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2章
兄王との出会い
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お茶の時間を一時ほど過ごした後、フェリックスは王宮に戻っていった。もっとゆっくりしたいが、何分今は忙しいから、また後ほどゆっくり来ると言い残しての、慌ただしい辞去だった。
お父様が急にお亡くなりになって、兄上様も大変なんだと、ルシアは初めて会った兄を思いやった。
フェリックスが奥の宮を訪れた三日後、奥の宮の執事、侍医、そして乳母のセリカは揃って国王からの呼び出しを受けた。
三人は幾分緊張の面持ちで国王に拝し、様々な命令を受ける。
それは、奥の宮に仕え、そこを生きる場としてきた三人にとって、喜ばしい命令だった。すなわち、奥の宮はルシアのために存続を許された。今後も今まで通り、否、ルシアの母に変わって、ルシアが奥の宮の新しい主として存続することになる。そういうことだった。
先の国王の崩御、そしてルシアの母の死から続いていた奥の宮に仕えるすべての者の不安が解消された。
ルシアも、三人の報告を聞いて、心から安堵した。父王の代わりに今後は、自分が守ろると言ってくださったことは本当だった。決して疑ったわけではないが、ルシアは改めて安心し、そして喜んだ。
こうして、奥の宮に再び穏やかな時が戻ってきた。優しい母がいないのは悲しいが、その穴はセリカが埋めてくれた。セリカは優しく、そして時には厳しく、文字通り母のような愛情をルシアに注いだ。
父がいない穴はフェリックスが埋めてくれる。父が時折訪れたように、フェリックスも訪れる。父が来た時、その胸に飛び込んで迎えたように、ルシアはフェリックスの胸に飛び込み抱きつく。
フェリックスもそんなルシアを、にこやかに、力強く受け止めてくれる。
ルシアは一心にフェリックスに懐いた。フェリックスが来ると、片時も離れず、フェリックスのどんな小さな仕種や表情も見逃さないと言うように見つめ続けた。
こうまで懐くルシアを、フェリックスも可愛がり、甘やかした。いつも、何かしらルシアの喜びそうな手土産を携えるのが常だった。
ルシアは、フェリックスの土産も勿論嬉しかったが、何よりもフェリックスが来てくれることが嬉しかった。だから、ごくまれに、フェリックスが急用のため来られなくなり、品物だけが届くと心底がっかりした。国王であるフェリックスは、多忙であり、それも仕方ないと理解はしているが、落ち込むのは止められない。
フェリックスの訪れを待ち望み、喜んで迎えるルシア。だから、フェリックスが帰る時は大変だった。笑顔でお送りしなければと思うのは常だが、いつもその瞳は涙で一杯だった。溢れそうになる涙を懸命に堪え見送るルシア。実際、涙はいつも堪えきらず溢れた。
フェリックスはフェリックスで、そんなルシアが心底愛しいく抱きしめたい衝動を必死に自制した。抱きしめたら帰れなくなる。さすがにそれは国王としてできない。
そういう時は、国王であることを呪いたくなるが、フェリックスは心の底から国王だった。真の国王であった。
生まれた時は、祖父である先々代の国王の御代だったが、その時から次期王太子、そして将来の国王として厳しく育てられた。自信を律することは当たり前として成長した。
常に国民を思い、国民の模範になることを考えてきた。そして、孤高の人でもあった。王者は孤独だと、王太子時代から思っていたが、実際に即位してその感は強まった。
フェリックスにとって、ルシアは王者の孤独を癒す唯一の存在と言えた。
政略結婚んで結ばれた王妃には、王女そして王子二人もでき良い関係ではあるが、王妃に癒されることはなかった。三人の子供も可愛くはあるが癒しとまでは言えない。
側室はいなかった。別に王妃一筋と言うほどの愛情ではなかったが、態々側室として迎えるまでの女はいなかった。
そういうなかでルシアと出会った。己に対する無条件の信頼が溜まらなく可愛いく、強烈な庇護欲を抱いた。
ルシアは、フェリックスの素の男の部分を刺激し、そして癒した。
フェリックスは、亡き父王のことを思った。多分、父も同じだったのだろう。故にルシアの母を深く愛したのだろう。それは、この奥の宮が証明していると思った。
全体に小さい造りではあるが、細かい部分にまで配慮が行き届いている。使用人たちも厳選したであろうと想像できる。
フェリックスは、ありがたいと思った。父が残してくれた遺産は多いが、これはその中でも秀逸だ。父が愛するオメガのために造った宮を、そのまま使わせていただく。
しかも我が愛するオメガは、父と父の最愛のオメガとの子。父も喜んでくれるだろう。
