さすがにそれは早すぎると必死に自制した。
王太子として、父王を補佐し助けてきたが、何分余りにも突然の崩御に忙しい日々を送っていた。
「陛下、奥の宮の件ですが」
側近の声掛けにフェリックスは頷いた。
「先の陛下の番は、後を追ったようです」
やはりそうか、亡き父のオメガの番は運命の相手と聞いていた。番のアルファが先だった時、残されたオメガが後を追うのは、珍しいことではない。ましてや運命の番なら……痛ましいが致し方ない。
「それでなんですが……」
言いよどむ側近に、まだ何ぞあるのか? と思いつつ先を促した。
「実は、子供がいるのです」
「子供? 誰のだ」
「先の陛下と、後を追ったオメガとの間の子供でございます」
「――子供がいたのか……」
初めて聞く話にフェリックスは驚愕した。まさか子供がいたとは……。
「いったいどういうことじゃ? 何故今まで公にされなんだのじゃ?」
側近は、自身も驚き詳しく聞き及んだことをフェリックスに伝えた。
「なるほど……それだけ父上の愛情が深く大きかったといえるな……」
そうであるならば、このまま捨て置くことはできない。元々奥の宮の存在は知っていたため、父亡きあと、自分が対処せねばと調べさせたことだ。父の子供であれば自分にとっても弟になる。フェリックスは奥の宮を自ら尋ねることにした。
フェリックスは奥の宮尋ねるべく、王宮の奥の庭園を進んで行った。側近の「陛下、もうすぐです」の言葉と、得も言われぬ芳香を感じたのはほぼ同じだった。
この芳香は、間違いなくオメガのもの。随行する者にアルファを入れずに良かったと思う。これだけの芳香、アルファには毒だ。しかしベータは何も感じないようだ。
それにしても、これだけの芳香を放つオメガとは……フェリックスは未だ会ったことのない弟に思いを馳せた。
ルシアは緊張していた。今日は朝から何も手につかない状態だった。兄上はどんな方だろう。いやそもそも自分を弟とは思ってくださらないだろう。セリカも呼びかけは「先ずは陛下とお呼びください」と言った。
怖い方だったら……この先自分はどうなるのだろう? ルシアの不安は尽きない。
不安と緊張で、じっとしていることができず歩き回っていると「陛下がお着きになられました」とセリカが呼びに来た。
ルシアは、セリカの背に隠れるようにして門まで行き、国王である兄を迎えた。
フェリックスは威厳があるが、しかし穏やかにルシアに対した。
父上に似ておられるとルシアは思った。父に似た優しい表情、そして匂いにルシアは安堵する。体の緊張からくる強張りが解けるのを感じた。
「そなたがルシアだな」
「はい、私がルシアでございます。陛下には態々のご足労申し訳ございません」
「そのように堅苦しいことは申さずともよい。余はそなたの兄じゃ、兄と呼ぶがよいぞ」
なんとお優しい! 「あ、兄上様……」嬉しさのあまり上ずった声で呼びかけた。
そんなルシアに、フェリックスは満足そうに頷いた。
「此度は、父上のこと、そしてそなたの母のことまこと残念じゃった。そなたもさぞや不安であろう。じゃが心配せずともよいぞ。これからは、亡き父上に変わって余がそなたの事は守ってやるからな」
その言葉は、ルシアにとって、両親の死の時から続いていた、不安からの解放だった。
「ありがとうございます、兄上様」
短いがルシアの心からの言葉だった。
広くはないが、亡き父王が贅を凝らした居間で二人は暫しお茶の時間を持った。
フェリックスはこの居間を見るだけでも亡き父王が、番とその子であるルシアを大切にしてきたことが分かると思った。そしてルシアも、決して使用人の数は多くないようだが、大切にかしづかれて育ったことがよく分かり、好ましかった。
ルシアは、兄と共にする初めてのお茶の時間を心から楽しんだ。父が生前尋ねて来ると、この居間で母と三人でお茶を楽しんだ。
あの幸せはもう二度と帰ってこないが、今は兄と共にするこの時間が楽しい。最初の印象以上に兄は父に似ている。兄は、父に代わってそなたを守ると言ってくださった。お父様のように慕っても、甘えてもいいのだろうか? ルシアが考えているとまるで心を読まれているように、フェリックスは言った。
「先程も申したが、余は父上の代わりじゃ。父上にしたように余に甘えてよいぞ」
嬉しそうに頷くルシアが、可愛らしくてフェリックスはルシアの頭から頬を優しく撫でてやると、ルシアの頬はほんのり紅に染まる。それが益々可愛く、抱きしめて唇を奪いたくなったが、さすがにそれは早すぎると必死に自制した。
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