君を愛することは無いと言うのならさっさと離婚して頂けますか

砂礫レキ

文字の大きさ
13 / 65

13.聖水をください、出来たらロケットランチャーもください

しおりを挟む
 ニヤケ面が見えた瞬間前世の記憶が蘇る。
 朝出勤しようと玄関を開けたら追い出した元彼がにっこり笑って立っていた。
 
「悪霊退散!!」

 自分でも驚く速さで扉を閉める。勢いが良すぎて凄い音がした。
 驚いているシェリアを振り返り大声で叫ぶ。

「シェリア早く鍵を、 私が力尽きる前に早く!!」
「は、はい!!」

 カチャカチャ外から回されるドアノブを必死に掴む。
 シェリアが慌てて施錠をしてやっと力を抜くことができた。

「ちょっとマリアンちゃん、何で急に扉を閉めるのぉ?!」

 私が疲れてへたり込んでいる間もしつこくドアノブが回されている。
 この世界にアイロンやドライヤーや半田ごてがあれば内側からドアノブを熱してやれたのにと思ってしまった。
 しかしそんな物は無い。私はゆっくり立ち上がり、扉に向かって面倒さを隠さない声で話しかけた。

「その場で用件を仰って頂いて宜しいですか?」
「その前に部屋に招待してくれてもいいでしょ、家族なんだし」
「私と貴方は血の繋がった家族では無いし、実の親兄弟でも貴族男性は気軽に女性の部屋には入りません」
「それは変だよ、僕はいつも母さんの部屋とか遊びに行ってるもん!マリアンちゃんが非常識!!」

 今すぐドアノブに高圧電流流したいなと思いながら私は口を開いた。

「それは貴方のお母様が特別に許しているからです。私は貴方の入室を許可しません」
「何で? 確かに僕は兄さんと違って特別な存在だけど」
「私にとっては違います」
「それに熊みたいな兄さんと違って全然怖くないもん」
「いや貴方も十分怖いです」

 屈強なフェリクスが熊に対する怖さならラウルは貧弱なゾンビに対して感じる怖さだ。
 化け物の自覚のない化け物が一番恐ろしい。

「本当、会話ができないわね。 シェリア、警察呼んで頂戴?」
「お嬢様、残念ながら部屋から出ないと無理です」

 侍女を振り返り言うが無念そうな顔で首を振られた。
 今ここに携帯電話があれば良いのに、スタンガンやチェーンソーでも良いけど。
 ずっと部屋に籠っているわけにもいかないので再びゾンビラウルと対話を試みる。

「絶対扉は開けません。用件を仰ってください。それか帰ってください」
「ちぇーっ、マリアンちゃんのケチんぼ」
「……用件をさっさと言うか消えてください」

 吐き気を堪えながら言う。
 予想以上にドスが効いてしまった。別にラウルが相手だから良いか。

「もうっ、折角マリアンちゃんにプレゼントを上げようと思ったのに」
「……プレゼント?」
「そう、兄さんと離婚するマリアンちゃんに僕のお嫁さんになれる予約券をプレゼントしちゃいます!」
「は? 死んでもいらないです」
「いつまでもそんな風に恥ずかしがらないで!兄さんと離婚したらマリアンちゃんは傷物になるんだよ。理解してる?」

 頭の悪い子供に諭すようにラウルが言う。
 鋏を持ったシェリアが私の横に立った。

「お嬢様、私刺し違えてきます」
「ゴミの為に命を無駄にしないでシェリア」

 真剣な表情で宣言するシェリアから鋏を取り上げて机の引き出しにしまう。
 そうしてから再度扉の向こうのゴミゾンビに語り掛けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?

すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。 人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。 これでは領民が冬を越せない!! 善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。 『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』 と……。 そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで

ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです! 読んでくださって、本当にありがとうございました😊 前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。 婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。 一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが…… ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。 ★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。 ★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。 2万字程度。なろう様にも投稿しています。 オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン) レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友) ティオラ (ヒロインの従姉妹) メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人) マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者) ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...