フェリックスの中で、ルシアを番にしようと思う気持ちは次第に強くなっていた。
しかし、それはまだ先のこと。ルシアに発情期が来てからになる。フェリックスは、ルシアの成長をその傍らで見守った。
お父様が急にお亡くなりになって、兄上様も大変なんだと、ルシアは初めて会った兄を思いやった。
フェリックスが奥の宮を訪れた三日後、奥の宮の執事、侍医、そして乳母のセリカは揃って国王からの呼び出しを受けた。
三人は幾分緊張の面持ちで国王に拝し、様々な命令を受ける。
それは、奥の宮に仕え、そこを生きる場としてきた三人にとって、喜ばしい命令だった。すなわち、奥の宮はルシアのために存続を許された。今後も今まで通り、否、ルシアの母に変わって、ルシアが奥の宮の新しい主として存続することになる。そういうことだった。
先の国王の崩御、そしてルシアの母の死から続いていた奥の宮に仕えるすべての者の不安が解消された。
ルシアも、三人の報告を聞いて、心から安堵した。父王の代わりに今後は、自分が守ろると言ってくださったことは本当だった。決して疑ったわけではないが、ルシアは改めて安心し、そして喜んだ。
こうして、奥の宮に再び穏やかな時が戻ってきた。優しい母がいないのは悲しいが、その穴はセリカが埋めてくれた。セリカは優しく、そして時には厳しく、文字通り母のような愛情をルシアに注いだ。
父がいない穴はフェリックスが埋めてくれる。父が時折訪れたように、フェリックスも訪れる。父が来た時、その胸に飛び込んで迎えたように、ルシアはフェリックスの胸に飛び込み抱きつく。
フェリックスもそんなルシアを、にこやかに、力強く受け止めてくれる。
ルシアは一心にフェリックスに懐いた。フェリックスが来ると、片時も離れず、フェリックスのどんな小さな仕種や表情も見逃さないと言うように見つめ続けた。
こうまで懐くルシアを、フェリックスも可愛がり、甘やかした。いつも、何かしらルシアの喜びそうな手土産を携えるのが常だった。
ルシアは、フェリックスの土産も勿論嬉しかったが、何よりもフェリックスが来てくれることが嬉しかった。だから、ごくまれに、フェリックスが急用のため来られなくなり、品物だけが届くと心底がっかりした。国王であるフェリックスは、多忙であり、それも仕方ないと理解はしているが、落ち込むのは止められない。
フェリックスの訪れを待ち望み、喜んで迎えるルシア。だから、フェリックスが帰る時は大変だった。笑顔でお送りしなければと思うのは常だが、いつもその瞳は涙で一杯だった。溢れそうになる涙を懸命に堪え見送るルシア。実際、涙はいつも堪えきらず溢れた。
フェリックスはフェリックスで、そんなルシアが心底愛しいく抱きしめたい衝動を必死に自制した。抱きしめたら帰れなくなる。さすがにそれは国王としてできない。
そういう時は、国王であることを呪いたくなるが、フェリックスは心の底から国王だった。真の国王であった。
生まれた時は、祖父である先々代の国王の御代だったが、その時から次期王太子、そして将来の国王として厳しく育てられた。自信を律することは当たり前として成長した。
常に国民を思い、国民の模範になることを考えてきた。そして、孤高の人でもあった。王者は孤独だと、王太子時代から思っていたが、実際に即位してその感は強まった。
フェリックスにとって、ルシアは王者の孤独を癒す唯一の存在と言えた。
政略結婚んで結ばれた王妃には、王女そして王子二人もでき良い関係ではあるが、王妃に癒されることはなかった。三人の子供も可愛くはあるが癒しとまでは言えない。
側室はいなかった。別に王妃一筋と言うほどの愛情ではなかったが、態々側室として迎えるまでの女はいなかった。
そういうなかでルシアと出会った。己に対する無条件の信頼が溜まらなく可愛いく、強烈な庇護欲を抱いた。
ルシアは、フェリックスの素の男の部分を刺激し、そして癒した。
フェリックスは、亡き父王のことを思った。多分、父も同じだったのだろう。故にルシアの母を深く愛したのだろう。それは、この奥の宮が証明していると思った。
全体に小さい造りではあるが、細かい部分にまで配慮が行き届いている。使用人たちも厳選したであろうと想像できる。
フェリックスは、ありがたいと思った。父が残してくれた遺産は多いが、これはその中でも秀逸だ。父が愛するオメガのために造った宮を、そのまま使わせていただく。
しかも我が愛するオメガは、父と父の最愛のオメガとの子。父も喜んでくれるだろう。
フェリックスの中で、ルシアを番にしようと思う気持ちは次第に強くなっていた。
しかし、それはまだ先のこと。ルシアに発情期が来てからになる。フェリックスは、ルシアの成長をその傍らで見守った。
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