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最終章
ルシア王太子妃に
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国王一家の許へ、参列者が順に祝いの言葉を述べに来る。ルシアはアレクシーと並んで、それらの言葉を高揚とした気持ちで受け止めていた。これほどにまで祝われて、空恐ろしい気持ちにもなる。
そこへ、今では近衛部隊の指揮官になっているフランソワが近寄り声を掛ける。
「両陛下ならびに、両殿下そしてエドワード様にはこれより王宮に戻っていただきます。既に王宮には両殿下を一目でも拝見し、祝意を表したい民衆で溢れております。否、王宮だけでなくここ神殿の周りも民衆で一杯でございます。」
その言葉に大きく頷いたフェリックスが、先ずは王妃と共に、国王専用馬車に乗り込む。続いて王太子専用馬車に乗り込もうと、アレクシーに手を引かれたルシアが姿を現すと、神殿の周りに詰めかけていた民衆に大きな喝さいが起こる。
そのあまりの大きさに戸惑うルシアへアレクシーが「ルシア、顔を上げて、手を振ってごらん」と声を掛ける。
素直に従うと、更に大きな歓声が起こり、ルシアは感激のあまり胸が一杯になる。
ルシアとアレクシーをのせた馬車は、国王王妃をのせた馬車の後ろを王宮に向かって進む。その沿道も人で溢れていた。今日は皆が王太子の結婚を祝い、国中が祝賀の気分で溢れているといってよかった。
ルシアも半ば興奮状態にあった。それでもどこか冷静に、こんなにも歓迎され、祝われる資格があるのか? と己に問う。そのルシアの思いを知っているかのようにアレクシーが言う。
「ルシア、そなたは奥ゆかしい故、これほどの賛辞に戸惑っておろう。だがこれは、正真正銘そなたへの賛辞。ただ、大切なのはこれからじゃ。この賛辞に、恥じぬようにせねばな。しかし、そなたなら大丈夫じゃ」
ルシアはアレクシーの言葉に感じ入る。さすがは王太子様、生れながらに王者の資質を持つ方だと思う。自分もこれからこのお方に従い、妃として恥じぬようにせねばと改めて心に誓った。
王宮に着いた国王一家は、バルコニーに出るため順に入り口に待機する。バルコニーの下にある庭園には、民衆で溢れているのが分かり、ルシアは足が震える。それを察したのか、アレクシーがルシアの背に手をやり、励ますように撫でる。アレクシーの手から温もりが伝わり、ルシアの心は安堵で満ちる。
エドワードが到着し全員揃ったところで、国王フェリックスが、皆に順に視線をやり、「良いな」と深く頷いた後、バルコニーに出る。大きな歓声が起こる。続いて王妃が出る。やはり大きな歓声が起こり、その後一旦静まる。次に出てくる人を息をつめて待ち望むという感じだ。
アレクシーが、ルシアの腕を取り二人は一緒にバルコニーに出た。すると一際大きな歓声が沸き起こる。明らかに今日の主役の登場に沸いているのだ。国王王妃ですら、今日はわき役にすぎなかった。
アレクシーが、手を振るのに続き、ルシアも手を振ると更に歓声は大きくなる。民衆たちの熱狂的な歓迎に、ルシアの胸は熱くなる。
神殿、そして王宮までの沿道でも民衆の歓迎は受けていたが、ここでのものはまた格別のものがある。バルコニーから見渡す限り人で溢れている。集まった人々の顔は喜びで満ち、拍手と歓呼でルシアを祝福しているのだ。
そこへフランソワが、集まっている民衆はおよそ二十万人と告げに来る。その多さに皆が驚きの声を上げる。国王が戴冠した時に匹敵する数だった。
「皆、ルシア兄さまに恋している人達ばかりですね」
エドワードが言うと、国王王妃、そしてアレクシーも大きく頷く。
「そうだ、皆そなたらの結婚を祝し、王太子妃になったルシアに恋しているのだ」
「ええ、これほどの歓迎を受けて、まことに幸せですこと。ルシアこの民衆から受ける愛情を決して忘れてはなりませんよ」
ルシアは、深く心に留め、大きく頷いた。アレクシーが、そのルシアの背に手をやり、促すように二人で手を振ると、また一際大きな歓声が沸き起こった。
ルシアは、この日の感激を生涯忘れなかった。王太子妃として、アレクシーを支え、国王王妃によく仕えた。五人の子の母となり、アレクシーと共に築いた家庭は、常に朗らかな笑顔に満ちた温かいものだった。
そして、フェリックス崩御の後即位した国王アレクシーの傍らには、常に王妃ルシアの姿があった。アレクシーの治世に国は大きく繁栄し、それにはルシアの内助の功を超えた大いなる助力があった。
それでいて、出しゃばらず控えめな王妃ルシアの人気は絶大で、アレクシーが「国民は王より、王妃を愛している」と言うほどであった。
そして特筆すべきは、オメガの地位が飛躍的に向上したことだった。何しろ王妃がオメガなのだ。オメガを蔑む風潮は消えた。オメガに活躍の場が開かれ、それに応えたオメガも多く、国の繁栄にも貢献することになる。
王妃ルシアの名は、ルシア亡き後も長く国民に記憶された。そして、ナセルの壁画と共に、ルシアの事は長く語り継がれ、いつしか伝説となった。繁栄の王妃、オメガの王妃ルシアとして。
あとがき
皆様こんにちは、『運命の息吹』無事完結いたしました。3作目にて挑戦しましたオメガバースですが、いかがでしたでしょうか?
