君を愛することは無いと言うのならさっさと離婚して頂けますか

砂礫レキ

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52.報連相はしっかりするタイプです

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 リンツ兄さんが去った後侍女のシェリアを呼ぶ。

「温かいお茶を淹れて頂戴」

 そう言いながら私は椅子に座った。
 立ち話には向いてない内容をそれなりの時間話していた気がする。
 体が少し冷えていた。アルマ姉さんに言いつければ間違いなくリンツ兄さんは叱られるだろう。

 そうだ、アルマ姉さんとも話さなければいけない。
 リンツ兄さんと違って彼女は大公夫人となってから公爵邸で暮らしていない。
 ただ私が出戻ってからはかなりの頻度で邸内にいる。もしかしたら泊っているのかもしれない。
 私の部屋がそのまま存在していたようにアルマ姉さんの部屋も整えてあるだろうから。

「マリアンお嬢様、蜂蜜入りのハーブティーです」
「有難う。ところでアルマ姉さんは今家に居るのかしら」
「申し訳ございません、今確認してまいります」

 湯気を立てるお茶とクッキーをテーブルに置いたシェリアは少し慌てた様子で詫びて来た。
 多分アルマ姉さんの状態を把握していなかったことへの謝罪だと思うけれど、そこまで責任を感じることは無いと思う。
 しかし侍女でこの責任感なのに、伯爵家の筆頭執事の所業を考えるだけで頭が痛くなる。
 元庭師だとしても執事になる前の研修とか無かったのだろうかと疑問は尽きない。

「もしアルマ姉さんが居たら暇な時にお見舞いに来てほしいと伝えて貰える?」
「はい、わかりました」

 私の頼みをすぐ承諾してシェリアは退室していった。
 お見舞いに来て貰うという形なら先程のように立ち話にはならないだろう。

 この家の長女であるアルマ姉さんには確認したいことと伝えることがある。
 まず両親はいつ帰ってくるのか、次男のカロル兄さんはいつ到着するのか。
 シスタードロシアにはいつお会いするのか。私的にはフェリクスと対面した後の方が良い気がする。 
 
 それと私が伯爵家で恐らく睡眠作用のあるお茶を飲まされていたこと。
 日記帳が部分的に丁寧に破られ盗まれていたこと。
 容疑者の可能性が高いメイドのマーベラがクビになった翌日失踪していること。
 これも忘れず伝えなければいけない。

 それとセシル王太子子息についてもだ。
 リンツ兄さんは私がフェリクスと離婚したら、彼と婚約させられるかもしれないと言っていたが王家が私にそこまで執着する理由が納得出来ない。
 私個人というよりフェーヴル公爵家との関係を強めたいのかもしれないけど、私とセシルの年齢差も含めて常識からそこそこ外れている気がする。
 アルマ姉さんがそれを見越して私の結婚相手を探しているというのなら、そこら辺について掘り下げて訊いても許されるだろう。
 つまり私はアルマ姉さんに何を報告して何を質問すればいいのか。

「訊くことが、訊くことが多い……」

 思わず呟いてしまう。長姉が来て話してる間に一つ二つ忘れてしまいそうだ。

「そうだ、メモして置けばいいのだわ」

 私はポンと手を打った。でもこの世界の筆記用具は万年筆なので前世の記憶を思い出して今、正直字を書くことすら億劫だ。
 それでも机に向かって渋々質問内容について箇条書きにする。メモアプリ寄越せとは言わないがせめてボールペンぐらいあればいいのに。
 いつのまにか熱中しているとアルマ姉さんの呆れたような声が背後から聞こえた。

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