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51.一難去る前に又一難
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「でも、意外だな……」
「何が?」
「こんなに直ぐ会ってもいいと言い出すなんて」
頭を掻きながらリンツ兄さんが言う。私は少し考えて口を開いた。
「なら今からでも発言を撤回しましょうか?」
私の言葉に長兄は失言を悔やむように首を振る。
その表情で私は確信する。彼は私とフェリクスを対面させたがっている。
「いや、その必要はないよ。うん、変な事を言って悪かった」
「リンツ兄さんはそんなに私とフェリクス様を復縁させたいの?」
ストレートに質問する。長兄は一瞬表情を強張らせたがすぐ普段通りの柔和な物に戻した。
「復縁をさせたいというか……怒らないか?」
「内容によるわね」
「アルマ姉さんみたいなことを言い出したな……ただ俺はフェリクスの本音が知りたいだけだよ」
「本音?」
「本音というか何を考えているのか、考えて生きていたのかかな」
それは私も正直興味ある。
けれど口に出してリンツ兄さんに味方だと思われたくないので黙って置いた。
「あいつは学生時代から優秀で、でもあまり自分のことは話さなくて、俺もあいつも長男同士だから何か気になるんだよな」
「それは、リンツ兄さんも弟や妹に困らされ続けていたから?」
「いやそんなことは……どちらかというとアルマ姉さんの方が」
「ふうん、じゃあ私がフェリクス様と離婚しても構わないのね」
「それは、お前がその方が幸せなら当たり前だよ……ただ」
「ただ?」
「……絶対あの子供と結婚するのが嫌なら次の嫁ぎ先を決めてから離婚した方が良い」
瞬間氷を飲み込んだようにヒヤリとした。リンツ兄さんが言う子供が誰のことかはすぐわかった。
王太子子息のセシルだ。
しかし長兄の言葉の意味はあまり納得出来ない。
確かに私はフェリクスと別れたら独身になる。しかし一度結婚した事実は消えない。
そんな人間にまだ王家が婚約を求めてくるなんて有り得ない。そこまで考えてあることに気付いた。
「婚姻無効証明……」
「そうだ、そしてお前が離婚の際に協力して貰うのは誰だ?」
「……シスタードロシア様、ね」
そして彼女は王の姉。バリバリ王家の人間である。
「そういうことだ」
澄まし顔の兄を恨めし気に見る。八つ当たりだとわかっているが、又悩み事が増えてしまった。
「アルマ姉さんにも同じこと言った?」
「俺が言う前にあの人なら察してるだろ。きっと今頃お前好みの顔の男の縁談探してるに違いない」
「仕事が早すぎるわ」
「でもお前は絶対あのチビと結婚したくないんだろ」
「チビって……」
「名前は言うなよ、首が飛ぶ」
「分かってるわよ、それと結婚は絶対したくない。確実に不幸になるとわかっているから」
「だよなあ。あんな口の腐った小僧に絶対俺は妹を嫁がせたくないよ」
リンツ兄さんがここまで王太子子息を嫌っているとは知らなかった。
もしかしてフェリクスにやたら肩入れするのはセシル憎しもあるのだろうか。
ただ彼は彼で問題の塊で結婚してはいけない男だったのだか。
離婚と同時に再婚を考えなければいけないなんて全く思わなかった。
私は溜息を吐いた。今からでも本物のマリアンが交代してくれないだろうか。
「何が?」
「こんなに直ぐ会ってもいいと言い出すなんて」
頭を掻きながらリンツ兄さんが言う。私は少し考えて口を開いた。
「なら今からでも発言を撤回しましょうか?」
私の言葉に長兄は失言を悔やむように首を振る。
その表情で私は確信する。彼は私とフェリクスを対面させたがっている。
「いや、その必要はないよ。うん、変な事を言って悪かった」
「リンツ兄さんはそんなに私とフェリクス様を復縁させたいの?」
ストレートに質問する。長兄は一瞬表情を強張らせたがすぐ普段通りの柔和な物に戻した。
「復縁をさせたいというか……怒らないか?」
「内容によるわね」
「アルマ姉さんみたいなことを言い出したな……ただ俺はフェリクスの本音が知りたいだけだよ」
「本音?」
「本音というか何を考えているのか、考えて生きていたのかかな」
それは私も正直興味ある。
けれど口に出してリンツ兄さんに味方だと思われたくないので黙って置いた。
「あいつは学生時代から優秀で、でもあまり自分のことは話さなくて、俺もあいつも長男同士だから何か気になるんだよな」
「それは、リンツ兄さんも弟や妹に困らされ続けていたから?」
「いやそんなことは……どちらかというとアルマ姉さんの方が」
「ふうん、じゃあ私がフェリクス様と離婚しても構わないのね」
「それは、お前がその方が幸せなら当たり前だよ……ただ」
「ただ?」
「……絶対あの子供と結婚するのが嫌なら次の嫁ぎ先を決めてから離婚した方が良い」
瞬間氷を飲み込んだようにヒヤリとした。リンツ兄さんが言う子供が誰のことかはすぐわかった。
王太子子息のセシルだ。
しかし長兄の言葉の意味はあまり納得出来ない。
確かに私はフェリクスと別れたら独身になる。しかし一度結婚した事実は消えない。
そんな人間にまだ王家が婚約を求めてくるなんて有り得ない。そこまで考えてあることに気付いた。
「婚姻無効証明……」
「そうだ、そしてお前が離婚の際に協力して貰うのは誰だ?」
「……シスタードロシア様、ね」
そして彼女は王の姉。バリバリ王家の人間である。
「そういうことだ」
澄まし顔の兄を恨めし気に見る。八つ当たりだとわかっているが、又悩み事が増えてしまった。
「アルマ姉さんにも同じこと言った?」
「俺が言う前にあの人なら察してるだろ。きっと今頃お前好みの顔の男の縁談探してるに違いない」
「仕事が早すぎるわ」
「でもお前は絶対あのチビと結婚したくないんだろ」
「チビって……」
「名前は言うなよ、首が飛ぶ」
「分かってるわよ、それと結婚は絶対したくない。確実に不幸になるとわかっているから」
「だよなあ。あんな口の腐った小僧に絶対俺は妹を嫁がせたくないよ」
リンツ兄さんがここまで王太子子息を嫌っているとは知らなかった。
もしかしてフェリクスにやたら肩入れするのはセシル憎しもあるのだろうか。
ただ彼は彼で問題の塊で結婚してはいけない男だったのだか。
離婚と同時に再婚を考えなければいけないなんて全く思わなかった。
私は溜息を吐いた。今からでも本物のマリアンが交代してくれないだろうか。
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