正直中々に難しく、悩みながら書きました。今は、無事に完結出来て良かったと思います。
次回作は、私の好きな戦国時代を舞台にした作品になります。現在絶賛プロット作成中でして、投稿しましたら読みに来ていただくと嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、皆様の幸せを祈りつつ 心からの感謝を込めて 梅川 ノン
そこへ、今では近衛部隊の指揮官になっているフランソワが近寄り声を掛ける。
「両陛下ならびに、両殿下そしてエドワード様にはこれより王宮に戻っていただきます。既に王宮には両殿下を一目でも拝見し、祝意を表したい民衆で溢れております。否、王宮だけでなくここ神殿の周りも民衆で一杯でございます。」
その言葉に大きく頷いたフェリックスが、先ずは王妃と共に、国王専用馬車に乗り込む。続いて王太子専用馬車に乗り込もうと、アレクシーに手を引かれたルシアが姿を現すと、神殿の周りに詰めかけていた民衆に大きな喝さいが起こる。
そのあまりの大きさに戸惑うルシアへアレクシーが「ルシア、顔を上げて、手を振ってごらん」と声を掛ける。
素直に従うと、更に大きな歓声が起こり、ルシアは感激のあまり胸が一杯になる。
ルシアとアレクシーをのせた馬車は、国王王妃をのせた馬車の後ろを王宮に向かって進む。その沿道も人で溢れていた。今日は皆が王太子の結婚を祝い、国中が祝賀の気分で溢れているといってよかった。
ルシアも半ば興奮状態にあった。それでもどこか冷静に、こんなにも歓迎され、祝われる資格があるのか? と己に問う。そのルシアの思いを知っているかのようにアレクシーが言う。
「ルシア、そなたは奥ゆかしい故、これほどの賛辞に戸惑っておろう。だがこれは、正真正銘そなたへの賛辞。ただ、大切なのはこれからじゃ。この賛辞に、恥じぬようにせねばな。しかし、そなたなら大丈夫じゃ」
ルシアはアレクシーの言葉に感じ入る。さすがは王太子様、生れながらに王者の資質を持つ方だと思う。自分もこれからこのお方に従い、妃として恥じぬようにせねばと改めて心に誓った。
王宮に着いた国王一家は、バルコニーに出るため順に入り口に待機する。バルコニーの下にある庭園には、民衆で溢れているのが分かり、ルシアは足が震える。それを察したのか、アレクシーがルシアの背に手をやり、励ますように撫でる。アレクシーの手から温もりが伝わり、ルシアの心は安堵で満ちる。
エドワードが到着し全員揃ったところで、国王フェリックスが、皆に順に視線をやり、「良いな」と深く頷いた後、バルコニーに出る。大きな歓声が起こる。続いて王妃が出る。やはり大きな歓声が起こり、その後一旦静まる。次に出てくる人を息をつめて待ち望むという感じだ。
アレクシーが、ルシアの腕を取り二人は一緒にバルコニーに出た。すると一際大きな歓声が沸き起こる。明らかに今日の主役の登場に沸いているのだ。国王王妃ですら、今日はわき役にすぎなかった。
アレクシーが、手を振るのに続き、ルシアも手を振ると更に歓声は大きくなる。民衆たちの熱狂的な歓迎に、ルシアの胸は熱くなる。
神殿、そして王宮までの沿道でも民衆の歓迎は受けていたが、ここでのものはまた格別のものがある。バルコニーから見渡す限り人で溢れている。集まった人々の顔は喜びで満ち、拍手と歓呼でルシアを祝福しているのだ。
そこへフランソワが、集まっている民衆はおよそ二十万人と告げに来る。その多さに皆が驚きの声を上げる。国王が戴冠した時に匹敵する数だった。
「皆、ルシア兄さまに恋している人達ばかりですね」
エドワードが言うと、国王王妃、そしてアレクシーも大きく頷く。
「そうだ、皆そなたらの結婚を祝し、王太子妃になったルシアに恋しているのだ」
「ええ、これほどの歓迎を受けて、まことに幸せですこと。ルシアこの民衆から受ける愛情を決して忘れてはなりませんよ」
ルシアは、深く心に留め、大きく頷いた。アレクシーが、そのルシアの背に手をやり、促すように二人で手を振ると、また一際大きな歓声が沸き起こった。
ルシアは、この日の感激を生涯忘れなかった。王太子妃として、アレクシーを支え、国王王妃によく仕えた。五人の子の母となり、アレクシーと共に築いた家庭は、常に朗らかな笑顔に満ちた温かいものだった。
そして、フェリックス崩御の後即位した国王アレクシーの傍らには、常に王妃ルシアの姿があった。アレクシーの治世に国は大きく繁栄し、それにはルシアの内助の功を超えた大いなる助力があった。
それでいて、出しゃばらず控えめな王妃ルシアの人気は絶大で、アレクシーが「国民は王より、王妃を愛している」と言うほどであった。
そして特筆すべきは、オメガの地位が飛躍的に向上したことだった。何しろ王妃がオメガなのだ。オメガを蔑む風潮は消えた。オメガに活躍の場が開かれ、それに応えたオメガも多く、国の繁栄にも貢献することになる。
王妃ルシアの名は、ルシア亡き後も長く国民に記憶された。そして、ナセルの壁画と共に、ルシアの事は長く語り継がれ、いつしか伝説となった。繁栄の王妃、オメガの王妃ルシアとして。
あとがき
皆様こんにちは、『運命の息吹』無事完結いたしました。3作目にて挑戦しましたオメガバースですが、いかがでしたでしょうか?
正直中々に難しく、悩みながら書きました。今は、無事に完結出来て良かったと思います。
次回作は、私の好きな戦国時代を舞台にした作品になります。現在絶賛プロット作成中でして、投稿しましたら読みに来ていただくと嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、皆様の幸せを祈りつつ 心からの感謝を込めて 梅川 ノン
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